伊豆下田に今は亡き祖母が住んでいて、
夏休みは、毎年遊びに行っていた。
同じ時期に年の近い従姉妹も遊びに来るので、毎年楽しみだった。

ある日、私は妹を連れて、プールに行き、その帰り道に、
田んぼに落ちた。

道路から、かなりの段差があり、脚を滑らせ、落下したのだ。
4~5メートルはあった、と思っていた。
当時小学校低学年の妹が、たった一人で結構な距離を歩いて、タバコ屋の公衆電話で助けを呼び、叔父が車で来てくれた。
全身泥まみれの私は、車のシートに座ることを許されず、
後部座席の床に四つんばいで、揺られて帰った。

今年、今度は自分の家族(旦那と子供)を連れて伊豆に遊びに行った妹が、
「姉ちゃんが落ちたあの、田んぼを通りがかった。」と言ったのだ。
妹は、自分が助けを呼びに一人で歩いた道をよく覚えていたそうだ。
まだ、田んぼだったそうだ。
ただし、手すりがついていたとか。
 …落ちたのは私だけじゃなかったに違いない。
4~5メートルはあったと思っていた段差は実は1.5メートルくらいのものだったらしい。

あれから、二十数年経って
小さな妹は、二児の母になり、
一緒に伊豆の海で遊んでいた従姉妹は、結婚離婚を繰り返し、
いつも花火を山のように買ってくれて、あの時車で迎えに来てくれた、叔父さんは、
塀の中の人となった。

時間は流れ、人は変わる。
子供の頃思っていたような、未来は訪れていないが、
そういうものかもしれない。

今年もあの田んぼでは、変わらず稲穂が頭を垂れる。