ブルーが基調のおしゃれな壁。

 

流行りのシスコンが並んでる。

 

シスコン・・・・システムコンポーネント。

オーディオセットのことだ。

 

レコードプレイヤー。アンプ。チューナー。カセットデッキ。そしてスピーカー。

・・・・並んでるのは、SONYの高いセットだ。・・・・ボクの憧れのセットだ。

 

「アリス」がかかっていた。

谷村新司の声が流れていた。

 

ふたりで聞いていた。

 

別の壁には棚があって・・・・トロフィー・・・・ボール、グローブが並んでいる。

 

ここは、関川の家だ。関川の部屋だ。

野球部のエースで成績優秀。

家は、由緒正しい「地元名士」・・・・店が何店舗あるんだか知らない。

 

この家は新しい・・・・なんだか、家ってより、小さなビルみたいなカッコいい家だった。

 

・・・・自分の部屋があるっていいよな・・・・

ボクの家は、6帖と4.5帖で親子3人が暮らしてる。

 

流行りのガラステーブルの上には、紅茶が出されていた。・・・・そしてクッキー。・・・・さっき、お母さんが持ってきてくれた。

 

3年生になって初めて同じクラスになった。

「反志村」

そんなことから仲良くなっていった。

 

たまにこうやって遊びにきていた。

 

 

 

教室。

 

名前を呼ばれた。

 

「はい」と返事をして教壇に向かう。

 

テストを受け取った。

この前の実力テストがもどってきた。・・・・数学。

 

 

席へ戻る。

 

「カズ、どうだった?」

 

高柳が声をかけてくる。・・・・紺野、南原、沖永、東・・・・・「窓際族」が集まっている。

 

高柳は文化祭のバンドでボーカルをやった。

・・・・われらが「窓際族」ではリーダー的存在だった。

 

面倒見がよくて、親分肌で・・・・みんなの接着剤って感じだった。

 

元々「窓際族」のメンバーは、幼稚園から一緒ってな幼馴染の仲間内だった。

ボクが、中学校1年生で、転校してきた時に、たまたま高柳が同じクラスで、何かれと面倒みてくれたのが始まりで繋がっていった・・・・どーゆーわけか、3年生のこのクラスで、「窓際族」みんなが同じクラスになったってわけだった。

 

だから、元々あった幼馴染のグループに、なーーんとなく、途中からボクが入っていったってことなんだよな。

 

・・・・まぁ、ボクにとっての「親友」って呼べる存在は、陸上部の富岡だったり、出水だったりするわけで・・・・「窓際族」は、クラス内での友だちって感じだったんだけどね。

・・・・ところが、3年生になって・・・・受験一色になって・・・・部活にも行かなくなったため、なんだか「窓際族」の連中と一緒にいるのが当たり前になっていった。・・・・それでバンドまで組んじゃったわけだ。

 

 

・・・・何・・・??・・・テストの結果・・・・???・・・・見たい・・・・・笑・・???

 

 

別に隠すこともない。

 

机の上に、どどーーんと出してやった。

 

 

「88点」

 

 

・・・・座が凍り付いた。

 

「ひっぇぇぇ~~~~~~~」

 

驚きの声が上がる。

 

「へっへ・・・・400点いったぜ」

 

どうだとばかりに言ってやった・笑。

 

「カズ、すげぇなぁ~~~~~オレはダメだぁ・・・・」

 

高柳が頭を抱えた。

そーとー悪かったのか???・・・・・笑。

 

 

この町では、受験科目は5教科。500点満点だ。その点数で受験の合否が決まる。

 

 

基本的な受験先の普通科高校は3校。

 

上沢高校。

普通科は400点以上で合格。上の特別クラスは450点以上。・・・トップクラスは東大までが視野に入るってな、ちょー進学校だ。

 

中場高校。

350点ってとこらしい。

 

下郷高校。

新設校ってことで250点でも合格するって話が出てた。

 

これ以下なら、農業、工業、商業の実業高校ってことになる。

学科とかによって違うらしいけど、200点くらいあれば十分合格。150点くらいでも学科によっては入れるらしい。

・・・・さすがに、それ以下なら、私立の「アホ学校」に行くしかない。

 

おおむね、こんなとこらしい。

 

 

で、ボクは、今回の実力テスト、・・・・なんと、5教科合計で400点を超えた。

・・・まぁ、今回は出来すぎ。いつもは330点くらいだ。

 

