FOR FIRST EXHIBITION ARTISTS

「この絵、いくらにすればいい?」
作品の値段をどう決めるか

初個展を前に、ほぼ全員が立ち止まる問いに向き合います。

初個展を準備しているとき、搬入方法や告知のことより先に頭を悩ませることがあります。

この作品、いくらにすればいいんだろう

制作にかけた時間、材料費、自分の思い入れ。でも「高すぎたら売れないかも」という不安もある。かといって安くしすぎると、なんだか自分を安売りしているような気持ちにもなる。

7ARTSでは、毎月複数の作家さんの個展をサポートしていますが、値段についての相談は本当によく来ます。「正解がわからない」「人に聞けない」という声をたくさん聞いてきました。

この記事では、そんな悩みに正面から向き合います。価格設定の考え方を、できるだけ具体的にお伝えします。

01. なぜ、作品の値段付けはこんなに難しいのか

服や本と違って、アート作品には「定価」がありません。同じ画材を使った同じサイズの絵でも、作家によって数千円から数百万円まで幅があります。

その理由は、アートの価値が「モノとしての機能」ではなく、「誰が作ったか」「何を表現しているか」「見る人にどう届くか」という要素で決まるからです。

つまり、値段を計算で出すことが原理的に難しい。それが、多くの作家さんが迷う根本的な理由です。

でも「正解がない」からといって、悩み続けるしかないわけではありません。まず「よくある失敗パターン」を知ることから始めましょう。

02. 初個展でよくある3つの値段付けの失敗

多くの作家さんが最初にやってしまうのが、次の3つです。

❶ 「とにかく安くしないと売れない」と思い込む

「初個展だから安くしないと」という発想。でも実際には、安すぎる価格はむしろ購入者の不信感を呼ぶことがあります。「なぜこんなに安いんだろう」と感じる人も多いのです。

❷ 材料費だけで計算する

「キャンバス代3,000円+絵の具代2,000円だから5,000円」という計算は、制作時間を完全に無視しています。アーティストの「時間」と「技術」は材料費より価値があります。

❸ 周囲に「高い」と言われて値下げする

友人や家族の感覚は、実際の購入者の感覚とは大きく異なります。「高い」と言った人が購入者とは限りません。値下げを求める声は、買わない人からの意見であることが多いです。

03. 価格設定の基本──3つの要素から考える

では、どうやって値段を決めればいいのか。基本的な考え方は「3つの要素の合計」です。

価格 = 材料費 + 制作時間 × 時給 + アーティストフィー

①材料費:キャンバス、絵の具、額縁など実際にかかった費用。これは最低限回収する。

②制作時間 × 時給:たとえば制作に20時間かかった絵なら、時給1,500円として30,000円。自分の労働に対して正当な対価を設定する。

③アーティストフィー:作家としての「ブランド価値」「世界観」「唯一性」に対する上乗せ。ここは自分の作風や活動実績に応じて設定する。

たとえば「材料費5,000円 + 制作20時間×時給2,000円 + アーティストフィー15,000円 = 60,000円」という計算ができます。最初は計算してみるだけでいい。まず「自分の作品の原価と価値」を見える化することが大切です。

MARKET DATA

国内ギャラリー調査(2023年)によると、
73% の初個展作家が「設定した価格が安すぎた」と振り返っている。
一方、「高すぎた」と回答したのは 12% のみ。

多くの作家は値段を低く設定しすぎる傾向がある。

04. 「作品の価値」と「値段」は別物という話

ここが最も大切なポイントです。

値段を下げても、作品の価値は変わりません。でも「見る人が感じる価値」は変わることがあります。

心理学では「価格は品質の代替情報になる」と言われています。人は値段から「この作品はどのくらいのレベルなのか」を無意識に判断します。5,000円の絵と50,000円の絵、同じ作品でも受け取り方が変わるのです。

特に初個展の場合、作家自身の実績や知名度がまだ少ない分、「値段」が作品への信頼感を伝える重要な手がかりになります。

「安くしたほうが買ってもらいやすい」は必ずしも正しくありません。適正な価格設定は、作家の自信の表れでもあり、作品をきちんと評価してくれる人に届けるためのメッセージでもあります。

05. 7ARTSで見てきた、リアルな価格帯の話

実際に7ARTSで個展を開かれた作家さんたちの価格帯を、参考までにお伝えします。

イラスト・ドローイング(A4〜A3サイズ): 5,000〜30,000円
油彩・アクリル絵画(F6〜F10号): 30,000〜150,000円
立体作品・インスタレーション: 20,000〜200,000円
写真プリント(額装込み): 15,000〜80,000円

これはあくまで参考ですが、「自分は安すぎるかも」と気づく方が多いです。

また、7ARTSでは個展の準備段階から価格設定についても一緒に考えます。「いくらにしたらいいかわからない」という状態のまま開催日を迎えないよう、サポートしています。

VOICE FROM ARTIST

「最初は全部1万円以下にしようと思っていました。でも7ARTSのスタッフさんに『この作品に20時間かかったなら、もっと価格に反映させていい』と言われて、思い切って3万5千円に設定したんです。そうしたら、会期中に3点売れて。あのとき背中を押してもらって本当に良かったです。」

— 油彩画家・Kさん(初個展・2025年秋)

まとめ──値段は、自分の作品への姿勢を伝える

値段を決めることは、作品への向き合い方を決めることでもあります。

  • 材料費+制作時間×時給+アーティストフィーで基準をつくる
  • 安くすれば売れるは思い込み。適正価格が信頼を生む
  • 値段は「誰に届けたいか」のメッセージになる
  • 迷ったら一人で抱え込まず、信頼できる人に相談する

7ARTSは、作品を送るだけで個展の全工程をサポートしています。価格設定に限らず、「初個展で何をどうすればいいかわからない」という段階から、一緒に考えます。

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7ARTS / 福岡市中央区薬院