(ゼロから独学10ヶ月で司法書士試験に合格した話からの続きです)
※ ここから先は、司法書士受験生向きの話になる。
■独学1年で合格するために
何とか合格はできたが、自分の中で反省がなかったかといえばまるでそんな事はなく、「もっとああしておけば」と思うことも多い。
そこで、これから「司法書士試験を受験してみようかなあ」という人のために、自分の勉強方法や、試験を終えての反省点、それを踏まえ1年で合格するにはどうすべきかを書いていこうと思う。
これはあくまで「いち受験生はこうしていた」という話に過ぎないが、同じ独学で合格を目指す人、あるいは予備校に通っている人でも、何か役立つ情報が1つでもあればと思う。
■まず初めに
前回の記事タイトルについて簡単に補足する。
■「ゼロから」
自分はもともと理系出身のエンジニアであり、法律系の仕事に就いたことがあるわけでもない。
というより、つい1年前まで「六法全書の『六法』って何?憲法と………あと何?」(民法という言葉すら知らない)という有様だった。
司法書士試験というのは前提資格のいらない試験だから、そんな人間でも、その気になれば受験することが可能である。
■「10ヶ月」
自分が勉強を始めたのは、2020年の8月19日からである(特にこの日から「勉強を始めよう!」と決めていたわけではなく、アマゾンからテキストが届いたのがこの日だった)。
試験日は2021年の7月4日だから、厳密にいえば勉強に費やした時間は10ヶ月半である。
が、キリがいいし何より語呂もいいので、記事タイトルでは端数切り捨ての10ヶ月とした。
※ 2021年11月14日追記
メッセージにて、「2010年に司法書士関連の記事がアップされているので、勉強を始めたのは2010年からではないですか?」という指摘をいただいたので、簡単に補足する。
このブログで「月別記事一覧」を表示すると、2010年に司法書士試験に関する記事がズラッと並んでいるのが分かると思う。
これは自分が勉強用に作成した記事であり、したがって、2020年8月以降にアップしたものである(もともと、アメブロは投稿日時を自由に設定することができる)。
といっても、傍目にはその区別がつきにくい。本当に2020年に作成したものなのか、それとも2010年に作られたものなのか、一見して分からないのである。
一般的にいって、Webページの作成日時を正確に割り出すことは難しい。しかし、アメブロなら比較的簡単に絞り込むことができる。アメブロでは、記事ごとにユニークIDが割り振られるからだ。
要するに、URLの「entry-」につづく数字を調べればいい。
自分のブログでいえば、記事のIDは以下のようになっている。
① 2020年8月15日作成
【ID:12617392748】
② 2020年8月半ばごろ作成(ここで勉強開始)
【ID:12621144277】
③ 2020年9月21日作成
【ID:12626409447】
これを見ると、IDが時系列順になっているのが分かると思う。
自分のブログはあまり更新頻度が高くないので、少し絞り込みの範囲が広いが、他のブログの記事と比較すれば、より正確に作成日時を割り出すことができると思う。
では、なぜわざわざ投稿日時を「2010年」にしたかと言うと、1つは「勉強用の非公開記事で、他の記事が埋もれるのがイヤだったから」。
それともう1つ、「月ごとに科目を分け、後から見返しやすいようにしたかったから」という理由もある。
また、図らずも、これらの記事の存在が、自分が2020年8月半ばから勉強を始めたことを示す「動かぬ証拠」にもなっている。
今からこのIDの記事を作るのはタイムマシンにでも乗らないかぎり不可能だし、これらの記事が、自分が8月半ばから「民法の基礎」を勉強していることを示しているからだ。
■「独学」
何をもって「独学」とするかは人によるだろうが、ここでは「予備校の講座をとっていない」と定義している。
言い換えれば、「予備校の模試は受けている」ということである。
10ヶ月の勉強期間のうち、インプットに充てた7ヶ月間はテキストだけで乗り切ったが、ラスト3ヶ月、過去問だけでは明らかにアウトプットの量が足りていないと感じ、予備校の模試を申し込んだ。
