パチンコ屋「エリンダ」

 

煙草の煙が漂う。

 

この時間になれば客も少ない・・・・壁の時計は20時を回ってる。

・・・・ってか、そもそも平日に、そんなに客が入ってるってわけじゃない。

 

それもあって、好きな台を選べる。

「エリンダ」は、オレのホームグランドだ。

 

釘師のクセも十分にわかってる。

 

 

麻雀がない日はパチンコだ。

 

がっこーから帰れば・・・・がっこーをサボればパチンコ屋にいた。

 

 

勝負の状況は一進一退。

 

出た出たぁ~~~~~と思ったら、飲まれる。

球が無くなるぅ~~~~~と思ったら、当たりがくる・笑。

 

 

何度か、そんな波が来て・・・・今は出た球の半分くらいを飲み込まれていた。

 

 

パチンコは最大に勝って・・・・「打ち止め」までいって10,000円くらいの勝ち。

 

「打ち止め」ってのは、言ってみれば、その台のタンクに溜まってる球がぜーーんぶ出尽くしたって状態だ。

 

「参りました!」

 

台が降参です! って言った状態の事だ。

 

とーぜんだけど、毎日「打ち止め」を狙ってはいる。

・・・・が、そう簡単にはいかない。

 

一気に、一方的に球が出続けて「打ち止め」までいくってことはない。

出ては飲まれて・・・・そしたらまた出て・・・そんな波の繰り返しで「打ち止め」までいく。

 

一番、球が出たところで止めればいいんだけど・・・なかなか、そうもできない。・・・・で、「打ち止め」までいかず、途中でぜんぶ飲まれてしまうこともある。

 

 

・・・・・退くか・・・・

 

 

釘師のクセがわかってるからって100%勝てるってわけじゃない。

パチンコ台は、いろんな・・・・複合的な要素で出たり出なかったりする。

同じ日でも、午前中に「打ち止め」になったからと、午後に2匹目のドジョウを狙いに行っても見事に飲まれてしまうこともある。

 

「流れが悪い」

 

そう判断すれば、退いてしまったほうがいい。

 

麻雀、パチンコ・・・・全て勝負事ってのは「流れ」ってのがある・・・・毎日のようにやってると、そんなふうに思う。

 

 

台に残ってた球、全部をドル箱に入れて席を立つ。

 

 

両替機カウンター。

球を計算機に入れる。

 

全て MILD SEVEN に交換した。

 

1カートンと5個・・・・15個になった。

 

 

パチンコは全て煙草に交換するようにしていた。

 

パチンコの勝ちは、現金化できたり、棚に並んだ色んな商品と交換ができる。

 

現金への交換が、一番「交換率」が悪い。

 

どうせ煙草は吸う。買う。・・・だったら、煙草に交換するのが一番得策だ。

 

「打ち止め」にして、10,000円の勝ちの時でも、全部煙草に交換した。

 

・・・・どうせ、吸う。消耗品だからな。

 

・・・それに・・・・

意外と「売れた」笑。

 

「雀荘カズ」

 

麻雀をしてれば煙草は進む。

 

徹夜・・・・タバコがなくなる。

 

そんなヤツらに「売れた」笑。

 

わざわざ外に出て煙草を買いに行くのはめんどーだ。

 

もちろん煙草は定価で売る・・・・煙草って安く売ってるところはないからな。

 

 

・・・・そうすると、儲かる・笑。

 

まぁ、どーせ自分で吸うんだから、売っても、自分で吸っても結果は同じなんだけどね・・・

 

でも、そんなわけで「打ち止め」になっても、全ては煙草に交換した。

 

 

 

今日は・・・つぎ込んだのが1,000円だったから・・・・2,000円の勝ちってとこか。

 

まぁ、負けなかっただけ良しとしよう。

 

とにかく「負けない」ことが重要だと思っていた。

 

 

「麻雀」「パチンコ」

オレにとっては遊びじゃない。バイトでしかない。

 

カネ払ってバイトするやつはいない。

 

とにかく「勝つこと」が至上命題だ。

 

 

 

ジャンパーのポケットにMILD SEVEN を詰込み、1カートンを持って「エリンダ」を出た。

 

商店街のアーケードの中だ。

 

