高橋健一郎さん(札幌大学ロシア語学科教授)のロシア音楽の講義と,それに添えられるピアノ演奏を聴いてきました.
日本アレンスキー協会第6回例会
「ロシア ピアノ音楽を開花させた作曲家たち(3)」
2013年3月24日(日) りんゆうホール
(札幌市東区北9条東1丁目)
高橋健一郎さんの講話と,ピアノ演奏(川染雅嗣さん,西谷麻里子さん,安田文子さん,鈴木飛鳥さん,坂田朋優さん)でした.
詳しいレジュメが配られるので,それを読みながら聴きます.
ヴァシーリー・カリンニコフ(1866--1900)
1884年にモスクワ音楽院の初等科に入学するが経済的理由(家が貧しかった)から数ヶ月で退学.その後モスクワ・フィルハーモニー協会の音楽学校に入学し92年まで在学したが,そこは先生の質がよくなかった.チャイコフスキーは彼を高く評価した.34歳で没.彼の作品は,ロシア民謡が根底にある.チャイコフスキーの影響を受けながらも五人組(バラキレフ,キュイー,ボロディン,ムソルグスキー,リムスキー=コルサコフ)の影響も無視できない.
♪鑑賞♪
交響曲第1番 より第1楽章(作曲家本人によるピアノ連弾版)
・・・・・演奏:安田さん鈴木さん
「悲しい歌」「メヌエット」「ノクターン」 ・・・・・演奏:川染さん
交響曲1番は,1917年,リムスキー=コルサコフにより初演され大成功だった.
日本でも戦前から取り上げられている.指揮者トスカニーニ,スヴェトラーノフも取り上げた.交響曲第2番も良い曲であるとのことです.
セルゲイ・リャプノフ(1859--1924)
ピアニストの母からピアノの手ほどきを受け,モスクワ音楽院で作曲をグーベルト,チャイコフスキー,タネーエフ,ピアノをクリントヴォルトらに学んだ.1885年ペテルブルグに移り,1893年にバラキレフやリャードフとモスクワ北部・東部地方で約300曲の民謡を収集.そのうち30曲を声楽とピアノ曲に編曲した.
リャプノフは,ピアノ音楽史上重要である.ピアニストとしても国際的に活躍した.バラキレフやリストの影響をうかがわせる技巧的なピアノ曲や数多くのすぐれた歌曲を作曲した.
リストの超絶技巧練習曲を意識した「12の超絶技巧練習曲」(リストが書かなかった12の調性で書かれている).
リャプノフ 超絶技巧練習曲より「レズギンカ」
http://www.youtube.com/watch?v=U20u9LEu-Nc
また,リストの単一楽章のソナタにならった「ピアノソナタ」Op27などの重要な作品がある.
数学者・物理学者のアレクサンドル・リャプノフは兄である.
♪鑑賞♪
リャプノフ: 6つのやさしい小品Op59より,「球遊び」「馬のおもちゃに乗って」「乳母の昔話」
(楽譜にその昔話が書いてあるが,残酷で不気味.)
・・・・・・演奏:西谷さん
リャプノフ: 3つの小品Op57より 第2曲「春の歌」
・・・・・演奏:西谷さん
リャプノフ: 「舟歌」Op.46 ・・・・・演奏:坂田さん
6つのやさしい小品Op59は子ども向けの曲.このように,ロシア民謡を使って,子どものピアノ教育に役立てていたとのこと.
私の感想です
「舟歌」Op.46は,非常に美しいきれいな曲です.
http://www.youtube.com/watch?v=0GC1gjNPIsY&feature=player_embedded
坂田朋優さんの演奏でした.日本的な儚さもあり,ショパンのノクターンのようにも感じた.メロディがあり,そして,高音からキラキラと星が降るように音が美しく舞い降りてきます.坂田さんは,ピアノから美しい音を引き出されていました.右手の音が和音でもくっきり聞こえ,左手の低音もぞくぞくするように魅力的でした.
