今日はアーティストの皆様へ「略歴の書き方」についてお話しさせて頂きたいと思います。
展覧会の際、ほとんどの画廊では作家の略歴を会場に貼ったりホームページに掲載したりします。鑑賞者にとってその作家がどういう経緯で活動を行っているのかは気になるところです。
書き方は人によって様々ですが、今回は美術館や海外などのパブリックな場で使用されている書き方をご紹介しますので、是非アーティストの皆様は参考になさってください
【略歴例】
高嶋秀春 Takashima Hideharu ←名前は日本語と英語表記で、少し大きめの文字で書くと見やすい。
1981 東京都生まれ ←年号に「年」はつけなくてよい。生まれは都道府県で記載。
2010 多摩美術大学 美術学部工芸学科 卒業 ←在籍中の場合は「工芸学科 1年在籍」と記載。
2012 多摩美術大学 大学院美術研究科工芸専攻 修了
2014 東京芸術大学 大学院彫刻専攻 修了
※基本的に高校生以下の年齢の経歴は書きません。入学年も必要ありません。
個展
2012 「Hideharu Takashima Exhibition」KOKI ARTS、東京
2015 「空壷の人」ギャラリーマルヒ、東京
2017 「新世代への視点2017」ギャラリーQ、東京
※展覧会名は「」内に入れ、その後ろに開催場所、都市名の順で記載します。都市名は「銀座」や「原宿」ではなく「東京」等、都道府県で統一してください。
グループ展 ※個展と同様に記載します。同じ年に開催している展覧会は年号不要です。
2008 「神奈川県展」神奈川県民ホール、神奈川
2010 「多摩美術大学工芸学科 卒業制作展」スパイラルガーデン、東京
2011 「第14回 岡本太郎現代芸術大賞展」川崎市岡本太郎美術館、神奈川
「中之条ビエンナーレ2011」群馬県中之条町、群馬
2015 「xiang展(象ー像ー想)」日中友好会館、東京
「第2回武蔵美美術部展」ビリケンギャラリー、東京
「ヤングアート台北2015」シェラトングランデ台北ホテル、台北
2016 「YOUNG INTERNATIONAL ART FAIR」ブリュッセル、ベルギー
「Formosa Art Show」 Humble House Taipei、台北
「MDP CERAMICS展」MDP GALLERY、東京
「横山宏トリビュート展「60+40=100」トーキョー カルチャートbyビームス、東京
受賞歴 ※展覧会名と受賞について記載します。場所や都市名は不要です。
2008 「神奈川県展」 入選
「多摩美術大学展示大賞展」 審査員特別賞受賞(審査員 諸川春樹氏)
2009 「多摩美術大学展示大賞展」 審査員特別賞受賞(審査員 椹木野衣氏)
2010 「多摩美術大学展示大賞展」 審査員特別賞受賞(審査員 辛酸なめ子氏)
「群馬青年ビエンナーレ2010」 入選
2011 「第14回岡本太郎現代芸術大賞展」 入選
※他に活動やパブリックコレクション、雑誌やテレビのインタビューがある場合は以下のように付け足しますが、少ない場合は全て「その他」でまとめても構いません。ただし、コレクションは別に記載します。(※以下の略歴は高嶋さんの略歴ではありません。)
メディア
2013 美術の窓「山下裕二の隠し球」9月、10月号掲載
2014 BSテレビ朝日『ポップメイカー』
ワークショップ
2011 CANAL CAFE boutique Opening LIVE paint
2015 「超ショートショート講座 抽象画を描こう」世田谷文学館
コレクション
横浜美術館、ニューヨーク近代美術館、東京都写真美術館、東川町文化ギャラリー
いかがでしょうか?
以上のような書き方が、最も公的な略歴の書き方となります。
幼少時代〜高校時代までの活動や大学での文化祭や学内展、他に結婚や転居等のプライベートな出来事は基本的に記載しません。
しかし、そういった人生の出来事が自己の制作と大きく繋がる場合は、略歴とは別のステートメント(作品についての考え方)として書きます。
特に個展ではステートメントがあるとより制作意図が伝わります。書き方は自由です。
【ステートメント例1 作家 : 山部】
今回の展覧会では、溢れる風景画をテーマに展開してきた風景画の流れを展示します。
風景画の概念は時代によって様々に変遷します。記憶と現実、現在と過去、東洋と西洋など対立する要素を内包しながらも、その対立構造ではとらえられない風景画を重層的な構造として表現します。
さまざまな条件によって変成する風景画をつくることは、見るものと見られるものの相互的な編集過程であり、また、自らの足下を見つめ直すために世界観を更新する仕事でもあります。
【ステートメント例2 作家 : 青木】
記憶の中に残る、人と人とが共鳴できる心情的な思いを表現したいと考えています。
山形を中心に東北にいた頃、人と人との出会いの中で生まれてきた気持ちが自分の中で何だかとても優しく愛おしい思いに変化しました。
そして以前病気を抱えていたとき聞こえてきた幻聴、それらの出来事を通して、まるで存在しない何かが自分に伝えたいことがあるような心情的な思いを感じました。それをイメージとして色や形や空間に再構築し、それが見る人の心の奥底に届くものがあればと思いながら創作活動を続け ています。
【ステートメント例3 作家 : 小林】
知っている物を繋げ、知らない物を見る行為。
制作は私にとって既知の術を用いて未知を捕獲する、罠と同じ構造を持つ。
制作を通じて、私は比喩レベルでの狩猟を行ってきた。
モチーフとして扱う物や動物が持ついわれや文化的な意味を調べ、
伝承や表象に影響を受けて制作をしている。
ステートメントは略歴の前と後、どちらに入れても構いません。
↑こちらはグループ展なので混乱しないように作品画像も入れています。
なお、「略歴」は国際的基準用語として「Curriculum Vitae」を使用しています。
これは略して「CV」と表記します。
鑑賞者にとって「分かりやすい」「見やすい」ということを意識し、是非皆様の略歴(CV)を完成させてください