哀しみを知る人だけが愛を理解する
                     哀しみが人を誠実にする
              (「欲望という名の電車」からブランチの言葉)
あらすじ
プランチ・デュボア(ヴィヴィアン・リー)は、米国南部のベル・リーブ(美しい夢)と呼ばれた大農園で裕福に育った。しかし、先代の放蕩生活で次々と財産を売りに出し、両親の病気と介護・葬式で最後はすべて売り払ってしまう。
そのため、妹ステラ(キム・ハンター)の嫁ぎ先、ニューオリンズへ逃げるようにやって来て居候になる。映画はそこから始まる。
ステラは貧乏な職工スタンリー(マーロン・ブランド)と結婚していたが、スタンリーは退役軍人で、単純・粗野・暴力的で酒飲み・物欲も強くポーカー好きだったが、ステラのことは愛していた。
ブランチはスタンリーを見て「彼は暴力への欲望を強く持っている。彼は庶民よ。私達が育ってきた理想を忘れないで、行動はケダモノと変わらない、人間以下、ポーカーは猿のパーティよ。まともでない逃げましょうよ」とステラに言うほどだった。
ブランチは以前、高校の国語の教師だった。ブランチは十代の頃、一度結婚をしている。相手は16歳の少年だつた。結婚後、ブランチは夫に対し「あなたは弱い、尊敬できない」と責めたとき、夫はピストル自殺をして死んでしまった。
その後、教師の時、別の17歳の生徒と関係を持ち、生徒の両親から告訴され、学校を追放されてしまった。そのあとピュアでナイーブなブランチは、徹底的に堕落してゆく。
ブランチがステラの家に来て、しばらくしてスタンリーのポーカー仲間のミッチ(カール・マルデン)の優しい性格に魅かれてゆく。ミッチも真面目にブランチとの結婚を考えている。
ところが、スタンレーは別の仲間から聞いたブランチの自堕落な過去をミッチに暴いてしまう。ミッチ自身も調べてそれが事実と分り、愛想をつかす。
ブランチの誕生日にミッチを自宅に招くが、ミッチは来なかった。その夜ステラは産気づき病院に入院する。一人になったブランチは、過去を思い出し、華やかで豊かな生活を妄想に浸る。
そのとき、突然スタンリーが自宅に戻り、酒を飲みブランチに暴行する。そのショックでブランチは完全に精神を犯されてしまう。
後日、出産して帰ったステラは、精神を犯されたステラから一部始終を聞き、病院へ入れる依頼をする。
ブランチは、迎えに来た医師を紳士と思い、一緒に病院へ向かう。
一方、赤ん坊を抱えたステラは、もう二度と夫の元には帰るまいと言って出て行く。
 
感想など
1 暗く、悲惨で見るに耐えないような重い映画でした。スタンレーは「悪の象徴」であ り、ステラは「善の象徴」で、主人公のブランチは、善悪の谷間で傷つき、悩み、心 は満たされず、夢は叶わず、最後は病気になってしまう結果でした。
 しかし、妹のステラが、赤ん坊と共に、そこから立ち上がって生きてゆこうと決心す るところが救いになりました。
 
2 映画の中に、人間の欺瞞、虚栄、醜さ、欲望という裏面を赤裸々に出し、それを  否定するような妹のステラの姿が清純で優しく美しく感じられました。
 
3 今で言うDV(ドメスティックバイオレンス)」が描かれますが、この作品は、1951年 なので、米国では1970年後半にいくつかの致死事件で問題となったため、そのこ  ろとしてはまた゜、あまり問題視されていなかったと思われます。
 現在、米国では年間200万人が被害を受け、1日に11人が死ぬというほどの問題と なっています。
 日本では、2001年にDV防止法が施行されましたが、加害者の多くは、発達障害や 自己愛性人格障害の傾向があるようです。
 
4 ブランチには、過度のストレスからきた精神的な原因による反応性うつ病、不安  神経症、気分障害、妄想障害、性嗜好障害などが見受けられますが、1950年代に やっと向精神薬が開発されたばかりで、まだ治療が難しい時期だったのかもしれ  ません。また、偏見や差別はひどかったでしょう。
 
5 主役のヴィヴィアン・リーは、38歳頃だと思います。風と共に去りぬは20代でした。
 風と共に去りぬとこの作品で、オスカーを取っています。
 マーロン・ブランドは、この後の波止場とゴットファーザーでオスカーを取りました。
 ステラ役とミッチ役の2人もこの作品で、助演賞を取っています。
 
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     スタンリーはブランチの財産を調べる               ブランチとミッチの出会いイメージ 4  イメージ 5
    ブランチはステラに別れるよう説得する           ブランチとミッチお互いに好意を持つ
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     誕生日に招待したミッチは来ない             ステラはスタンレーと別れる決心をする