さて気になるてんかんがどのような経過をたどるのか、予後はどうなのか、ということなのですが、一概にこうだ!と断言できるものはありません。冒頭にも申し上げたように個体の性質により症状も、経過も異なります。以下の記載は、あくまでも一般論です。


【どのような経過をたどるの?】
http://www.mental-navi.net/tenkan/rikai/keika.html
 さまざまなタイプがあるてんかんがどのような経過をたどるかを一概に述べることはできません。特に治療しなくても自然治癒するものもあれば、非常に治りにくいてんかんや重篤な障害を残すてんかんもあります。ただし、かつては「てんかんは不治の病である」と考えられていましたが、その後、治療薬の進歩によっててんかんの多くはコントロールすることができるようになっています。
<てんかんのおよそ7~8割が治療によってコントロール可能とされています>
 1980年ごろを境に、さまざまな疫学的調査においててんかんの予後に対する見通しがかなり変わってきました。1980年以前には、完全に発作を抑制できるてんかんの割合はだいたい30%前後と報告されてきましたが、80年以降になると70~80%のてんかん発作を抑制・改善できると報告する研究が増えてきました。この背景には、抗てんかん薬の進歩が大きく影響していると考えられています。
<早期に治療が開始されれば良好な予後が期待できます>
 一般に、早期に治療が開始されればてんかんの予後は良好であるとされています。てんかん発作が初めて起きた時から1年以内に治療が開始された場合には80%以上のてんかんで発作が抑制されていますが、てんかん発作が初めて起きた時から1年以上2年以内では大きく下がって30%程度、また10年近く未治療の場合には10~20%程度にまで発作抑制率が低下すると報告されています。


 次はてんかん発作が発生する機序とてんかんの原因について触れます。


【どうして起こるの?】
 
http://www.mental-navi.net/tenkan/rikai/genin.html
 脳の活動は、神経細胞の電気的興奮が次々に他の神経細胞へと伝えられることで行われます。神経細胞には、単純化してわかりやすく言うと、車でいう「興奮を起こす」アクセルと「興奮を抑える」ブレーキの働きをもつものがあり、アクセルの役割をもつ神経細胞が興奮しすぎてヒートアップしそうな場合にはブレーキ役の神経細胞が抑えるというように、両方の神経細胞が作用しあい安定したバランスを保っています。
 てんかん発作が生じる脳では、この「アクセル」と「ブレーキ」のバランスが悪く、ブレーキ役の神経細胞の働きが低下し、アクセル役の神経細胞の働きが過剰になっています。そのため、脳内の神経細胞が過剰に興奮しつづけ、ヒートアップした場合に「発作」という症状が起こります。
<脳の神経伝達機構のバランスが崩れて過剰興奮が引き起こされます>
 神経細胞には車でいう、他の神経細胞を興奮させるアクセルや興奮を抑えるブレーキの働きをもつ神経細胞があり、アクセルの役割をもつ神経細胞にはグルタミン酸ニューロンが、ブレーキの役割をもつ神経細胞にはGABA(ギャバ)ニューロンがあります。グルタミン酸やGABAは神経伝達物質と呼ばれ、神経細胞の電気的興奮を他の神経細胞へと伝えるために必要な物質であり、脳の活動に重要な役割を担っています。
 てんかん発作が生じる脳では、このアクセルであるグルタミン酸ニューロンの働きが過剰になり、ブレーキであるGABAニューロンの働きが低下しています。
<脳の器質的な障害はてんかんを引き起こす大きな原因の1つです>
 症候性てんかんでもわかるように、脳の器質的な障害がてんかんを引き起こす大きな原因の1つであることは明らかです。出産前後に被った酸素欠乏や出産時の仮死状態が脳に傷害を与え、それがてんかんの原因となることもありますし、先天性の代謝異常や内分泌異常でも脳がダメージを受けててんかんを引き起こすこともあります。髄膜炎や脳炎などのウイルス性疾患や頭部外傷、脳血管障害などによる器質的障害などがてんかんの原因となりえます。
<てんかんになりやすい遺伝的素因が一部関与していると考えられています>
 脳に器質的障害がない特発性てんかんの原因として、一部に遺伝的素因が関与していると考えられています。てんかんの発症率は20歳までの一般人口では約1%ですが、母親が特発性てんかんの場合にはその子どもの8~9%がてんかんになる可能性があり、父親が特発性てんかんの場合には2~3%と報告されています。
 一部の特殊なてんかんでは原因遺伝子がわかったものもありますが、その原因遺伝子がどのように働いててんかんが引き起こされるのかはまだよくわかっていません。


