次の日、この出来事を担任の三城先生に伝えた。

30台の女性の先生で非常に柔和な方で、生徒の信頼も厚く、英語の教科で指導力もある先生だ。

「そうでしたか、この時期の女子は難しい所はありますよね。

 特に若い先生には自分をよく見られたいと思ったりちょっとした嫉妬みたいのなのもあるので

 いつも自分を見て欲しいという欲求がそんな風に反発になったりしますね。

 特に、戸波は少し気が強いですが周りとうまくやろうと努力を普段からしています。

 リーダー的な役割を自ら担えることもできますが、

 本当はいろんな人に、特に先生には認められたいというのが強い生徒でもありますよ。

 今回のこと、私じゃなくて光月先生の所へ行ったのは甘えもありながら、無条件に認めて欲しいというとことが

 あったのかもしれませんよ。」

あぁそうなのかと、さすがだなと思った。きちんと生徒をつかみよく見ている。

 

振り返れば戸波は、休み時間などに僕の所へきて情報の授業の準備はないか?とか

課題のまだの人がいたら助けますみたいなことを進んでやってくれるが、

簡単にそれができているのではなく、努力している部分と認められたいというのがあったのか。

それが裏返しで、あぁいう風になってしまったのかと、自分の力のなさを感じた。

三城先生から、「相手の生徒たちからも話はきかないといけませんね」と三城先生も

フォローに回ってくれるとのことだが、

「光月先生からも相手の生徒からも話を聞いてみてはどうですか。

 できれば、それを戸波に伝えて少し解決に動いてみてください、うまくいかなかったら私がなんとかします」

と心強いフォローを頂いた。

さらに僕自身の未熟さを優しく指摘しながら成長のチャンスにも配慮してもらっていることは良く分かった。

ありがたい話だ。この学校の良さを感じる。

 

早速、話を聞きに行ってみると、どうのいうことはなかった。

買い出しに行くといって出て行った戸波たちだが、

買い出しの途中、ファストフード店でスイーツを楽しんでいたとのこと。

それを別のグループで買い出しにいって戻ってきた友達から聞いたのだった。

戻って来るのが遅いと心配していたし、メールを打っても返ってこなかったので

さすがにもういいやとなって先に帰ったとのことだった。

そもそも、この4人、数日前から、理想の彼氏について話していたときに

ちょっとしたことで意見がぶつかり2対2に分裂しかけていた所でのことだったらしい。

 

なんだそれ!とも思ったが女子高生とはこんなものかと

これからの教師人生でさんざん思わされるのだろうとも思った。

 

放課後には、戸波達に会ってこのことを話したら

「あっちが悪いんやん、先に帰るとはメールこーへんっかったし」と

自分の非は認められない発言。さらに

「お菓子とかも買って帰って一緒に食べるつもりしてたもん、それやのに先に帰ってんで」と。

「いやいや、買い出しに行くって言ってファストフード店で時間潰したらそりゃ向こうだって腹立つやろぅ」というと

「なんでなん、なんで向こうの肩ばっかりなん!」と

ぷいっと膨れて「光月、ほんまいらんわ!」

さすがに、怒りが抑えられず

「こら!何いうてんねん!いい加減にせぇよ!自分の非も認めぇ!」

と強く言ってしまった。この日以来、戸波は僕を避け口をきかなくなってしまった。

 

三城先生に伝えると、すでに両者の言い分は掴んでいた。

戸波たちは買い出しに自ら行ったのではなく、行かされるようにして行っていたようだ。

残った2人は、少しに気になっていた男子たちと話したくて追い出すように買い出しに行かせ、

その後、男子に手伝うよに声をかけ、きゃっきゃふざけながら楽しく飾りつけをしていた。

たまたま、財布を忘れ、取りに戻った戸波がそれを見て腹を立てて

ファストフード店に寄り、スイーツで憂さ晴らし。

どうやら、その男子の中に戸波の気になる男子生徒もいて

それを巡って数日前の理想の彼氏の話のゴタゴタも絡んで完全分裂となった。

 

僕が掴む以上にしっかり生徒を見抜いて話を聞けている三城先生。

さらに、両者に対して、それぞれの非を認めさせ

とりあえずは仲直りのごめんなさいをさせたそうだ。

「教師としては、ここまでかなと思います。

 あとは彼女たちが自分たちで関係をこれからどう築くかは彼女たち次第ですね

 分裂するか、4人グループでまた一緒にすごすか、見守りましょう。

 光月先生、ありがとうござました。報告あってこそ動けました。

 生徒のことも知れて、担任としても良かったです」

「いえいえ、そんな。何もうまくできなくて」

「これからですよ! 担任持つとこんなことは日常茶飯事ですからね、頑張ってください!」

と副担任として担任をささえるどころか、成長の為に関わらせてもらいながら

最終はしっかり尻をてしま拭かれてしまった。

あいがとうございますと、三城先生に伝え

猛省しながら帰路についた。専任、担任、生徒、指導力。。。。たくさんの単語が並び消えていく。