10日のシルクロードS(GIII・芝1200m)を勝ったのはファイングレイン 。出遅れ気味のスタートながら、直線では大外に持ち出し、稍重馬場で上がり34.0秒の脚を見せ鮮やかな差し切り。前半3F33.7、4F44.9、5F56.8秒と、アストンマーチャンの作ったハイペースに嵌った印象はあるが、強い競馬と言えるだろう。動画


 ファイングレインの父はフジキセキ。この勝利は、馬自身の初重賞制覇であると同時に、『Milan Millクロスを持つフジキセキ産駒の重賞初制覇』でもあった。


 フジキセキの4代母が、名馬Mill Reefの母という血統から、フジキセキが種牡馬入りした当初から、このクロスに着目していた生産者、血統評論家、血統オタクは多かっただろうが、98年の産駒初出走から、実に10年でようやくの重賞勝ち馬誕生となった。筆者もPOGでこのクロスをよく狙っていた(タイキミッション とか)ものの当たりは獲れず。結局、POGに限らず走る馬を見つけるには、珍しい牝馬クロスを狙わずに、オーソドックスな“ベストトゥベスト”の配合が最も手堅いというのを実感したものだ。とはいえ、たまに牝馬クロスから大物は出るので、やめられないところだが。


 ファイングレインは牝系も優秀で、伯母に愛オークス(愛G1)、ヨークシャーオークス(英G1)勝ち馬ピュアグレイン Pure Grainがいる。母系のPolish Precedent×Mill Reef×High Lineという累代配合もなかなかだ。Polish Precedentは母の父としてコリアーヒル(香港ヴァーズなどG1・3勝、父ドクターデヴィアス)を出している程度だが、Danzig×Buckpasserという配合で、Zilzalなど多くの名馬が出ている名牝系出身。母の父としては魅力的な血脈で、今後も大物輩出の可能性は十分。産駒にピルサドスキーやRaktiがいるように、距離の融通性も幅広いだろう。種牡馬にしても良い血統馬だ


 ファイングレインの連対距離は1200m~1600m。血統的には2400mくらいまでこなせそうな馬なのだが、瞬発力を活かすにはこのくらいのほうが良いのだろう。同世代のフジキセキ産駒はコイウタ、ドリームパスポートと、いずれもGI連対馬という粒ぞろい。今年の競馬次第では、すでにGI馬となっているコイウタを含め、この3頭が全てGIホースになることも十分ありそうだ。まずはこの馬が次走に出てくるであろう、高松宮記念に注目。混戦の芝スプリント戦線なら勝機は十分だ。オーシャンSに出走を予定しているキンシャサノキセキも加え、フジキセキ産駒の争いになればさらに面白い。