フェリックス・ブルメンフェリド(1863--1931)
ウクライナ出身.たいへんなヴィルトゥオーゾで,かつ,色彩豊かで抒情性に溢れた演奏をし,容姿もよく,存命中,たいへん人気があったピアニストである.
ホロヴィッツの師としても知られる.
1911年までマリインスキー劇場で指揮活動し,ヴァーグナー「トリスタンとイゾルデ」のロシア初演を行った.わかりやすいきれいな旋律の曲を書いた.
ブルメンフェリドに関しては,岡山に,詳しい研究家がおられ,HPもあるらしい.その方の校訂で,日本でも楽譜(オレンジ色)が出ている.
♪鑑賞♪
ブルメンフェリド:24の前奏曲より 第15番(演奏:川染さん),第22番(演奏:西谷さん)
美しい旋律の,ロマンティックで品のよい小品です.
ゲオルギー・カトワール(1861-1926)
フランス系の両親のもとモスクワに生まれ,14歳でクリントヴォルトに師事,ヴァーグナーの音楽に惹かれ,1879年にはヴァーグナー協会に入会.当時のロシアの数少ないヴァーグナー信奉者の一人だった.
モスクワ大学で数学を学ぶ(理系多いな・・・)が,1884年に卒業後,父親の仕事を手伝いながら作曲にいそしむようになる.その後,クリントヴォルトのもとで勉強を続けるためにベルリンに行き,ペテルブルグでリャプノフにも学んだ. モスクワ音楽院のカトワールの生徒に,カバレフスキーがいた.
アムランが,カトワールの曲のCDを出している.
♪鑑賞♪
カトワール「3つの小品」Op2より「秘めた歌」「故郷を離れて」 (川染さん)
カトワール「5つの小品」Op10より 「前奏曲」「カプリチオーソ」(安田さん)
ミハイル・イッポリトフ=イヴァノフ(1859--1935)
1905--22年にモスクワ音楽院の院長.トビリシ音楽院でも教えた.
グルジア民謡やアルメニア民謡その他の民族音楽も積極的に作曲に用いた.
ピアノ作品は少ない.
♪鑑賞♪
イッポリトフ=イヴァノフ「5つの小品」Op7より第4曲,第5曲 (坂田さん)
イッポリトフ=イヴァノフ「コーカサスの風景」より (ピアノ連弾版)
組曲第1番Op10より第4楽章 「酋長の行進」
組曲第2番Op42より第3楽章 「レズギンカ」 (安田さん鈴木さん)
私の感想です
坂田さん演奏の「5つの小品」Op7より第4曲,第5曲が美しかったです.坂田さんの弾かれた曲は,比較的高音で始まる曲が多くて,美しい高音から始まるので,印象が良かったのかな...曲自体も美しいです.
最後に演奏された「レズギンカ」は,激しく踊り狂う曲(3連符の激しい繰り返し).
リャプノフの練習曲にもある,と紹介されました.(上記youtube)
ハチャトゥリアンのバレエ音楽「ガイーヌ」にもありますね.
http://www.youtube.com/watch?feature=player_embedded&v=lgLO1YtUejw
#!
(↑これは,西村智実指揮 Russian Bolshoi Symphony Orchestra)
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以下は,カリンニコフに関して,私が思い出したこと
ですが,
1924年1月18日,近衛秀麿がベルリンフィルハーモニーを振って,ベルリンで指揮者デビューしたとき,
カリンニコフの交響曲第1番ト短調を第2部に取り上げたらしい.
(大野芳著「日本のオーケストラをつくった男 近衛秀麿」p.120あたり)
ベルリンでもほとんど初演に近く,モスクワから総譜を取り寄せたエピソードが書かれていて,たいへん興味深いです.1924年といえば,世界初演の1917年から7年しか経っていないことになります.近衛秀麿は,どこでカリンニコフの交響曲第1番を知ったのでしょうか?
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次回の,日本アレンスキー協会第7回例会は,
9月14日です.
ロシアバレエが取り上げられます. 楽しみです.