☆酒井 恭子さんとの出会いは、インターネット。数回のメールの後、初めてお会いした時のことは忘れられません。

 

☆『運命を変える戦争。賛成した人も反対した人も、何もしなかった人も、誰彼となく命を落とす戦争。戦争に対する、恐怖、恨み、悲しみ、凄惨さ、トラウマになる残酷な記憶、臭い、空腹、虚しさ・・・戦争を体験した私たちは、近いうちに死んでしまうけれど、この戦争の酷さ、過ちは次の世代に必ず伝えなければいけない・・・』布鞄の中から大切に取り出された、ちいさな人形を手に、切々と、お話しをなさっていらっしゃいました。

 

☆昭和生まれの私は母校の泰明小学校で、銀座に投下された直撃弾で四人の先生がお亡くなりになったこと、焼け野原の銀座のことなどを何度も学び、親や祖父母世代の戦争体験者の声、修学旅行の原爆資料館、教科書、本、テレビ、雑誌、新聞などで、戦争のことについて、学んできたつもりでしたが、そのどれもが【トラウマにならないように、あらかじめ印象を弱めるよう、配慮されたものであったこと】に、この時に初めて気づかされました。


☆有名な反戦の絵といえば、ピカソの【ゲルニカ】日本では、丸木位里、丸木俊画伯の【原爆の図】でしょうか。「安らかに眠って下さい 過ちは繰返しませぬから」この記念碑が設立された昭和27年に二十歳だった方も、いま85歳。広島の原爆資料館の展示も今年から、被爆を再現した人形が姿を消すなど様変わりしたそう。

 

☆『平和への祈り』を次世代に繋ぐことが、昭和世代の宿題なのかもしれない、と改めて思う、2017年の初夏です。

 

こちらは、2007年お彼岸に開催された個展開催時の拙文です。

 

戦争の恐ろしさや悲しみを実際に知る世代の作家の酒井恭子さんが、『平和への祈り』を込めてひとつひとつ制作した、10センチメートルほどの、小さな小さな粘土人形約300点余を展示予定です。ひざまずき祈る粘土人形、何かを話したそうな粘土人形、手を組む粘土人形。あなたはこの粘土人形たちをみて何を感じるでしょうか。けっして、怖い表情・風情の粘土人形ではありません。穏やかに笑っているようにも思えます。その粘土人形から、感じるものは、とても強いものだと思うのです。(ご主人は美術写真家の、故酒井啓之氏。岡鹿之助さんをはじめ、柳原義達氏、など著名な芸術家のフォトグラフを50年間第一線で撮り続けてこられた方です。)その根底にながれている想いは、作家のもう一つの半生である40年以上の看護婦さんとしての職歴を伺うと頷けます。人間の心の中も表現しようとされる力、心の解放、精神の病をえて、社会から隔絶されていく人々の葛藤と周囲の人々の関心と無関心。そして人間の生と死。『戦後、60年以上の長い長い歳月がながれました。10年前千葉で個展を開いてから、この数年年の間に、人々の戦争に対する関心、憎悪の念、平和への意識が急速にうすらいでいくような気がしてなりません。大切なひとつしかない人の命を一瞬にして奪う、それまであった生活を、一瞬にして奪う。一度きりの人生を残酷に変えてしまう戦争。「一人の死は悲劇だが、数百人の死は統計でしかない。」(アイヒマンがいったとされるこの言葉を展覧会を見終わった時、あなたはどう感じるでしょうか。)決して風化させることなく、《平和への祈り》を今いちど、生きている私のできうることとして、発表いたします。本当は原爆投下の地、広島か長崎での発表も考えました。ご希望のかたには、この粘土人形を持ち帰っていただくことも考えています。』とのお言葉。カンボジアや中国の遺跡の神々、六地蔵さまを描いた油彩作品も。また、油彩『彼岸への旅』(F50号)は8年がかりの作品。この世のものとは思えないもの静かな空間と透明感のある人物。内なるものの浄化ーーあの世とこの世がつうじるという、日本独自のお彼岸に、現在の自己を、見つめてみてください。『希望や救い』にも焦点をあて、立ち直りのヒントをも得られる、稀有な『平和への祈り』展です。どうぞご高覧くださいませ。(もちろん特定の宗教等とは関係がありません。画廊主。)

 

 

(文責 旧ギャラリー銀座運営者 岩井)

 

 

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