『~最高のラストパス、 その1冊が人生を変える~』
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ギャラクシーブックスの栢木ですサッカー

ブログを見ていただきありがとうございます照れ

このブログではギャラクシーブックスの取り組みや

私個人の取り組みをちょこちょこアップしていきたいと思いますチョキ

少しでも多くの方にギャラクシーブックスを

知っていただければと思いますので宜しくお願いします!!

 

galaxy株式会社 

代表取締役社長加戸昌哉の書籍『音色』を紹介!!

 

『音色』にはギャラクシーブックスが

これまで歩んできた全てが書かれております照れ

 

良いとき、悪いとき、きつかったこと、楽しかったこと

包み隠さず全てを書いてますので

ギャラクシーブックスを知りたい方は是非見てください目目

 

毎週月曜日、水曜日、金曜日に

アップさせて頂きますので、宜しくお願いします!!

 

 

-音色- 目次
  0.「まえがき」  

第1章 始まりの音    第2章 揺れ動く音    第3章 崩れる音 
1.「原点」          5.「巣立」          9.「MBO」
 2.「拡大」           6.「始動」          10.「崩壊」
 3.「売却」          7.「難局」          11.「絶望」
 4.「M&A」          8.「宣告」          12.「希望」

第4章 願いの音     第5章 軌跡の音 
13.「再起」          17.「応援」
14.「不覚」          18.「創案」
15.「前進」          19.「結実」
16.「夢中」          20.「出発」

 

第3章 崩れる音 

「希望」

―2018年11月―

 危機を招いてしまったことは誰のせいでもなくすべて自分の責任であり、その責任を果たすためには今からなんとしてでもこの会社を再生しないといけない。

 焦る気持ちの片隅に、この会社をここまで追い込んでしまったことに対して直接謝りたい女性社員がいた。もちろんすでに退職届は提出している。

 数年前、自分で採用を決めた最後の2名なだけに直接会って謝りたい、そう思って喫茶店に呼び出すことにした。制作部としてアルバイト入社、2018年に社員になったばかりでこんな状況を迎えさせてしまった。

 

 喫茶店で顔を合わせたとき、笑顔は一切なかった。辛気臭い空気の中、30分ほど淡々と話す。

 なにを反省してもすべては過去の出来事になり覆すことはできない。できないからこの事態を招いてしまっている。少なくともこの2名には次の就職がうまく進み、この事態の被害は最小限であってほしいと思っていた。

 コーヒーを飲み終えオフィスに戻ろうとしたとき、彼女たちはタバコに火をつけた。一緒になってタバコに火をつけると、よく休憩時間に屋上で愚痴を言い合っていた当時のことが頭に浮かんだ。

 今となればいい思い出であり、もう顔は見れない。そう思った瞬間、彼女たちから予想していなかった言葉をもらうことになる。

 「業務委託でなら、この再生に協力します」

 「書籍をつくる制作の仕事は好きです。だからこのまま仕事ができるなら制作業務を続けたい」

 聞き間違いかと思うくらいの言葉に驚きを隠せなかった。細かい条件はあったがそれをクリアにする方法を考え、彼女たちには業務委託として続けてもらうことが決まった。

 これで制作部がなくなることはない。小規模ではあるが組織としての成立が少し見えてきた。

 まだまだ大きな壁が出てくることは必然、それでもリスタートを切れる社員がそろえば前に進める。
 

 大阪ではほとんどの社員が退職と決まった。退職すると決まっている社員はかなり荒れている。非難の声は大きく響いていた。

 11月末までに退職者の引き継ぎをしないといけないが、そう簡単にはいかない。予想を遥かに超える荒れたオフィス、こうなるのは当たり前だったのかもしれない。

 残る社員には本当につらい思いをさせてしまった。

 「なんでこんな潰れる会社に残るの? 残ってどうするの?」

 そんな言葉が大阪オフィスでは飛び交っていた。

 11月はいかに耐え、そして12月へどうつなげるかを考えるしかない。再生していく社員はそろっている、あとは資金繰りだけをクリアにしないといけない。この1カ月、持ちこたえられるかは紙一重だ。

 

 資金集めは毎日続くがそう甘くはない。協力してくれる社員がそろったとしても資金繰りでアウトになってしまう。そうなればそこで終了、向ける顔なんてない。彼らの決意を裏切ることになってしまう。

 それだけは絶対にできないと心ではわかっていても頭には最悪の事態の想像が周期的に訪れる。心と頭と体、コントロールできない日が続いてしまっていた。

 こんな自分に出会うのは初めてで、妙な汗が止まらない。手足の震えは止まらない、悪い夢しか見なくなり、ついには寝ることにすら恐怖を感じていた。睡眠、食事を避け、笑うことはなくなり覇気のない顔で過ごす。そんな日常となっていた。

 このまま終わってしまったらどうなってしまうのか。早く答えを知りたい。わからないことの恐怖が膨れ上がっていく。

 どんなかたちでも12月に足を踏み入れないといけないが資金はまだ足りない。ここだけが描けない。

 