実は、模試を受けるかどうかはギリギリまで悩んでいた(金もかかるし)。
だが、弟(公認会計士)から「模試は受けといたほうがいいと思うよ」というアドバイスを受け、申込むことを決意した。
これについては、後で詳しく述べようと思う。
■まず最初にすべきこと
司法書士試験というのは難関資格だが、かといって受験するために「頭の良さ」や「記憶力の良さ」が求められるわけでもない(というか、そんなもの計りようがない)。
それよりも、自分が司法書士試験を受けるにあたり「必要だ」と感じたのは、以下の3つである。
1.試験日までの計画を立て、管理できるスケジューリング能力
2.試験日までのモチベーションを維持する能力
3.ラスト3ヶ月をがむしゃらに頑張れる能力
まず1つ目。1年で合格を目指すにせよ、試験勉強としては長期戦だから、やはり計画は必要になる。
というか、計画を立ててやらないと「このまま勉強を続けて、本当に合格できるのだろうか」と不安でイヤになってくるだろう。
そこで、まず初めに「これだけ勉強すれば合格できるだろう」という計画を立てる。
② となると、3月までにはインプットを全て終わらせる必要がある
③ 2020/8/19~2021/3/31まで、225日ある
④ しかしこの全てをインプットに充てるわけではない。アウトプットを挟みながら進める必要がある(民法のテキストを読んだら、次に民法の過去問を解く時間も必要だ、ということ)
⑤ 225日のうち、インプットとアウトプットを2:1に分けよう
⑥ となると、インプットに使えるのは225×2/3 = 150日だ
⑦ テキストの総ページを数えてみると、4658ページあった
⑧ 4658(ページ) ÷ 150(日) ≒ 31(ページ/日)
こんな感じで計算し、1日約30ページを目標に勉強を進めた。
「テキストが4658ページ」と言われると途方もなく感じるが、「1日30ページ」と言われれば、何となくいけそうな気がしてくるだろう。
だが、計画を立てること以上に大切なのは、計画を守ることである。「1日30ページ」と自分で決めた以上、土日も祝日も、元旦もクリスマスも関係ない。
あるいは「平日の負担を多めにして、土日は休みにする」という方法もあると思う。そこは個人の好みだろうが、自分はそうしなかった。
それは、休みの日を開けてカンが鈍るのを避けたかった(昨日勉強したことでも抜けていることがある。2日も開けたら忘却の彼方だろう)というのもあるし、毎日勉強することで自分の中にペースを作りたかったというのもある。
毎日コツコツと学習することで勉強を「習慣」にし、それを当然の「日常」にする。そうすることでラスト3ヶ月、最後の追い込みが利いてくる。
また、ページ数ではなく、「○○時まで勉強しよう」「1日○時間勉強しよう」のように、時間で目標を立てる人もいると思う。
自分も最初はそうしていたのだが、すぐやめた。というのも、自分のような「甘い」人間は、時間で区切るとすぐサボろうとするのである。
「5時まで勉強」と決めたとして、ダラダラ過ごしていても時間は過ぎる。独学でやる以上、そんな「甘え」は自分で断ち切らなければならない。サボっても誰も注意などしてくれない。
そこでページで区切った。目標ページが終わればあとは自由なのだから、そのほうが早く終わらせようとして集中もできる。
途中で休憩を挟まず、根を詰めてやれば、1日6~7時間で終わらせることができるだろう。
※ 「30ページ進めるのに7時間もかかるの?」と思うかもしれない。これについては後述する。ともかく、この「インプット期間」において、自分は1日6~7時間勉強していたということである。
とはいえ実際問題、どうしても遊びに誘われたり出掛けたりすることはあると思う。
また、ラスト3ヶ月でない「インプット期間」は勉強以外は自由時間なのだから、遊ぶことを禁じているわけでもない。
そこで、遊びに出かけるときは、その日のノルマを別の日に割り振るようにしていた。
要するに、前日と翌日に45ページずつこなすという事である。あるいは、その日の早朝や夜の時間に20ページ進めてもいい。これなら前後に割当てるノルマは5ページずつで済む。