 

・・・・・成績が上がってきていた。

 

狙っていたのは 下郷高校 だった。

 

3年生になって、最初の成績が250点といったところだったからだ。

 

大学には行きたいって考えていたから、なんとしても普通高校に行かなきゃなんない・・・・その一番低いレベルの高校が 下郷高校 だったからだ。

 

でも最近は330点前後まで成績が上がってきていた・・・・それでも、330点から上には、なかなか上がっていかなかった。

 

小学校高学年から中学校1年までの、家のドタバタが響いていた。

 

どうしても勉強で、抜けてるというか・・・・わからないところがあった。

それがネックとなって、伸び悩んでいた。

 

 

机の上に 88点 の数学のテスト。

 

なんだ?どーした??? 何があった・・・???・・・わかった、誰のをカンニングしたんだ・・・????

 

「窓際族」の連中が騒いでいる。

・・・・ひとり、我関せずって態度の紺野。・・・・どーでもいいって顏だ。

 

「窓際族」の連中は、一番成績が良いのでも南原の350点といったところか、・・・・そんな中で、今回のボクの「400点超え」は、そりゃ、大騒ぎだ。

 

いつもは、せいぜい330点ってのが、いきなりの急上昇、奇跡の展開だ。そりゃ大騒ぎにもなる・笑。

 

 

「おおーーーカズ、すっげーな!!」

 

 

関川がボクのテストを見て言った。満面の笑顔だ。

 

「ありがとう」

 

ボクも笑顔で返す。

 

 

・・・・そうなんだ。

関川に勉強を教えてもらっていたんだ。

 

ボクが本当に行きたかったのは 中場高校 だ。

さすがに3年生・・・受験勉強をやらされる、成績も上がってきた。

それでも330点から伸び悩んでいた。

 

関川は成績優秀だ。

とーぜん、狙っているのは 上沢高校 ・・・そして、特別クラスだ。

 

関川の場合は、合格するのは当たり前だった。・・・・問題は何番で合格するか、だった。

1番で合格して、新入生徒代表の「答辞」を読むことが目標だった。

 

 

ある時、そんな関川に、わからない問題を質問したのがキッカケだった。

 

「それならウチに来いよ」

 

ってことになり、今では、一緒にテスト勉強をするようになっていた。

 

大人の教師より、成績優秀な同い年の生徒に習った方が圧倒的にわかりやすかった。

それに、やっぱり、野球部エースは伊達じゃない。

話すこと、教えることが上手かった。

 

関川には・・・・いや、関川だけじゃない・・・・生徒会長の長田もそうだけど、由緒正しい「地元名士」には・・・・なんだろう・・・・ヒトを惹きつける、そして率いる何かがあった。

 

同い年なんだけど、関川には、素直にモノが聞けた。・・・・なんだか、兄貴といっていいような雰囲気があった。

 

・・・・これが、地方の由緒正しい「地元名士」の人間力ってやつなのかもしれない。

 

 

「どうだった?」

 

同じ「窓際族」の紺野に聞いた。

 

「どうって・・・??・・・・なーーーんも変わらんわーーーー」

 

どーでもいいわーーーー  んな感じで答える。

 

・・・・本当に変わらないんだろうと思う。・・・・ってことはトータル300点ってとこか・笑。

それでも、別に困ってるような感じでもない。

紺野が狙ってるのは 下郷高校 だ。

 

「受験」のことなんか考えてないんだろうな・笑。

早々に 下郷高校 と決めてしまい・・・・そこなら落ちることもない。

 

 

紺野が勉強してるのを見たことがない。

 

音楽室でギターを弾いてるとこしか見たことがない。

 

 

小柄で眼鏡をかけて卓球部・・・・

「窓際族」・・・・その言葉がピッタリだった。

 

 

・・・・・でも・・・・紺野も由緒正しい「地元名士」の御曹司なんだけどなぁ・・・・・笑。

 

なんたって親父さんはPTA会長だ。

 

それも、小学校、んで中学校と。

 

実は・・・・由緒正しい「地元名士」ってんなら、紺野の家が一番じゃないのか‥‥?笑。

 

 

マズイぞ紺野。

大丈夫か紺野・・・????笑。

 

 

我関せずで、紺野は、今日も音楽室でギターを弾く。