桜花賞を勝ったブエナビスタ 。筆者は半兄のアドマイヤオーラ(父アグネスタキオン)をPOGで持っていたくらいなので、ビワハイジはわりと好きなのだが、この馬は真っ先に指名対象から外した。その理由はNijinsky4×3のクロスを持っていたからである。


 Nijinskyは英3冠を制し、種牡馬としても大成功した名馬だが、その血のクロス馬からは、なかなか大物が出ていなかったのだ。まだ比較的新しい血のため、クロスが濃すぎるという問題もあるだろうが、Nijinskyクロス馬の代表的存在といえば、ダートで活躍したオースミジェット(父ジェイドロバリー)くらいで、パワー型のイメージが強かった。


 同じサンデーサイレンス産駒のダンスインザダークも、Nijinskyクロスでは結果が出ず、20頭ほどいる重賞勝ち馬の中でNijinskyクロスを持っている平地重賞勝ち馬はダンスインザモア (スプリングS-GII)のみ。スペシャルウィークに至っては重賞勝ち馬ゼロで、1000万下勝ちのシルクドラグーンマコトスペリオル あたりが上限だった。


 しかも、シルクドラグーンはPhone Trick、マコトスペリオルはMr.Prospectorと、いずれも強力なスピード血脈を持っており、欧州血統で固められたビワハイジは、スペシャルウィークには合わないというのが、これまでの傾向から導き出された結論だったのだ。


 そんなブエナビスタが、今や“女ディープインパクト”と呼ばれるほどの名牝的存在になったのは、やはり母ビワハイジの繁殖牝馬としての資質の高さだろう。Caerleonとマルゼンスキーという、日欧を代表するNijinsky種牡馬というのも良かったのだろう。


 血統のジンクスはいつか破られる。筆者も、“Nijinskyクロス馬は一生走らない”とまで思っていたわけではないし、これに限らず様々な血統の常識の多くは時代の移り変わりによって崩されていくもの。いつ、その固定観念に固執せず一歩踏み出せるかが、競馬センスみたいなものなのだろう。こういう意識がないと、いつまでも昔の概念から離れられず、取り残されていってしまう。これからも柔軟に、切替作業は行っていきたい。