とにかく、他の日に偏ってもいいから、1日30ページのノルマを死守する(ただし、別の日に割振るのは最大でも前後1日としていた。でないと、「他の日にやればいいや」とすぐサボる口実になる)。
1日30ページのノルマで毎日進めていると、1日45ページ進めるのがいかに大変かが分かるだろう。
この大変さを知ると、そうそう「今日は遊びに出かけて、前後に45ページやろう」などとは思わなくなる。
次に2つ目。スケジューリング能力にも絡んでくるのだが、せっかく立てた目標も、最後までやり遂げなければ意味がない。
しかし、勉強したからといって合格できるとは限らない司法書士試験において、1年間もモチベーションを維持し続けるのは並大抵ではない。勉強している内に、「本当に合格できるのかよ?」「こんな事やってる場合なのか?」と不安になる日が必ずやってくる。
これは精神的な問題なので、「やる気」があれば乗り越えられる。だが、口で言うのは簡単でも、それを実践するのは難しい。ある意味、「頭の良さ」や「記憶力」なんかより、よっぽどその人の資質が大事かもしれない。
自分の場合でいえば、勉強期間中に「やりたい事リスト」を作っていた。
勉強期間中というのは、どうしても色々と我慢が必要になってくる。それを覚悟の上で勉強を始めたとはいえ、やはり我慢は辛い。
だから、「やりたい事リスト・買いたい物リスト」を書いて、「試験が終わったら全部パーッとやってしまおう!」と楽しみを作り、勉強期間中は我慢する。
自分が、試験が終わってずーーっとゲームばっかりやってたのは、その理由もある。自分で決めた自分へのご褒美だから、気兼ねなく存分に実行したのだ。
また、「自分が司法書士になったら」という「その後」を想像してみるのも、モチベーション維持には有効だろう。
自分の場合、独立して事務所を立てたときの設計図を考えていた。「ここに受付を置いて、ここに仕事場を置いて……」みたいな感じである。
弟からは「いや、気が3段階ぐらい早いでしょ……」と呆れられたが、別にいいのだ。空想でもいいから、試験に合格した後の「輝かしい未来」を想像してみる。
でないと、試験勉強がただの「終わりの見えない辛い戦い」になりかねない。
そして3つ目。ラスト3ヶ月までは「ノルマ制」だから、目標のページ数さえこなせば後は自由に遊べる。だがラスト3ヶ月は違う。
試験直前、どうしても「身も心も司法書士試験に捧げる」という期間が必ず必要になる。そしてその期間は、最低でも3ヶ月ほしい。
このラストスパートで、これまで頭に入れてきたことを定着させ、確実なものにする。そんな期間を3ヶ月設けておく。
実際、司法書士試験の受験生は、このラスト3ヶ月で「1日12時間以上勉強した」という人も珍しくない。
自分の場合、ラスト3ヶ月はそもそも勉強以外していない。
ブログの更新日を見てもらえば分かるが、この3ヶ月間はブログに触っていない。自分にゲーム禁止令を課し、「7月まで試験で忙しいから」と言って、遊びも全て断った。とにかく「身も心も司法書士試験に捧げる」という状態を作ったのである。1日12時間どころか、14時間ぐらいは勉強しているだろう。
そう聞くと「そんなの無理だよ、できる訳ないよ」と思うかもしれない(というか、自分も勉強を始める前はそう思った)。
だが、やってみると分かるが、意外と辛くないのである。
その理由の1つは、まず、ここまでの段階で勉強のペースが身に付いていること。
これまで土日も祝日も関係なく、1日6~7時間の勉強を200日以上続けてきたのである。そうなると、ラスト90日で1日12時間勉強しても、そんなにしんどくない。
試験がちかい分、「ゴールが見えてきた」ことによる精神的な負担の軽減もあるだろう(焦りはあるけど)。
また、ラスト3ヶ月は既にインプットが終わり、アウトプット中心の学習になるというのも大きい。
知らないことを1から学ぶときはどうしてもしんどいが、既に何となくでも知っていることを定着させていくのは、それほど負担度の大きい作業ではない。
「ホントかよ?」と思うかもしれないが、これは実際に勉強してみた人でなければ分からない。
ある予備校の模試に、「ここからが一番伸びる時期です」という言葉が記されていた。
この言葉を自分は何度も支えにしてきたし、また、実際その通りだったと思う。
