あらすじ
銀行員の笠智衆は、子ども達(姉 原節子・妹 有馬稲子)が、幼いころに妻(山田五十鈴)と離別した。
原因は、夫が単身赴任したときの妻の男性関係の誤解らしく、夫が妻を追い出したのか、妻の方から出て行ったかは定かでない。出て行った妻は再婚したが、笠智衆は男手ひとつで、姉妹を育て上げる。
ある日、学者(信欣三)へ嫁いだ姉が、不和のため突然実家へ二歳のこどもとともに帰ってくる。笠宅には、妹が同居しているが、妹の生活は荒れているのだが、父親は気付いていない。
そんな中で、有馬稲子は、マージャン屋の知らないおばさんから話しかけられ、話しているうちに、もしかしたら母親ではないかと感じてしまう。
そのことを姉に話すと姉の原節子は、母の顔を覚えているので、妹に内緒でマージャン屋を訪ね母と会う。妹は自分が本当に笠智衆の子どもなのか、姉や山田五十鈴に泣きながら詰問する。
妹は大学生(田浦正巳)と付き合っていて、田浦の子どもを宿していた。田浦からは本当に自分の子どもなのかと疑われたりして、妹はどうすることも出来ず堕して自棄になり、酒を飲み踏み切り事故で死ぬ。
結局、原節子は子どもは両親がいて育てた方が幸せだと判断し、嫌な夫でも我慢して暮す決心をし、実家を出て行く。
山田五十鈴も再婚した夫と共に、東京を離れ北海道へ旅立つ。笠智衆ひとりが取り残されるというストーリー。
 
印象的な場面
1 有馬稲子が母の山田五十鈴に会って、自分の父は笠智衆なのか詰問する場面の切なさ。
 
2 有馬稲子が堕胎して、自宅へ帰ったとき姉の子どもを見て絶句し、二階に駆け上がる場面の辛さ。
 
3 山田五十鈴が、亡くなった有馬稲子のため花束を持って笠宅を訪ねたときの原節子のなんともいえない辛い表情が心に突き刺さる。
 
4 山田五十鈴と中村伸郎が北海道へ旅立つ時、原節子が見送りに来てくれないか心待ちしてホームを見ているシーンの辛さ。
 
5 原節子が夫信欣三の元へ仕方なく戻ることを決心した辛い表情。
 
6 結局、一人ぼっちになった笠智衆のしょんぼりとした孤独な姿が哀しい。

徹底して夫婦・親子を残酷に描いていますが、その残酷さの裏側にある生きることの喜びや大切さが浮かび上がってくる反面教師のような作品でもある。
 
GALLERY
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母親に父親は本当に笠智衆かどうか詰問する場面。
 
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旅立つ母が娘が見送りにくることを期待している場面
 
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孫が忘れていった玩具を見つめる笠智衆