裏路地に入って行く・・・・

 

中華屋が見える。

 

 

入ってカウンターに座った。

 

ここはチャーハンが美味しい。

 

まだ新しい店だ。

店主ひとりで店を切り盛りしてる。

オジチャンってほど歳はいってない。兄貴ってほど若くもないけど・・・・・

 

夕食時は過ぎてる。・・・・ってか、もうすぐ閉店時間だ。

 

カウンターにオレを含めて3人。

 

チャーハンと餃子を頼んだ。

 

 

棚から少年ジャンプを取ってペラペラとめくっていく・・・・

 

もう、少年ジャンプを買うこともなくなっていた。

 

読むのも、こうやってメシを食う時・・・・喫茶店でも行ったときくらいしか読まない。

 

 

追いかけていたマンガが軒並み終了になってしまい、ジャンプを買うのもやめてしまった。

 

・・・・いや・・・もう、漫画ってものについていけない・・・・んな感じがしてた。

 

最近は、もっぱら活字・・・・小説にのめり込んでいた・・・・・

 

 

「読んでから見るか、見てから読むか」

 

 

活字の世界では「角川映画」が面白い映画を連発していて・・・

 

 

 

「カズくん、ありがとうね。助かるよ」

 

店主が笑顔で言いながら、餃子とチャーハンを出してくれた。

 

「いえ・・・・」

 

オレも笑顔で返す。

 

 

・・・・・店の中。厨房の奥。その裏口が開いた。

 

鈴木君が入ってきた。

オレに気づいて片手を上げた。

 

オレも手を上げる。

 

鈴木君は慣れた手つきでエプロンをしていく・・・・

 

 

喫茶店「蓮」のバイトに薮田を紹介してから、商店街中のバイト情報が入ってきた。・・・・スーパーでバイトしてたからな。

 

 

「カズくん 誰か紹介してくれない?」

 

 

バイトには、いろんな種類がある。

 

「蓮」のように、常に店にいるバイト。・・・・接客ってな・・・まぁ「人柄」みたいなのが必要なバイト。

 

スーパーの棚卸のように、その日だけ人手が欲しいってバイト。

 

 

・・・・で、「皿洗い」ってバイトが意外と多いことがわかった。

 

 

食堂、ラーメン屋・・・・そんな飲食店の皿洗い。

 

スーパー・・・・食料品店の皿洗い。・・・・食品トレーの皿洗いだ。

 

 

意外と「皿洗い」ってバイトは、いっぱいあった。

 

 

・・・・そして、「皿洗い」ってバイトには、特徴がある。

 

 

・・・・それは、「誰が来てもいい」ってことだった・笑。

 

 

・・・・しかも、「皿洗い」だけ。・・・つまり、1日1時間だけでいい。

 

 

仕事は、淡々と皿を洗うことだ・・・・・あるいは、商品のトレーを洗う。

 

いずれにしろ、「洗いモノ」という単純作業・・・・誰がやってもいい・・・・誰が来てもいい。・・・・誰でもできる。

 

 

そう、喫茶店のホール係みたいに、人間が固定される必要はない。・・・・・誰かが、決められた時間にいればいい。んなバイトだ。

 

 

麻雀で負けたヤツをそこに放りこんだ・笑。

 

 

麻雀で負けたヤツ・・・支払のできないヤツからは、家まで行って金目のモノを押収した。

・・・・が、金目のモノがないヤツもいる。

「負け金」を回収できないヤツがいる。

 

そんなヤツらを、いろんな場所の「皿洗い」のバイトに放りこんだ・笑。

 

只今、「皿洗い」バイト先は、この中華屋を含めて4件あった・笑。

 

 

負けた高校生にとってはバイトができて返済ができた。

 

店は人手が確保できた。

1日1時間だけ。「皿洗い」だけのバイトって見つけるのが大変だ。

 

オレにとっては、負け金が回収できた。

 

 

・・・・三方良し  だ・笑。

 

 

もちろん、バイト料のピンハネとか、そんな阿漕なことはしなかった。

 

 

・・・・ただし、もちろんバイト料の支払いはオレに来るようにしてあった・笑。

 

 

これで、「麻雀の勝ち」・・・・その取りっぱぐれはなかった・笑。