せねば
なにかをせねば、から解放されたかもしれない。
いや、まだ残っているが、必要なものだけが残っていく時を過ごしている。
まだまだなにかを手放すのかもしれない。
それは、不安や恐怖を引き起こした。
しかし、そこをも通過してみると、心地よい諦めと静かで愛おしい時間が始まった気がする。
せねばならない、よく生きねばならない、理想に近づかねばならない、役に立たねばならない。
それらは、できない。
だから手放し始めた。
決して潔くはない諦め。
やがて清々しい自分の時間だけに研ぎ澄まされ、彫刻家が要らない部分を剥ぎ取り作品を掘り出すように、自分の本質だけが取り出されていく。
完璧にその作業が終わる時、静かで美しい幕引きにたどり着くのかもしれない。
少しずつ捨てた後の、そのご褒美は、静かで熱い本物の音楽。
赤裸々な吐露を繰り返す作家のつぶやき。
自分好みの珈琲。
秋の澄んだ空気。
たくさんある。