毎日勉強するごとに、メキメキ自分の実力が増していくのが分かる。そして、その先に「合格」があるというのも分かる。
だから、大変ではあるけれども、ラスト3ヶ月の「ひたすら勉強」期間はそれほど辛いと感じなかった。
長々と語ったが、司法書士試験において最も重要なのは、「自分で計画を立て、それを遂行する能力」ということになる。
これを完遂できただけで、司法書士試験の半分はクリアできていると言っても決して言い過ぎではないだろう。
■使っていたテキスト
「独学って言ってもどんなテキスト使えばいいの?」と思うかもしれないので、自分が使っていたテキストを紹介する。
自分がテキストを買う上で気を付けていたのは、「同じ目的で2冊以上テキストを買わない」ということ。
これは、高校のときの恩師の言葉が基になっている。
その教師は英語担当だったのだが、ある授業のとき、「自分で単語帳を買う奴は、受験で苦労する」ということを仰っていた。
自分の学校では、指定された単語帳が生徒1人1人に配布されていた。学校側で「受験にはこの単語帳がいい」と思ったものを選んでくれたのである。
そもそも、大学受験の単語帳なんて、載っている単語はどれも似たようなものである。
にも拘わらず、今手元にある単語帳の内容を身に付けもせず、フラフラと別の単語帳に浮気するような受験生は単語帳を買っただけで勉強した気になって満足してしまう、という趣旨の話であった。
その時、まさに自分で単語帳を買って「勉強した気になっていた」自分は、射抜かれるようにドキッとしたのを覚えている。
もちろん、これは「テキストならどれを買っても一緒だ」という意味ではない。むしろかなりの良し悪しがあると思っている。
ただ、その「良し悪し」というのは「相性」による部分も大きいのではないかと思っている。
だから、まず初めに「これだ!」と思ったテキストを選び、それを信じて最後までついていく。
そもそも、現在まで残っているような優れたテキストなら、どれも司法書士試験に合格するための内容として必要十分な情報が掲載されているはずである。
だから、一度「これだ!」というテキストを選んだら後は自分の勉強法の問題であり、「他のテキストなら合格できたかも」という言い訳を絶対にしない。
とにかく、自分が選んだテキストを最後まで信じてついていく。それを心掛けながら勉強するようにしていた。
ここでは「自分が使っていたテキスト」を紹介するが、それはあくまで「自分に合っていると思ったテキストはこれだった」というハナシに過ぎない。
だから、自分でテキストを買うときは一度本屋に赴き、どんな内容か、自分に合ったテキストであるかどうかを中身をみて確認することを強くおすすめする。
■インプット編
インプットに使っていたテキスト。初めて目にした瞬間、「これしかない!」と確信した。
司法書士試験の11科目について刊行されており、全てこのシリーズでインプットを行っている。
この本の良さは、表紙に記載された「すいすい読める⇒すいすい分かる だから暗記は不要 だから使える知識」という言葉に全て詰まっている。
そもそも司法書士試験というのは、自分のような初学者からすればスタート地点からして難儀な試験である。
民法から始めるのが最もスムーズではあるのだが、法律の素人には、その民法ですらあまりに難しい。
⇒そのせいか、学校である程度学んでいる「憲法」から入るテキストもあるようだ。オートマは逆で、憲法は最後。
だがこの本では、そんな難しい法律の内容を、ずぶの素人にも分かりやすく、それでいて本質を突くように教えてくれる。
特にこの「民法Ⅰ」では、シリーズ1冊目であることから、全くの初学者を想定した「法律の根本にある考え方」について言及がなされる。これが本当に素晴らしい。
この記述のおかげで、全くの素人でも「これから学ぶ『法律』というのが、どういうものか」を知ることができ、スムーズに学習に入ることができるのである。
これは司法書士試験の本ではあるけれども、正直、この「民法Ⅰ」だけは法律家を目指すか否かに関わらず、あらゆる人が読む価値のある本だと思う。
⇒もし本屋に行ったら、ぜひ資格書コーナーでこの「民法Ⅰ」を手に取ってみてほしい。目次を読んだだけで「面白そう!」と思うことだろう。
もう1つ素晴らしい点がある。それは読むだけで「法律家のアタマ」が出来上がっていることだ。