 以前私は生理検査を担当し脳波検査をしていたことがあります。というより、どっぷり生理検査一色にはまっていた時期があって、脳波検査も多数行っていました。経験的にはてんかんだからといって脳波検査で異常が見つかるとは限らない。また薬剤により発作を抑制しているときにも同様。非常に脳波診断に苦慮したケースも多々ありました(当時は脳波診断レポートを主治医宛に出していました。やはり診断分野まで踏み込み、責任を持たないとやる意味がありませんので)。ですから脳波検査のみでは、てんかんの種類など完全にはわかりませんので、精神科医と一緒に患者さんへの説明やカウンセリングにも参加していました。CTなどの画像診断分野とも連携していましたし、多数のてんかんをお持ちの患者さんと話をさせていただきましたので、ある程度の診断は出来ます。が、てんかんという病気は、本当に個体差が大きく、同じ症例には当たったことがないほど多種多様です。他の疾患とは異なり、確定診断内容の中に本人への問診や周りの方々からの聴取が入っているのもこの病気の大きな特徴です。


【どのように診断されるの?/鑑別および確定診断】
 
http://www.mental-navi.net/tenkan/shindan/index.html
 てんかんの種類は多種多様であり、それぞれに治療法や有効な薬剤が異なってくるため、てんかん発作がどのようなものであるかを正確に把握して、どのてんかんに該当するかを特定しなければなりません。
 また、けいれん発作を示す他の病気はたくさんあり、1回けいれん発作を起こしたからといってすぐにてんかんと考えるのは早計です。けいれん発作を何度も起こして慢性に経過するのがてんかんですから、てんかん発作に似たまぎらわしいけいれん発作を示す他の病気との鑑別診断が非常に重要になってきます。

【発作の状況を詳しく聴取して発作のタイプを明らかにします】
 
http://www.mental-navi.net/tenkan/shindan/kanbetsu1.html
 てんかんの診断にあたって、まず発作がどのようなものであるかを明らかにする必要があります。診察室では実際に発作を観察できないため、本人や家族などから発作の状況を詳しく聞きだすことが第一歩になります。発作の際に意識の低下や消失がみられる場合には、本人に聞いても覚えていなかったり、記憶があやふやであることから、発作時にそばにいた人からの情報が非常に重要になります。
 問診の際には、下記のような発作のタイプを見きわめる事がポイントになります。
 1.発作のはじまりの様子はどうであったか
 (いつ起きたか、本人はなにか発作の予告(前兆)を感じたか)
 2.本人は発作時のことを覚えているかどうか
 3.運動症状の様子はどうであったか
 (身体のどの部分にどのような症状がみられたか、左右対称であったか)
 4.行動の異常や精神症状がみられたかどうか
 5.発作はどのくらい続いたか、どのような発作か
 6.発作後はどのような状態であったか

【脳波検査でてんかん性の異常脳波がないか調べます】
 
http://www.mental-navi.net/tenkan/shindan/kanbetsu2.html
 てんかんの診断に脳波検査は欠かせません。てんかん発作を引き起こす神経細胞の過剰興奮は、脳波ではてんかん性の異常脳波として現れますので、発作を繰り返す人の脳波にそのような異常脳波がみられれば、多くはてんかんと診断できます。ただし、脳波検査は絶対的なものではなく、てんかんの人でも異常脳波が測定されない場合がありますし、逆にてんかんでない人に異常脳波がみられることもまれにあります。
 脳波検査の記録には、睡眠時脳波記録と覚醒時脳波記録があり、この両方を合わせて完全脳波記録といいます。正確なてんかんの診断を行うには、この完全脳波記録が必要です。脳波検査は、脳から発せられる電気変化を記録するだけの検査ですので、痛い思いをすることはない安全な検査です。

【CTやMRIなどの脳画像診断で器質的な疾患がないか調べます】
 
http://www.mental-navi.net/tenkan/shindan/kanbetsu3.html
 CTやMRIはてんかんの原因または基礎的疾患としての脳の形態的あるいは器質的な異常を検出するのに重要な検査です。CTやMRIの検査で検出される局所性異常は脳波上のてんかん焦点(てんかん発作を起こすきっかけとなる場所)と部位的によく一致し、てんかん焦点と考えられる場合が多いとされています。また、必要に応じて脳の血流を検査するSPECT検査や脳の代謝機能を調べるPET検査が行われます。SPECTでは、脳波では異常部位がはっきりしない場合でも、血流の変化、つまり発作が起こっていないときは血流の低下がみられ、発作の最中は血流の増加が認められることもわかってきています。一方、PETでは、脳波の異常部位と一致して、あるいはてんかんの原因部位と思われる場所において糖代謝低下がみられます。


