☆国会議事堂の演壇などの歴史的建築物を手がけ、西欧スタイルの飾り彫の第一人者であられた、伊藤 武雄(いとう たけお)氏。翁の代表作には、他に迎賓館、銀座マキシム・ド・パリなど多数。
☆広げて見せていただいた翁の手の、指の太さ、節、独特の曲がり。ギャラリーの一番奥の少し凹んだところ、畳1枚くらいのスペースに、MY敷物を持ち込まれ、その上でお客様とお話されていたこと。時間にとても正確にご飯をしっかり召し上がられていたこと。打ち合わせ時には『一番むずかしいのはこういう(円柱彫)』と、(2センチ位の丸い棒が、だんだん細くなった、全面に花の飾り彫がなされた円柱を手にして)語られていたことなど、懐かしく思い出されます。
☆『おじいさんは、銀座で展覧会をしたときが、一番楽しかった。画廊の前の桜がとてもきれいだった。と、常々話していたんですよ。』と、ご家族の方が、後に教えてくださいました。ご自宅には、西欧スタイルに限らず、飾り彫の歴史や美術にまつわる図録、文献、図案、絵画資料など、某大な量が遺されていたことも。
☆当画廊では、2004年(90歳)から、2005年、2006年個展開催。
以下は、2006年3月 翁最後の個展開催時の拙文です。
戦中戦後を通じて、日本の数多くの歴史的建造物(国会議事堂や、迎賓館など)の内装・家具などを手がけられた西欧スタイルの飾り彫の雄(ゆう)ー伊藤武雄氏。92歳にしてなお、冴えわたる『円熟』の技が感じられる作品展です。伊藤翁の作品は『品格、力強さと流麗さ』を感じる重厚な趣のもので、特に、円柱形の形をした材木に、飾り彫を全面に浮き出るように彫り上げられていく技法は(波や花、独特の意匠を全体に(ネコ足のように)非常に難しい技術を必要とし、他の人ではそう簡単には、彫り上げられないものです。他の彫り師の方から『伊藤翁』と、一目おかれ、現役で第一線で活躍をつづけられていらっしゃいます。その今までに手がけられた作品の多くは、職人としての仕事のため、作品にサインなどが入らないものばかりですが、造りあげられてから何十年経過した現在も、後世に私たちの誇るべき財産として、息づいています。空間のなかにある、椅子やテーブルに施された装飾、部屋のまわりぶちや、みきりぶち、階段の手すり、扉・・・その雰囲気のある空間を引きしめ、盛りたて、来賓を見守ってくれています。(銀座の有名フランス料理店の貴賓室なども手がけられました。)『誇りとは、人生とは、仕事とは』文字通り生涯現役の人生の大先輩。92歳のいま、『大きな扉なども注文で造ってみたい』と語られています。(西欧スタイルとは、チーク材、ウォールナット材、マホガニー材などの良質で硬質な材木を使用して彫られた、曲線の美しい、優雅なスタイルの飾り彫りのことです。英国などの古きよき時代の室内を思い浮かべてみたイメージ。画廊主)円柱彫りが見事なスツールや、翁の代表作の1つでもある、置き時計の作品をはじめ、スイスのルージュ社製のムーブメントを入れた、こだわりのオルゴール(よく見ると、足の部分まで心をくばられた細かい彫りがはいっている!)、手のひらにのる位の大きさの可愛らしい遊び心のあるウサギの小箱や、可愛い木靴、飾り彫が映える大中小様々な大きさの鏡や、額。リボンのあしらいもある小さな壁掛け時計、アンティークのビスクドールに、最適のちいさな椅子たちまで。彫りの様子をダイレクトに伝えてくれる、木地のままのレリーフも一部展示予定です。300点余を一堂に。どうぞご期待くださいませ。
(文責 旧ギャラリー銀座運営者 岩井)
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