初年度産駒からドリームシグナル、エイムアットビップらの活躍馬を送り出しているアグネスデジタル。マイルから2000mまで、芝ダート問わず見せた瞬発力とスピードは、確実に産駒に伝えているようだ。今後のPOG戦線でも常に要注意の種牡馬になっていくだろう。


 2歳馬の配合を見ていると、DanzigやMr.Prospectorのクロスが非常に目立つが、このクロスもそう珍しいものではなくなった。わざわざ取り上げる必要もないだろう。


 さらに目についたのが、千代田牧場の生産馬が実に9頭もいること。同牧場産のエイムアットビップが生まれた年の種付けということから、初年度産駒(同牧場産は8頭)でかなりの手応えを感じたのだろう。この結果必然的に、千代田牧場の代表的牝系・ワールドハヤブサ系の馬が多くなった。


 その中でも魅力の配合が、キャトルセゾンの2006 。母の父がドリームシグナルと同じサンデーサイレンスで、祖母の父Nashwan、3代母がエリザベス女王杯勝ち馬タレンティドガールという、この牝系の王道をいく馬だ。エミネントガールの子孫からはなかなか大物が出ないが、Runaway Bride4×5のクロスもあり、大物感溢れる配合といえる。ただ、千代田牧場の共有クラブ馬はあまり走らないのが気になるところ。厩舎は良いのだが…。シルク、1200万円、美浦・斎藤誠厩舎。


 タレンティドガールの系統では、母の父タイキシャトル、祖母がタレンティドガールというナチュラルグレイスの2006 も気になる存在。1歳下の弟もアグネスデジタル産駒で、セレクトセールで堀越毅一氏に1900万円で落札されている。ウィンヒストリーの2006 も祖母がアグネスデジタル。この母は05年から07年まで3年連続でアグネスデジタルが種付けされている。フォーチュンワードの半妹コパノオマモリの2006 も忘れずに。


 エイムアットビップは“華麗なる一族”の出身だが、今年もこの牝系の産駒は多い。まずはエイムアットビップの全弟になるドリームクロスの2006 (シルク、1500万円、栗東・吉田直弘)に、その叔父であるカムイイットーの2006 。そして、この牝系の本流とも言えるイットー~ハギノトップレディ~ダイイチルビーから続くダイイチビビットの2006 (セゾンサラブレッドクラブ、2400万円、美浦・高橋裕厩舎)が最大の注目馬だ。ダイイチビビットの繁殖成績はイマイチだが、これまでの産駒の父はジェイドロバリー、タバスコキャット、メジロマックイーンとやや恵まれていなかった印象もあり、見限るのは早い。エイムアットビップやサダムイダテンでブームの兆しを見せているこの牝系、エイムアットビップと同じ母の父トニービン、祖母の父トウショウボーイと、スピードと底力溢れる一流の血脈が並んでおり、かなり期待できそうだ。


 ドリームシグナルと同じく、母の父にサンデーサイレンスを持つ馬では、「母の父SS 」の項でも触れたタンザナイトの2006 (サンデーレーシング、1400万円、栗東・音無秀孝)。ほかにもマイネルシーガルの半妹エイシンアイノウタの2006 、メイショウホムラの甥グリーンオリーヴの2006 、ドリームシグナルの従弟で、血統表はほぼ同じのダイイチサザンの2006 (セゾンサラブレッドクラブ、1400万円、栗東・宮徹厩舎)など良血馬が多く揃っている。


 ちょっと面白い配合なのが、マイネポリーヌの2006 (ラフィアン、1600万円、美浦・高橋裕厩舎)。母の父がスペシャルウィークで、母はマルゼンスキー3×2という強烈な配合。こういう馬は競走馬としては難しいが、繁殖として成功するパターンが多いので注意したい。


 トニービン肌でいかにも走りそうなのがホクトスプライトの2006 。祖母ホクトビーナスは桜花賞(GI)2着馬で、従姉にビーナスラインがいる血統。母のトニービン×マルゼンスキーという配合は申し分ない。


 個人的にマイネルインゼルで失敗(?)したRunaway Brideクロス馬だが、アグネスデジタル産駒を考える時には切っても切れない存在で、今年も1頭は挙げたい。ホシノキンカの2006 はラムタラの母の父Blushing GroomからRunaway Brideの血を供給しており、4×5のクロス。祖母の父はMr.Prospector系と相性の良いStorm Catで、Secretariat5×5のクロスもある。ラムタラにはないスピードをStorm Catで補い、ビリーヴなどが出た名牝系の出身でもあり、気になる馬だ。これも千代田牧場産馬。


 あとは簡単に。フサイチパンドラの従妹リアフォーモサの2006 、スーパーホーネットの半妹ユウサンポリッシュの2006 、ヤマカツスズラン、ピカレスクコートの半弟フジノタカコマチの2006 、エリモシックの甥リスティアアスリーの2006 、母がクイーンC(GIII)勝ち馬のサクセスストレインの2006 、母がマーメイドS(GIII)勝ち馬というタイキポーラの2006 (キャロットクラブ、2000万円、栗東・松元茂樹厩舎)、マイネルデュプレの半妹マイネカトリーヌの2006 、母がカブトヤマ記念(GIII)勝ち馬というタフネススターの2006 、トーホウエンペラーの半弟レインボーブルーの2006 (セレクトセール、津村靖志氏、1200万円)。