今月に入り早9日間を経過してしまいました。毎年恒例の国立病院総合医学会への演題登録締め切りがシステムトラブル続出のため再々再?延長で、昨日無事に締め切りを迎え、政策医療連絡会からは5題エントリーしました。昨日事務局の方から、確認のお電話を戴き「本当にこれで宜しいのですね!!!」と念を押されました。本当はもう少しエントリーしたかったネタも数件あるのですが、来年は神戸開催のため、来年の分にとっておきます。しかしなぜ今年は例年通りの登録形式にしなかったのでしょうね??? おかげで何度も登録し直しさせられました。

 さてこのところ、政権問題と原発問題の記事ばかりで、少々辟易しているところですが、原発問題では政府対応・政権混乱への非難集中により東電への非難が薄れている感さえします。監視、監査する立場の問題も非常に大きいのでしょうが、一番の原因はやはり安全だ、安心だ、と地元の方々に根拠のない良いこと尽くしを言い続け、利益を優先させてきた企業側でしょう。まあ安全神話を真に受けてきた国民にも当然責任はあると思いますが。

 昨日の朝日新聞社説をご紹介しますが、ドイツの脱原発をそのまま日本に持ってこようと思っても、原子力に依存している率が違いますし、脱原発を推進しようとする国民の意識も歴史も異なります。それよりも私が感心しているのは、国民の意見が政治に直接反映しやすいなぁということ。日本では関連省庁や企業や政治家や、その他諸々のしがらみで、こうはいかんでしょうね。


朝日新聞社説 6/8 http://www.asahi.com/paper/editorial20110608.html#Edit1
 ドイツ政府が「脱原発」の方針を閣議決定した。17基ある原子力発電所のうち8基をすぐに閉鎖、残り9基も2022年までに段階的に閉鎖する。
 世界の主要国の一つであり、欧州経済を引っ張る国である。原発という巨大なリスクを、徐々に取り除いていこうという決断は重い。
 もともと中道左派政権は02年に脱原発の旗を掲げていた。昨年秋、中道保守のメルケル政権は原発の運転期間の延長をいったん決めたが、今回の決定で元の路線に戻った。
 福島第一原発の悲惨な事故が、ドイツの脱原発への動きを後押しした事実は、改めて重く受け止めなければならない。
 朝日新聞の国際世論調査では、市民の8割以上が原発に反対し、7割近い人々が10年以内の原発閉鎖を望んでいた。
 メルケル政権の決断は、この民意に沿ったものだ。右から左まで主要政党の足並みがそろったドイツは今後、政治や社会が一致結束して脱原発への歩みを早めることになろう。
 風力や太陽光、バイオマスといった再生可能エネルギーの普及に力を入れる。家屋の断熱性の改善などの省エネを進める。これが対策の2本柱だ。
 電力供給のうち原子力は23%を占めている。当面は天然ガスや石炭火力を増強しつつ、現在17%ある再生可能エネルギーによる発電の割合を20年までに35%に倍増させるという。
 風力発電地帯の北部から人口の多い南部への送電線をどう増設するか。電力料金の値上がりをどう抑えるのか。課題は山積している。
 この国の強みは、脱原発への助走段階で実績をあげていることだ。電力の買い取り制度や送電線開放によって風力や太陽光発電の産業化を進め、新たな雇用と成長を生み出している。

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 もう一席、原発の放射線がらみですが、こういうことは献血で起きるだろうなぁ、やっぱり!と思ったニュース。というのも、検診医の質に疑問を持つケースが経験上多いので。私の場合、あんまり良い検診医に出会った記憶がありません。かなり昔になりますが、家内ととある移動検診車で献血を受けた時のことですが、家内は日常より貧血気味のため、どうかな?って感じで検診を受けたのですが、献血基準にわずか足りず不可となりました。その時の検診医には、検査目的で献血しないでいただきたいだの、初めから貧血と分かっているのなら、来ないでもらいたいだの言われたんですね。私は傍で聞いていなかったもので、あとで家内に、こんなこと言われちゃった・・・って聞いたので、即座に医師に抗議に行きました。受付の方は平謝りだったのですが、当の検診医は、医学的根拠に基づいて診断したし、事実そういった方が多いので、注意をしました。と逆に説教を始めるので、一般人が医師に対して文句を言うなとばかりのあまりにもの横柄な態度に対してかなりの時間、その検診医に対して抗議をしましたが、結局謝罪はめんどくさいと言わんばかりの、「はいはい分かりました、ごめんなさいね」。あとで受付の方からは丁重に謝罪されましたが、どうなんでしょうね。私は記事の説明にあるように一般論で話をされるのは結構なのですが、もうちょっと人の感情というものを考えてもらいたいなぁ・・・と感じます。折角の善意が台無し。医は仁術とも言われるんじゃないですかね??? 配慮・・・心をくばること。心づかい。