 人は路頭に迷うと誰もいない静かな場所に行くと聞いたことがある。まさに自分も同じ行動をとっていた。なんの意識もなく、誰もいない公園で佇む瞬間を迎えてしまった。

 なにが正解で、なにが不正解で、この会社はどうなってしまうのか。わかるはずもなく混乱状態に陥る。まともな精神状態ではなかったのか、頭の中は真っ暗な先しか映らない。

 今までこの浮き沈みによって諦めそうになったこともあったが、そのたびに残る社員の顔を思い浮かべ、また前を向くことができていた。わかっていてもこの波は襲いかかってくる。


 早く楽になりたい。
 

 これは敗北宣言を意味するものに近かった。そう思った瞬間、その場に座り込み空を見上げた。

 結局最後は資金を集めることができずに全員を裏切ってしまうかもしれない。その確率のほうが圧倒的に高い割合を占めていた。

 

 夕日が綺麗な日だった。先のことを考えているとあっという間に夕日は沈み月へと変わる。今日も1日が終わってしまう。

 しかし、この日は立ち上がろうとは思わなかった。このままここで一晩を過ごすほうが誰とも会わなくて済むかもしれない。

 そんなことを考えているとき、1通のメールが届いた。

 conettoでメールを通知していた。このアカウントでメールを通知したのは初めてだった。数カ月前に勢いよくオープンして、この事態になってからは休止状態に追い込まれていた。

 著者と読者をつなげる夢。生みの親としてものすごく愛着があった。

 つながる、つなげる。将来はこんなメディアを持つ出版社になりたかった。そんな夢もここで終わるかもしれない。

 震える手でメールを開けてみた。結婚式でのメイクの仕事をしている著者への問い合わせメールだった。

 「近々結婚式を予定しています。ぜひ当日のメイクをお願いしたいです」

 これが初めてconettoを通じて著者と読者をつなげられた瞬間だった。書籍をリリースして、その著者を世に出すことができ、読者とつなげることができる。

 今はごく少数でもいい、galaxyがあるからつながれる人たちがいる。喜んでくれる人たちも必ずいてくれる、そう思えた瞬間だった。

 今は目の前の壁にぶち当たっているが、これを乗り越えたらまたこうやって誰かのためになれることができる。

 リストラ宣言をして以来、考えることができなかった発想が舞い込んできた。張り詰めた気持ちが一気に解き放たれ、涙があふれた。

 諦めたらそこですべてが終わってしまう。この会社は大丈夫だと胸を張って残る社員に言ってあげないといけない。それが一番にやるべき使命だった。

 資金は絶対になんとかする、躊躇していてはいい未来は絶対に訪れない。まさかこのタイミングでconettoに背中を押されるなんて思ってもいなかった。

 この日は誰もいない公園で我慢することなく涙を流した。そしてようやく負のスパイラルをすべて断ち切ることができた。

 

―2018年12月初日―
 

 昨日までは大勢の社員がいたこの会社は、最後の最後まで荒れていたことを象徴できるくらいのオフィスになっていた。退職者の机やパソコンはそのまま置いていたこともあり、閑散とした空気が漂っていた。

 残った社員でここからどう立て直すのか、なにから手をつければいいのか。11月をしのいだ社員には心の疲労も大きくあることは感じていた。

 できる限り話す時間をつくるため全員会議も密に開催し、それぞれの役割を明確にしていく。現時点でどれくらいの資金が足りていないかもすべて打ち明け、全員が会社の数字を知れる環境をつくるようにした。

 このチームで復活を遂げる気持ちは日に日に強くなっていた。

 
 一方で融資を検討してくれる先はかなり絞られていた。その中でも本命に置いていた機関に断られてしまい、次の策を考えないといけない状況が続いた。可能性はどんどんなくなっていく。


 雨の中ようやく辿り着いたとある機関。ここがダメなら後がない、藁にもすがる思いで足を運んだ。

 濡れた体は気にならない。とにかく話だけでも聞いてほしい、会社のことは言わずに個人で融資を受けたい。個人でできる限り最大枠で貸してほしい。そう言って面談が始まった。

 この日は面談のみで終わり、最終的には法人の代表ということも伝え、昨年分の決算書も提示することになった。若干言えないこともあったが、そうするしかなかった。
 

 数日が経ち、担当者から結果が出たと電話が入る。今から来てほしい、結果はそのときにお伝えしますと。

 今回の結果報告は妙にもったいぶられるものだった。会った瞬間の緊張感は今までとは違う。もう後がない証拠だ。焦る気持ちを抑え、まずは審査してくれたことのお礼を伝えた。そして早々に別室に招かれた。

 「融資、させていただきます」

 ありがたい言葉、どう感謝していいかわからない。一気に力が抜けていく。今を生きられるだけの融資が約束された。少しでも安心を共有したい。すぐにオフィスへ戻りこのことを報告した。

 数日後、約束どおり融資は実行された。まだ可能性はある、1歩ずつではあるが着実に進んでいる。ここからどう進めていくかは全員で決めていけばいい。
 

 この箱はまだ、なくなってはいない。

 

第3章 崩れる音 ー完ー