【第二部】 現場検証


 「○○警察です。事件ですか、事故ですか。」


 『器物損壊事件です。・・・』


 状況説明を求められたので、全裸の男がカードリーダーを壊し、今その男を管理室で休ませている(確保している)ことや住所などを話した。すると、すぐに捜査員を向かわせるので待つように言われた。


 数分後、1人の警官がやってきた。犯人(警察的にはこの時点では容疑者)を管理室で待たせているので早く連れて行ってくれと頼んだら、まだ他の捜査員が来るから待ってくれと言われた。するとまもなくして、制服・私服入り乱れて7~8人の捜査員がやってきた。(たかが器物損壊でこんなに?)

 二手に別れ、半数が容疑者のところへ行き、残り半数は私と一緒に現場へ向かった。所謂、現場検証というやつだ。ひとしきり奴を発見したときの状況や壊れたカードリーダーを発見したときの状況を説明したところで写真撮影となった。

 奴が全裸で座っていたところを指差してパシャ。壊れたカードリーダーを指差してパシャ。床に落ちたカードリーダーの前面パネルを指差してパシャ。


 犯人確保に至る状況は説明したし、現場検証もほどなくして終わったので、あとは奴を連れて行ってもらって終了。と思っていたのだが、そうもいかないらしい。


 捜査員曰く、「人一人を逮捕(手錠などははめてないが)連行し、警察署に拘束するとなると、それなりの事情聴取(供述調書作り)が必要になります。被害届も提出していただく必要がありますので、署までご同行願えますか。」


 そう来るか。


 『私一人なので、管理室を空ける訳にはいかないのですが、明日じゃダメですか?』


 「先程も申しましたように、人一人拘束するには供述調書が必要なのです。彼が犯人であるというあなたの供述調書がなければ、彼を拘束できないのです。」


 要するにあれだ、捜査員たちは彼が器物損壊するところを見ていない(現行犯じゃない)し、私も見ていない。全裸の彼が最上階にいて、そこにあるカードリーダーが壊れていたという状況証拠に過ぎない。これまで私が状況説明したことを聞き取った程度ではダメだってことだ。そんなものは事情聴取でもなんでもないと。奴が酩酊状態なのをいいことに、何だったら私が口から出任せ言って(無実の)奴を逮捕させようとしてるんじゃねーかって疑いもあるってか。そりゃ確かに奴がカードリーダーを壊すところは誰も見てないし、そこには防犯カメラもない。証拠は無いけど、カードリーダーの凹みを鑑識が調べれば、奴の皮膚片なり血痕なり採取できるはずだが、器物損壊事件程度じゃ鑑識は動かない(動かせない)らしい。

 何とか明日にできないか食い下がったが、それではどーあっても奴を連れて行けないらしい。キッチリ型に嵌った供述調書(奴が壊すところを見てはいないが、あらゆる状況から奴が犯人であることを疑いようがないと証明できるような調書)が無ければ奴を連れて行けないっていうんじゃ仕方ない。署まで同行するほかあるまい。

 このとき時刻は23:40、幸いにもほとんどのテナントが営業終了しており、管理室への用事もほぼないだろう。そもそも管理室の通常業務は22:00までなんだから、もし誰か来たとして留守で対応できなくても言い訳は効く。もしも緊急事態が起これば、携帯電話に連絡が入ることになっているので何とかなるだろう。


 そんなこんなで、生まれて初めてパトカーに乗ることとなった。


第三部へ続く。


ペタしてね