どういう事か説明するのが難しいが、単に条文の内容を丸暗記したところで、それが「法律家のアタマ」に結び付かないというのは何となく分かるだろう。
そうではなく、「なぜそんな法律が存在するのか」「なぜそんなルールなのか」を考え、理解していくことで「法律家の考え方」が身に付いていく。本書は、読んでいるだけで自然とそれができるつくりになっている。
この「法律家のアタマ」は、試験本番において大きな武器となる。
条文の内容を丸暗記しても、次の日には忘れている。だが、本質を理解して身に付けた「活きた知識」はずっと忘れない。司法書士試験のように膨大な知識を詰め込む必要がある試験において、この差は大きい。
そしてもう1つ、「法律家のアタマ」は応用力に結び付くということだ。
「法律家のアタマ」を持っている人は、「なぜこの法律が存在するのか」という本質を理解している。
だから、全く知らない知識が問われたとしても「○○の場合はこういう理由でこうなるんだったよな、じゃあ××のときはこうじゃないか?」と応用力が働く。
司法書士試験では必ず知らない知識が出てくるから、これも本番では強力な武器になる。
分かりやすい語り口調で読みやすく、しかも書いてある内容は法律の本質だから、覚えたものは「活きた知識」として忘れない。だから「すいすい読める⇒すいすい分かる だから暗記は不要 だから使える知識」なのである。
正直、この本がなければ、自分は合格するまで何年かかっていたか分からない。1年合格を目指す初学者にとって、これほど心強い存在はないだろう。
ベタ褒めしているが、欠点がないわけではない。まず1つは誤植が多いこと。
一番印象に残っているのは司法書士法。司法書士に対する懲戒権者が、あるページでは「法務大臣」、別のページでは「法務局または地方法務局の長」。あちこちに異なる記述が入り混じっているのである。
一体どういう事なのか分からず、ウンウンと頭を捻ってしまったのだが、実は「法務局または地方法務局の長」という記載は全て誤植だったのである。「何じゃそりゃあ!」と思わずズッコケそうになった。
⇒多分、法改正が関係しているのだろうが、それにしてもあんまりである。
そのほか、練習問題の解答が「〇」のところが「×」になっていたりなど、思わず「おいおい」とツッコミを入れたくなるような誤植がそこかしこにある。
「正誤表を見ればいいじゃん」と思うかもしれないが、そう単純な話でもない。
というのは、独学で勉強する者にとって、テキストというのは唯一信じられる先生のようなものである。
だから、自分のような前提知識のない者は、テキストの記述に対して全幅の信頼を寄せている。
それが実は誤字だらけでしたという事になれば、「他にもまだ誤植が眠ってるかも……」と疑心暗鬼になり、本当にテキストの内容を信じていいのか分からなくなる。
だから誤植はなるべく撲滅してほしいのだが、現時点で誤植がある以上、正誤表を参照するしかない。
また、他のテキストは過去の版についても正誤表を公開してくれているのだが、なぜかこのオートマシリーズは最新版の正誤表しか公開されていない(探せばどこかに過去の正誤表が転がってるのかもしれないが、自分は見つけられなかった)。
こういった本はどんどん新しい版が刊行されていくので、テキストが届いたら必ず真っ先に正誤表を参照するようにしたい。
そしてもう1つ、このシリーズは他のテキストに比べ、記載の順序が独特である(他の本なら1→2→3という順序で学ぶことが、3→2→1という順序で書かれている)。
それは著者の思想に基づくものであり、またそれによって理解が捗る面もあるのでそれはいいのだが、にも拘わらず索引があまり充実していないのは問題だろうと思う。
たとえば「名板貸人」。これは商法の知識であり、他のテキストならもちろん商法の項で説明される。
ところがこのテキストでは違う。「確かに説明されてたはずなんだけど、どこに書いてあるんだっけ?」と延々探す羽目になってしまった。
答えは、何と「持分会社」の章に記載されていたのである。こんな所にあるとは夢にも思わなかった。しかも索引にも載ってない。
■アウトプット編
