『~最高のラストパス、 その1冊が人生を変える~』
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助け合い(愛)で未来をつくる 社会貢献を通じて人をつくる
ギャラクシーブックスの栢木です
ブログを見ていただきありがとうございます
このブログではギャラクシーブックスの取り組みや
私個人の取り組みをちょこちょこアップしていきたいと思います
少しでも多くの方にギャラクシーブックスを
知っていただければと思いますので宜しくお願いします
galaxy株式会社
代表取締役社長加戸昌哉の書籍『音色』を紹介
『音色』にはギャラクシーブックスが
これまで歩んできた全てが書かれております
良いとき、悪いとき、きつかったこと、楽しかったこと
包み隠さず全てを書いてますので
ギャラクシーブックスを知りたい方は是非見てください
毎週月曜日、水曜日、金曜日に
アップさせて頂きますので、宜しくお願いします
-音色- 目次
0.「まえがき」
第1章 始まりの音 第2章 揺れ動く音 第3章 崩れる音
1.「原点」 5.「巣立」 9.「MBO」
2.「拡大」 6.「始動」 10.「崩壊」
3.「売却」 7.「難局」 11.「絶望」
4.「M&A」 8.「宣告」 12.「希望」
第4章 願いの音 第5章 軌跡の音
13.「再起」 17.「応援」
14.「不覚」 18.「創案」
15.「前進」 19.「結実」
16.「夢中」 20.「出発」
第3章 崩れる音
「絶望」
―2018年10月―
誰が味方で誰が敵なのか、そんなよくない考えが頭に浮かぶことが多くなっていた。
このまま資金は底をつき、倒産してしまうのではないのか。そうなればこの会社に携わる人たちはどうなってしまうのか。今までの時間はなんだったのだろうか。自分はどうなってしまうのだろうか。
M&AもMBOも不安な気持ちはあったが、今回はそれを遥かに超えていた。絶対にこの会社を再生させるという気持ちと、すべてを拒絶したい気持ちが入り乱れていく。そのたびに管理部長が肩を叩いて励ましてくれていた。
上層部にはすでに退職を決めてもらい、他の社員には希望退職者を募る。アルバイトは希望を聞くことはできず退職と告げないといけない。どんな罵声が飛び交うのだろうか。
―2018年10月最終日―
いつものように朝を迎えた。人員整理の発表まであと1日、心の乱れはピークに達した。オフィスへ向かう途中、足が動かない。出勤することに恐怖すら感じてしまっている。
なにも考えることができず、公園のベンチに座り数時間を過ごした。不安に潰されてしまい立っていることさえ無理だった。
もうみんなの顔はまともに見ることができない。最悪の結末ばかりが頭の中をよぎっていた。
まじめに働いてくれている社員もいなくなる、お金もすべて失ってしまう。どんなに続けたくても続けられない。目の前の壁が大きすぎて、見えない先にギブアップをしてしまった瞬間だったかもしれない。
今まで人に弱音を吐くことは一切してこなかった。でも、もう無理かもしれない。誰か助けてほしい、誰か知恵を貸してほしい。初めてそう思う自分がいた。
本当はこんなにも落ちぶれた姿なんて誰にも見せたくなかったが、死ぬことを考えるとそんなことはもうどうでもいい。誰かに話を聞いてもらえるだけで救われる、それだけでいいと思っていた。
―2018年11月初日―
ついにこの日を迎えてしまった。午前は大阪、午後は東京で人員整理の発表をする予定を組んでいた。
話す内容は前日に決まっていたが、うまく話せるわけがない。無能な自分がつくった未来のない会社に誰もついてくることはない。
いつもどおり会議室に集合し、全員がそろったところで本件の経緯と結論をだけを告げた。
「資金繰りが悪化し、このまま続けることができない」
空気はかなり重たかった、そんな記憶しかない宣告となった。
30分ほどで話は終わり、そこから退職者を募りだす。ざわつきに耳を傾ける間もなくすぐに東京へ移動する。東京でも同じく重たい空気の中、このことだけを告げた。
この1日、震えが止まらなかった。申し訳ない気持ちと、この先に待つ恐怖が交差している。この会社に未来はない。退職者を募るなんて心苦しい以外のなにものでもない。全員が一斉に辞めていく。
もし、こんな会社に残ってくれる社員がいるとすれば、ほんの少しだけ希望が見える。再生計画の定員は10名ほどで、30名には確実に退職してもらう。
退職者の引継ぎ業務はすべて自分がやると決めていたが、必然的に残った社員への負担も大きくなってしまう。残るのも相当な覚悟が必要だったはずだ。
退職届を提出できるのは2週間。誰が提出するのかは予想のつかない意思表示期間のスタートが切られた。
このころ、管理部には一番迷惑をかけてしまっていた。再生計画がうまく進むよういろいろと協力してくれ支えてくれていたが、不安を抱えていたことは知っていた。
こんなことに巻き込んでしまったことを悔いてしまう。そんな管理部にも決して言ってはいけない言葉があった。
「この会社に残ってほしい」
これは絶対に言えない。全員フェアに。管理部にも選ぶ権利は同じようにある。もちろん他にも残ってほしい社員はいたが、自分のエゴは絶対に言えなかった。
この発表をした日から続々と退職届が手元に届きだす。30名には退職してもらわないと再生できない、わかっていても提出される退職届を見るたびに滅入ってしまう。
後ろめたい気持ちも大きくなり、この期間は特に人を避けていた。資金は消えていく、人も消えていく。本当にこの会社は再生できるのか。自信も根拠もないまま時間は過ぎていった。
これだけインパクトのあることをすると、必然として11月の売上はほとんど上がらない。足りない分は自分で集めるしかない。
しかし、生き延びるための資金はそう簡単に手に入る額ではない。本当に無力だ。その言葉に尽きてしまう。片っ端からこのことを話せる人に連絡し会いに行くことしかできなかった。
再生計画は生半可な気持ちでは絶対に成功することはない。1分1秒、無駄にすることはできない状況に追い込まれ、頭の中はとにかく資金のことだけになっていた。
退職届が提出されている報告が管理部から定期的に入ってきていたが、現実は受け止められない。あの日から数日が経ち、一定の希望退職者が決まっていく時期でもあったが、反対に残ることを表明してくれる社員がいることを知る時期でもあった。
ひとりじゃない。
大きな不安が消えることはないが、1歩ずつ見えないゴールに近づいていくしかない。
管理部に退職者の手続きはすべて任せることにして、残る社員のケア、そして資金を求めて走る。可能性はまだ、0ではない。
一方で再生するためにはもうひとつクリアにしないといけない絶対条件があった。出版事業を継続するうえで欠かせない制作部の存続である。
この人員整理の発表により、制作部全員からの退職届を受け取ることになってしまった。こうなることは予想できていたが、現実に起こってしまうと出版はできなくなってしまう。このリソースは絶対に必要とされ、退職届を提出した誰かに協力してもらわないといけない。
しかし制作部はある意味で団結力があり、退職届を一度提出した社員が今更になって残ると意向を変えてくれるわけがない。あんな発表をした後に絶対にありえないことだとはわかっていた。
この状況、なんとかしないといけない。