献血拒否:放射線被ばく理由に いわき市の男性が抗議 毎日新聞 6/6
 
http://mainichi.jp/select/science/news/20110607k0000m040020000c.html
 東京都赤十字血液センター(江東区)が、都内で献血をしようとした福島県いわき市の男性の家族から「原発事故による放射線被ばくを理由に献血を断られた」などと抗議を受けていたことが分かった。日本赤十字社側は「検診医が献血による心身への負担など健康に配慮し実施を見送ったようだ。福島県民の献血を断る規定などはないが、検診医の放射能への理解が十分でなかった可能性もあり、現場教育を再度徹底する」と話している。
 日赤本社や同センターによると、男性は5月26日、東京・お台場のイベント施設の移動献血会場を訪れた。男性が「原発の近くにあるいわき市から来たので、放射線を浴びているかもしれない」と話したため、検診医は「心配ならば控えた方がいい」などと答え、採血しなかったという。
 しかし、翌27日、男性の妻から同センターに「放射線で遺伝子が傷ついているかもしれないなどと言われ、献血を断られた」と抗議があったという。
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 さて本日の特集に移ります。

 ドイツを中心に発生した腸管出血性大腸炎O104による感染拡大は国際問題にも発展し、感染源や感染経路はまだ解明されていない状況です。今回はこの問題についての記事をご紹介するとともに、腸管出血性大腸炎に関する資料をご提供します。

 病原性大腸炎に関しての話題提供はブログの過去記事にも掲載されていますので、ご覧いただければと思います。
http://koji-arai.blog.so-net.ne.jp/2011-05-10


2011年の欧州における腸管出血性大腸菌感染事件
 
http://ja.wikipedia.org/wiki/2011%E5%B9%B4%E3%81%AE%E6%AC%A7%E5%B7%9E%E3%81%AB%E3%81%8A%E3%81%91%E3%82%8B%E8%85%B8%E7%AE%A1%E5%87%BA%E8%A1%80%E6%80%A7%E5%A4%A7%E8%85%B8%E8%8F%8C%E6%84%9F%E6%9F%93%E4%BA%8B%E4%BB%B6
 2011年の欧州における腸管出血性大腸菌感染事件は、2011年5月以降、ヨーロッパの広範囲で発生している腸管出血性大腸菌O104による大規模な集団感染事件のことである。6月2日までに溶血性尿毒症症候群(HUS)による死者が9人、患者が499人、腸管出血性大腸菌(EHEC)による死者が6人、患者が1,115人となった。患者の多くは成人女性であり、死者の8割は大人となっている。その後6月6日までに13カ国で2,150人以上が感染し23人が亡くなっている。
【経過】
 5月中旬に、ドイツ北部で下痢症状を訴える患者が増加、ハンブルクやブレーメンなどを中心に患者が増加した。5月21日にハノーファー近郊で83歳の女性が亡くなり5月22日、23日にも女性が死亡し死者が3名となった。
 その後、6月1日までにドイツ国内にとどまらず、オーストリア、デンマーク、オランダ、フランス、スペイン、スウェーデン、スイス、イギリス、アメリカ合衆国など10か国で感染例が確認された。
 ロベルト・コッホ研究所によると溶血性尿毒症症候群の患者が6月1日までの1日で前日の373人から470人に急増した。
 6月2日現在で、死者17人、感染者1500人以上とされている。
 6月5日時点ではアメリカ合衆国にも飛び火し、死者は22人、感染者は12ヶ国で2000人以上に拡大、ドイツ国内だけで感染者1700人、重症者およそ600人となっている。
 問題の菌は腸管凝集性大腸菌(EAEC)と腸管出血性大腸菌(EHEC)が結合したもので抗生物質への耐性を持っており、治療が難しいと報道されている。重症者に対しては大量の血漿輸血が必要となっている。
 
http://www.afpbb.com/article/life-culture/health/2803874/7292051
 http://www.asahi.com/international/update/0603/TKY201106030457.html?ref=reca


 感染源は当初、キュウリだとかモヤシだとか言われていましたが、まだ明確な結論は出ていない状況です。国際的な風評被害の拡大になっていますね。ここで出てきたスプラウトですが、お恥ずかしいかな、全く知りませんでした。先日テレビで、脱サラされた方が新芽野菜を作っているとの番組があったのを今さらながら思い出しました。そういえば、我が家でもサラダによく入っていますね。村上農園、聞いたことがあります。http://www.murakamifarm.com/index.shtml


スプラウト
 
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B9%E3%83%97%E3%83%A9%E3%82%A6%E3%83%88
【歴史】
 スプラウトは古くから食用に栽培されていて、古くは5000年前の古代中国でマメ科のスプラウトであるモヤシが栽培されていたといわれている。そのほか、18世紀後半に南太平洋などをエンデバーで航海したキャプテン・クックは、船上で大麦のスプラウトをつくり、船乗りたちの栄養補助源としたといわれている。また、19世紀英国ビクトリア朝時代にメアリー・ジューリーという料理研究家によってマスタードやクレスのスプラウトを使った料理本が残されていたり、日本の平安貴族たちの食膳にかいわれ大根がのぼっていたとも伝えられ、古くから世界各地で食べられていた。
 日本では、1999年に村上農園がブロッコリー、マスタード、クレス、レッドキャベツの新芽を「スプラウト」として日本で初めて発売を開始して以降、様々な種類の発芽野菜が一般の家庭で食べられるようになった。
【分類】育て方や食べる時期によって大きく4つに分類できる。
もやし型
 暗室のみで育て、緑化させないもの。緑豆もやし、大豆もやし、アルファルファなど
かいわれ型
 茎が伸びるまで暗室で育て、その後たっぷり光をあてて緑化させたもの。大根、ブロッコリー、ムラサキキャベツ、マスタード、クレス、豆苗、ソバなど
その中間型
 暗室で発芽後、緑化させたもの。ブロッコリースーパースプラウトに用いられている。
発芽したてのもの
 発芽後すぐに種ごと食べるもの。発芽玄米など