 セルフチェックシートも掲載していましたので、ご紹介しておきます。なおこのチェックシートにより確定診断は不可能です。あくまでも可能性の話ですので、誤解のないようにしてください。

 http://www.mental-navi.net/tenkan/check/index.html

ここではてんかんの可能性のチェックをしてみましょう。

 てんかんは、全身の硬直やけいれんを起こす大発作から、はた目にはわからない一瞬意識を失う小発作など、多彩なてんかん発作を特徴とする脳の病気です。
 ひきつけを起こして倒れたことがある――
 突然意識を失ってボーっとした状態になったことがある――
 全身の力がガクンと抜けて倒れたことがある――
 こんな症状はありませんか。もし思い当たることがあればこのチェックを行ってみてください。このチェックツールは、ご自身はもとより、ご家族やご友人、身近におられる大切な方の病気の可能性をチェックすることができるようになっています。

【発作チェックリスト】
 以前または最近、次のような症状がみられる場合、チェックしてください。
 1. 意識を失って全身を硬直させてガクガクと震える発作を起こしたことがある
 2. 体の片側の一部にまひやしびれを感じることがある
 3. 口をムニャムニャさせたり動き回ったりすることがあると言われた
 4. 急に体の力がガクッと抜けて倒れたことがある
 5. 視野に突然キラキラと光るものが映り、目の前を移動することがある
 6. 意識はあるものの、体の一部のけいれんが数秒から十数秒続くことがある
 7. 発熱によって起こるひきつけがある
 8. 気が付くと授業が先に進んでいたり、仕事が中断していたことがある(突然に意識がなくなり、ボーっとした状態が数秒から十数秒続くことがある)
 9. 目の前のものの大きさが変化したり、遠近感がわからなくなることがある
 10. 突然、全身がピクンとした直後に一瞬力が抜けることがある
 11. ずっと前にみた情景がよみがえることがある
 12. テレビやゲームなどチカチカした光の刺激でひきつけを起こしたことがある
 13. 突然しゃべれなくなる、またはペラペラと変なことをしゃべることがある
 14. 脳卒中をわずらった後にけいれん発作を起こしたことがある
 15. 眼や顔が片側に強くひっぱられることがある
 16. 上記の症状が2回以上起きたことがある


 次に、治療法につき触れたいところでしたが、あまりにも種類が多く薬剤も豊富なため、巻末にサイトをご紹介しておきます。そちらをご参照ください。

 最後は周りの方々の注意点、発作が起きたときの対処などにつき掲載します。一般の方々はもちろんですが、特に義務教育を含めた学校の先生などにも広く知っていただきたい内容ですね。保健の先生にすべてお任せ・・・では教育者としてちょっとお寒いと思います。


発作時の対処方法
 
http://www.tenkan.info/family/index.html

【周りの人が心がけることは?】 落ち着いて行動することが大事
 目の前の人が発作で突然倒れ、呼吸が止まり、顔色が土気色になっていくのを見ると最初はとても慌ててしまうかと思いますが、落ち着いて行動すれば大丈夫です。
 けいれんが体の一部にとどまり、全身に拡がらないときは、本人の安全に気をつけて、そのまま様子を見ます。また、全身にけいれんが起きた場合でも、普通は1分~数分で発作はおさまり、その後10~20分以内に意識が回復することが多いのでそのまま様子を見ていてかまいません。
 ただ、けいれんが長時間にわたって止まらないときや意識が戻らないうちに再びけいれんが起きる場合などはすぐに治療を受けなければならないので、病院に連れて行きましょう。
<発作が起こったらやるべきこと>
 ・危険な場所(道路、階段など)で倒れた場合は安全な場所に移動させる
 ・横にして、周囲の危険物を除き、けいれんによって体を打撲しないようにする
 ・呼吸しやすいように服のボタンを外し、ベルトをゆるめる
 ・時計があれば発作が起こった時刻を確認し、てんかんの様子を観察する

