中学受験を題材にした小説、朝比奈あすかさんの「翼の翼」を読みました。



(ネタバレ含む感想です)



自分のトラウマへの刺激と息子への態度の反省で何度も読む手が止まりました...



私の親は中学受験こそ強要しなかったものの(たぶんその選択肢が親の中になかった)、異様に勉強しろ勉強しろと追い詰めるタイプでした。

一~二学年上のドリルを渡され、

「これくらいできて当然だろ!」

「お前のためを思って!」

「こんなに付き合ってやってるんだから感謝しろ!」

と怒鳴られる。

ドリルができないとヘアブラシで殴られる。

成績が近所の子よりよくないと答案用紙を破られる。

親への手紙を「100点とれないのにこんなもの!」と言って破られる。


「よくできた」と褒められたことはもしかしたらあったかもしれないけど、思い出せない。

怒鳴られたことや、自分のもの・あげたものを壊されたことの方が鮮明に覚えている。

心理学的にはプラスのことよりマイナスのことの方が記憶に強く残るようです。


このストーリー的には、泥沼から抜け出せて志望校に受かってよかったねの「感動」もあるけれど、

怒鳴られたこと、決勝大会の盾を投げられたこと、ゲーム機を壊されたこと、成績表を破られたこと、

翼くんは絶対に忘れないし、そのときの感情も絶対に忘れないと思う。

翼くんほどの努力や追い詰められ方ではなかった私ですら数十年経っても忘れていない。

親は既に亡くなっているけれど、「あのとき親が厳しくしてくれたから今がある」なんて気持ちにはなれていません。


でも私も、感情的に息子を怒鳴ったこと、あります。 

怒鳴られることがあんなに嫌だったのに。

子供ながらに「自分の子供には絶対こんなことしない」と思っていたのに。

作中でも翼くんの父がそうでしたが、自分が親にされたことを無意識にしてしまうのでしょう。

「親」というサンプルがそれしかないから。

自分がそうやって育ってきたから。

そしてそれはきっと息子の子供にも受け継がれてしまう。


それをまざまざと気付かされました。

そして今の時期にそれに改めて気付けてよかったと思います。