「萬有科學大系」を図書館から受け取りました.昭和2年発行です.予想はしていたものの,古さに驚いてしまいましたが,それでも,中身は写真が豊富で若者たちのために科学を振興しようという熱意が感じられます.第1巻~第6巻と索引からなります.(ただし,私は第3巻を受け取っていません)


第1巻のなかの「天体と宇宙」は, 山本一清 (京都帝国大学教授)執筆.
当時,世界で最も大きな望遠鏡は,ウィルソン山の100吋(=インチ)望遠鏡でした.

下の写真は,この望遠鏡が撮影した月面です:

ウィルソン山は,ロサンゼルスの北,パサデナ郊外の山系にあります.
望遠鏡が,パサデナから山中を運ばれていく写真もありました.
カーネギー協会と,資産家で慈善家のジョン・D・フッカーが必要な資金の大半を援助したそうです.1917年11月1日に100インチ (2.5m) 望遠鏡は完成しました.
ハッブルは,1919年にウィルソン山天文台職員となり,まさにこの望遠鏡で多くの観測を行い,われわれの銀河系の外の銀河を発見したり,膨張宇宙説も得たのです.
この時代の生き生きとした発見の様子がうかがえます.
ほかの巻で,私が興味深く思ったのは,食品の栄養の分析,薬品,ホルモン,脳科学です.当時知られていたヴィタミンについての解説など.
ある栄養が足りないと,どのような症状になるかについては,古くは,長い航海のときに限られた食品しか摂らないためにかかる病気などにより経験的に知られるということがあったようです.
残念なことですが,戦争をしていた時代ですから,戦争が原因でわかったこともあるようです.
人の体内で作られるホルモンについても,当時はまだあまり知られていなかったようで,ざっと見ただけですが,「副腎」のところにほとんど記述がないことに驚きました.
また,「脳」のところ,詳しく見ていませんが,右脳・左脳という言い方がまだ書かれていないようでした.
それから,どの章も,それに関わる科学史から記述が始まっています.
科学・哲学史についての記述が詳しいです.
科学・工学のあらゆる分野について,多くの資料,豊富な写真とともに,生き生きと紹介されており,
昭和初期の旧制中学校,高等学校,師範学校などの生徒が,興味深く読んだことでしょう.
中間子論が発表される直前の頃,そして,アポロが月面に着陸するはるか昔のこと・・電子機器はほとんどない頃です.
高校生までのあいだに,このような事典にふれ,科学・工学には,いろいろな興味深い分野があることを知れるとよいと思いました.
パソコンの画面で検索するより,このようなたぐいの書物を,もっと多く,子ども達が見ることができたらいいのにと思います.