【発作のとき・発作の後に注意することはなんですか】
<発作時>
 ・けいれんの最中は名前を呼んだり、体を押さえたり揺さぶってはいけません。
 ・舌をかまないようにと、けいれんの最中に口の中に指、タオル、スプーンなどを無理に突っ込んではいけません。無理に硬いものをさし込むと歯が折れたり、口の中を傷つけたりしますし、指を入れると噛まれてけがをしてしまいます。物をさし
込むより、下あごを下から軽くあげ、けいれんの際に舌を噛まないようにしてあげましょう。
<発作後>
 ・上を向いていると、発作後に食べ物を吐いたときに、吐いたものが気管に詰まって呼吸ができなくなるので、発作の後は顔を横にしましょう。
・けいれん発作後にしばしば眠ってしまうことがありますが、発作後にもうろう状態となり、物にぶつかったり、危険なものに触れたりすることがありますので周囲の人が軽く寄り添って保護してあげましょう。

【入浴、プール、食事中に発作が起こったときはどうすればよいでしょうか】
1.入浴
 てんかん発作の中で最も注意が必要なのが入浴中での発作です。
<入浴時の対処>
 ・まずお湯から顔をあげ、呼吸が可能な状態にする
 ・うまく顔があげられない時は迷わず浴槽の栓を抜き、排水する
 ・呼吸が止まっていたり、大量にお湯を飲んだりと、生命の危険があるときは浴槽の栓を抜くのと同時に救急車を呼ぶ
<予防方法>
 ・お湯はなるべく少なめに張る
 ・浮き輪を用意する
 ・家庭や施設では必要な注意・監視をおこたらない
 ・長風呂はしない
 ・一人暮らしの場合はシャワーだけにするのがよい
 ・お湯と水を別々に出す方式の蛇口は、熱湯を先に出したあとに発作が出たり、発作時に蛇口に体が当たって熱湯が出てしまったケースもあるので注意が必要です
 ・上と同じ理由で、風呂釜でお湯を沸かす方式(追いだき)の場合も注意が必要です
2.プール
 てんかん発作がある場合は監視が絶対に必要になります。けいれんが起きた場合はまず体を支えて水面から顔を出すようにします。けいれん中は水の中で体を支え、無理にプールから引き上げようとしないようにします。けいれんがおさまったら、できれば意識を回復した後にゆっくり水から引き上げるか、自分で上がってもらうようにします。もし、すでにおぼれている状態であればただちにプールから引き上げて救急車を呼んでください。
 プールから上がるまでは必ず介助者がそばに付き、連絡などのためにその場から離れるときは違う人に介助を引き継ぎます。
 また、プールサイドでの転倒にも注意が必要です。転倒する発作の多い人は必ず腕を組んで移動するなどの注意が必要です。
3.食事中
 食事中にけいれんが起きると、食事がのどに詰まってしまうと思うかもしれませんが、飲み込む力の弱い人以外はほとんどそういう事故は起こりません。ですから、けいれん中に無理に口の中から食べ物を出そうとしなくてもかまいません。
 むしろ食事中のけいれんで注意することは、テーブル側に突然倒れることで食器をひっくり返し、やけどをすることです。そのため、熱い物を入れた容器は遠くに置くなどの注意が必要です。

【発作の後はどうするの?】
 てんかん発作後、深い呼吸で眠りにつくことがあります。発作は脳が過剰な反応をしている状態なので、発作後は脳を休ませることで元に戻ることができるのです。ですので、発作後に寝てしまった場合はそのまま眠らせてください。
 発作が起こると周りの人は大変驚くのと同時に、興味本位で見てしまうこともあります。特に学校などで発作を起こした場合、それを見ていた子ども達に対する教育・指導が大切です。教育のよい機会ととらえ、てんかんについてきちんとした説明をしてあげましょう。


 以上、てんかんについての特集でした。なお、引用させていただきました主たるサイトは以下の通りです。かなり詳細にご紹介されていますので、ご一読いただければと思います。


ンタルナビ・・・こちらのサイトはてんかんだけではなく、「脳の働きに関連したこころや体の病気」について幅広くご紹介されています。
 
http://www.mental-navi.net/index.html

てんかんinfo・・・こちらのサイトはてんかんについて必要最小限な情報をわかりやすくご紹介されています。
 http://www.tenkan.info/

社団法人 日本てんかん協会
 
http://www.jea-net.jp/index.html

日本てんかん学会
 
http://square.umin.ac.jp/jes/