アウトプットのための過去問集。これも、全て同じシリーズで学習した。インプットはオートマ、アウトプットは合格ゾーンということである。
何といってもその分厚さに驚くだろう。民法は30年ぶんだからまだマシだが、科目によっては40年ぶんもあり、まるで辞書のように分厚い。
この本を選んだ理由はただ1つ、「最も多くの問題を掲載しているから」。
これ以外には、「厳選された問題だけを収録!」というタイプの過去問集も刊行されており、そちらのほうが時短には役立つと思う。
だが自分は、とりあえずでき得るかぎりの過去問に1度は触れておきたかったため、本書を買って勉強した。
そもそも、過去問演習というのは司法書士試験のアウトプットの中で最も重要である。
たとえ40年ぶんの過去問をマスターしても司法書士試験には合格できない(過去問既出の肢だけで合格点に達する作りになっていない)が、過去問の学習なくして司法書士試験に合格というのも、また有り得ない。
要するに、手っ取り早く点数を伸ばすには過去問学習が一番の近道なのである。司法書士試験の範囲は限りなく広いが、過去問は有限だからだ。
だから、本試験で出題される過去問既出の肢(サービス問題)を取りこぼすことだけは、絶対にしたくない。
それに、他の「厳選された過去問」をやるにせよ、ボリュームは相当なものである。
だったら「どうせ手間はそんな変わらないんだから、全部やっちゃえばいいじゃん」という事だ。過去問学習の物量作戦である。
これは心理的な効果も狙っている。「もし自分が知らない過去問肢が出されたらどうしよう……」と思うより、「自分の知らない過去問肢はない」という心境で本番に臨んだほうが、気持ちの面で優位に立てる。
それに、本当に「この問題はもういらないな」と思ったら、自分で×マークを付けて飛ばしてしまえばいい。どうせ過去問は2~3周はすることになるだろうから、それで時短できる。
ただ、細かいことを言えば会社法だけは別のテキストを使ってもいいと思う。というのは、会社法自体が平成17年に作られたもので、それ以前の過去問がほとんど役に立たないからだ。
実際、会社法の過去問は見るも無残な没問のオンパレードであり、残っている問題も、テキストで学ぶような内容からはかけ離れていることが多い。これを全部こなすのは、さすがに時間のムダだろう。
本書の欠点は、はじめの内は解説が分かりにくいこと。分かりにくいというか、司法書士試験の解説は専門用語が多いので、初学者が読むには難しいのである。
これに比べると、オートマの「そういう規定はない」「まったく無効な届出としか言いようがない」のようにバッサリ切り捨ててくれる解説のなんと読みやすいことかと思う。
慣れてくると、合格ゾーンの厳密かつ詳細な記述のほうがありがたい場面も多いのだが、ここは好みの差もあると思うので事前に確認しておきたい。過去問集なんて問題は誰が作っても同じなのだから、その価値は解説が9割である。
以上のテキスト(オートマと合格ゾーン)を使い、自分はインプットとアウトプットを行った。
特にラスト3ヶ月は、この2つを交互に見比べながら勉強することになる。
そもそも、司法書士試験においてテキストと過去問というのは車の両輪のようなものである。
テキストだけ読んでも「どんな問題が出されるのか」が分からなければ頭には入ってこないし、かといって過去問だけ解いても全ての分野は網羅されていないから、知識が穴だらけになる。
だから、インプット期間だからといって本当にインプットだけするのではなく、両方を交互にこなして実践的な実力を身に付けていく(民法Ⅰを読み終えたら民法Ⅰの過去問、民法Ⅱを読み終えたら民法Ⅱの過去問……という順番で勉強していくということ)。
そうしていく内に、テキストを読んだだけで「ここは実際の試験で問われそうだな」という、ある程度の「当たりがつく」ようになる。
また、この時点で過去問を1周することになるから、ラスト3ヶ月でさらに復習を重ね、試験本番までに過去問を2~3周する(自分は3周やった)。これがひとまず目標になるだろう。
※ 文字数オーバーを回避するために記事を2つに分けたのだが、長々と語っていたらまた文字数制限にひっかかってしまった。仕方ないので記事を3つに分けます……。
次は「記述編」。
(次 → 1年合格を目指すためにすべきこと(後編))