文化祭が始まった。

例の4人グループは、あんなことがあったのがウソみたいだった。

どこかのテーマパークで買ったと思われるアニメキャラのカチューシャをして

きゃっきゃ楽しそうに過ごしていた。

なんやそれ!振り回されるだけ振り回しておいて。。。。

と仲良くなったのはいいことだが、こっちの気持ちは。。。となりながら

文化祭の多忙さにそれ以上は考えずにいようと思った。

 

文化祭では最近できたクラス発表の時間がある。

各クラスの代表者が舞台に上がり、何か出し物をすることになっている。

クラスで代表者を選びつつ、何か文化的なものを作り上げ発表する。

学年ごとに優秀賞を決めて景品を渡すことになっている。

僕と河先生で、昨日までに木田学年主任からお菓子や景品になるものを買ってくるよう言われていた。

今日は、優秀賞2組分と最優秀賞1組分に分ける袋詰めをしていた。

お互い、文化祭中の警備や見回り巡回、クラスへの指導の補助など時間単位で役割が決められている中

隙間時間を見つけて3袋分を用意する。

「どうですか、文化祭、僕らの時と変わってきましたよね」と河先生

「そうですね、僕らの時はこんなのなかったですね」とOBならではの会話

「いろんな生徒が積極的に参加してほしいということで始まったらしいですよ」

「そうですか、確かに僕らの時はクラスで展示とか出し物だけでしたから

 適当にやったりさぼったりする友達も少ないですけどいましたね」

「教室での展示や取り組みだけでなく、出し物をするとなるとクラス全員で話し合ったり

 やることが増えるので、役割が事細かに決めないといけなくなって、全員が参加できるようになるので

 いい取り組みだと思います。これも生徒会で生徒の提案から始まったみたです」

「生徒からの提案か、うちの学校らしいですね。

 きっとそれはいいっていろんな教師が前向きにがんばりはったんかな」

とお互い、この学校の良さを知っているので自然と笑みがこぼれた。

この学校は生徒たちが提案したり、生徒会が動くと結構、いろんな先生が前のめりで

生徒よりがんばって提案を進めてくれたりする。

それを生徒の頃からいい校風の1つだと思って、この学校を好きになって卒業する。

多分僕だけでなく、河先生もその1人だと思えた。嬉しかった。

 

そして、準備を終え、木田先生に報告した。

「ありがとう、じゃ舞台で私から渡すことになってるので、舞台裏に置いといて。

 で、2人とも色々手伝ってほしいことが出てくると思うので他にも副担についてる先生

 にも声かけて発表の時から舞台裏にいるよに言うといて、よろしく」

分かりましたと他の先生にも声をかけて本番を迎えた。

 

クラスの出し物が終わり、学年主任中心に校長先生やPTAの会長クラスの方で

優秀賞、最優秀賞の選考を行う。

僕らはその結果を聞いて、舞台袖で木田先生にそれぞれの景品を渡すことになっているのだが

何やら選考でもう1つ審査員賞をあげようかという話が聞こえてきた。

僕は、あぁそうなのか、いろんなクラスに賞がでればそれはそれでいいなと

ぼんやり思っていたら、木田先生が僕らの方へ近づいてきて

数人の若手の先生がいる中で、僕らを見まわし「光月、今すぐ景品もう1クラス分買ってきてくれ!、急げ!」

他の先生が驚きと、気の毒そうに僕に目をやっているなかで、

内心「なんでオレだけ、名指しで指名やねん、こんなときだけ」と思ったが

「これっ」といって財布から数千円を僕に預け、追い出すように買いに走らされた。。。

 

正直、ハラワタ煮えくりかえりながら、買いに走った。

木田先生からは、学校を出て通りから少し入った所がお菓子工場やからそこなら安く大量に売ってくれると思うわ

と言われたので、そこへ走ったが、今日は土曜日で店は開いてなかった。

さらに怒りで気が狂いそうになりながらコンビニやドラッグストアを回り

お菓子やそれなりのものを汗だくになりながら買いに走った。

 

戻ると、「えらい遅いやん、いうてたお菓子屋に行ったんか?」

手持ちの品を見てどこへいってきたんや?と言わんばかりに言葉が飛んだ。

「いや、今日は休みみたいで。土曜ですし。。。」

「あ、そうか今日土曜やな、そりゃ休みや。。。ハハハ」

と気まずそうに一瞬したようだが、景品の袋をさしだせと手を出され

何も言えず木田先生に渡した。

 

審査員賞を渡しに、当該クラスへ行く木田先生について行ったが

「これ!審査員賞の景品!おめでとう! 

 光月先生に買いに走ってもらったから遅くなったけどー」と言って渡している。

生徒は、やったーやオーという喜びと驚きの声を上げながら景品を受け取り

「先生、ありがとうー!」と木田先生にお礼を言っている。

受け取った生徒がみんなに配っていった。

 

なにが「光月先生に買いに走ってもらったから遅くなった」だ。

さすがに怒りの表情で木田先生を見たが意にも返さない表情で

さっさと職員室にもどり何もなかったかのように、担任に審査員賞の景品渡してきたでーと伝えていた。

 

もう怒りでブちぎれそうだった。

僕自身が言い返せるほどのレベルに達していないし、その度胸もなかったのが悔しかった。。。

専任になるため、ここは我慢かと意気地のない今の自分に言い訳しながら

悶々とした思いでその場を去るしかなかった。

足取りは重いが、その後に当たっている巡回の当番へついた。

今日は昼食も食べる暇なく終わった。。。。。