「奇跡が起きた」と思った。

内定だった。常勤講師として。

 

しかし、母校で教師としての歩みをスタートできる嬉しさに思わず、

渾身の力でガッツポーズだった。

1人暮らしで、誰もいない中で一人、喜びの舞のようなことをしていた。

 

母親や、ゼミの先生、友人に連絡し、来年度の職が決まったことを告げた。

みんな喜んでくれたが、誰よりも喜びに舞がっていたのは、僕自身だっただろう。

人生で一番嬉しかった瞬間だったかもしれない。

 

 

実は、内定の通知がくる数日前に京都の学校からは、合否の通知がきていた。

結果は「第3候補で内定」というものだった。

要するに前2名が内定を蹴らなければ、僕に順番が回ってこない。

保険をかけれるような内定の出され方だった。

しかし、その学校へは行く必要はない。

断るのは少々気が引ける部分はあったが、第3候補ということや、母校への採用もあり、

晴れやかな気持ちで電話連絡し、断り意を伝えた。

つい母校への内定が決まったことを電話口で伝えると

「よかったですね」と親身に答えてくれた。意外な反応だった。

ひょっとしたら、すごく親切で人間味のある学校なのかなというのが垣間見れた。

その対応で、どこか胸にとげが刺さったような気分になってしまった。

 

いや、それでも母校での採用、自分の後輩に教師として教える。

最高の社会人デビューになるはずだった。