欧州大腸菌感染源はスプラウトか 独の州農業省が発表 朝日新聞 6/6
 
http://www.asahi.com/health/news/TKY201106060073.html
 ドイツ北部を中心に感染が拡大している腸管出血性大腸菌O(オー)104について、ドイツのニーダーザクセン州農業省は5日、同州内で栽培されたスプラウト(新芽野菜)が原因の可能性が高いと発表した。ただ、公共放送ARDによると、連邦保健省などは「現時点では早急な判断をしない」と慎重な態度をとっている。
 報道によると、同州農業省が感染経路などを調べたところ、州内の農場からのスプラウトにつながった。この農場の従業員1人が感染しているという。同省は、「決定的な証拠はまだないが、間接的な証拠は明白」として、スプラウトの消費を控えるよう呼びかけた。


感染源との結果得られず 独、モヤシ半分は「シロ」 東京新聞 6/6
 
http://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2011060601001225.html
 【ベルリン共同】ドイツを中心に欧州で腸管出血性大腸菌「O104」の感染が拡大している問題で、ドイツ北部ニーダーザクセン州政府は6日、感染源の可能性があるとされるモヤシなど発芽野菜について、これまでの検査でまだ感染源とは確認されていないと発表した。40のサンプルのうち23で陰性だったという。
 同州はさらに検査を進め、欧州連合(EU)などと連絡を取りながら感染源の特定を急ぐ。
 連邦政府のアイグナー食料・農業・消費者保護相も6日、感染源について「まだ確認できていない。未検査の全サンプルを調べる必要がある」と強調。感染源が判明するまで、念のためモヤシやトマト、キュウリなどサラダに使う野菜を食べない方がいいと警告した。
 欧米の計12カ国に感染が拡大したO104の被害は、ドイツ北部で突出。サラダを食べた人に感染者が多く、これまでドイツとスウェーデンで計22人が死亡した。


 ここからは腸管出血性大腸炎に関する資料となります。


O104 http://ja.wikipedia.org/wiki/O104
 O104(オーいちれいよん)は、O抗原が104番の大腸菌である。一般には特に腸管出血性大腸菌O104のことを指す。 2011年北京ゲノム研究所(BGI)が強毒性であり、薬剤に対して耐性が強いと発表した。 そのため治療や対策が困難である。
 2011年にドイツを中心として腸管出血性大腸菌O104:H4(英語)による大規模感染(アウトブレイク)事件(2011年の欧州における腸管出血性大腸菌感染事件)が発生した。


腸管出血性大腸菌
 
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%85%B8%E7%AE%A1%E5%87%BA%E8%A1%80%E6%80%A7%E5%A4%A7%E8%85%B8%E8%8F%8C
 腸管出血性大腸菌(enterohemorrhagic Escherichia coli:EHEC)とは、ベロ毒素 (Verotoxin=VT) 、または志賀毒素 (Shigatoxin=Stx) と呼ばれている毒素を産生する大腸菌である。
 このため、VTEC (Verotoxin producing E.coli) やSTEC (Shiga toxin-producing E.coli) とも呼ばれる。この菌の代表的な血清型別には、O157が存在する。
 この菌による感染症は、感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律により3類感染症として指定され、確認した医師は直ちに所轄する保健所などに届け出る必要がある。
【感染経路】
 腸管出血性大腸菌による感染は、べロ毒素産生性の腸管出血性大腸菌で汚染された食物などを経口摂取することによっておこる腸管感染が主体である。また、ヒトを発症させる菌数はわずか50個程度と少なく強毒性を有するため、二次感染が起きやすく注意が必要である。また、この菌は強い酸抵抗性を示し、胃酸の中でも生残し腸に達する。生の牛肉やレバーの摂食で感染リスクが高いともいわれている。
【血清型別】
 大腸菌は、耐熱性菌体抗原であるO抗原160種類以上と、易熱性の鞭毛抗原であるH抗原60種類以上によって分類される。
O抗原
 ベロ毒素を産生することのあるO抗原としては、O1、O2、O18、O26、O103、O104、O111、O114、O115、O118、O119、O121、O128、O143、O145、O157、O165などがある。そのうち、O157によるものが全体の約80%をしめる。
H抗原
 上記で示したO抗原であっても、H抗原が異なる場合等はベロ毒素を産生しないものがある。したがって、腸管出血性大腸菌などの血清型別を表記する場合には、Escherichia coli O157:H7などと表記する。