★★★★ 2025年/日本 監督/飯塚花笑

 

とにかく省略の仕方がすばらしい。テーマ的には伝えたいことがいっぱいあり、作り手としてはあれもこれも描きたいという欲求があるはずだ。しかし、そこはグッとこらえてシンプルにコンパクトに仕上げているのがとてもいい。例えば、中盤に起きるある出来事。居酒屋でいざこざが起きて、次のカットは足だけを示す。その間のグダグダしたケンカなどは描かない。

 

また、LGBTQ関連の作品の場合、どうしても当事者が悲劇の主人公で演出もその悲劇をさらに煽るようなじっとりとした演出になりがちだが、本作はそうはしないというキッパリとした姿勢を感じる。(Netflix制作の「This is I」の場合、それを「陽」の方向に振り切ったわけだが)観客を感情的にさせるように描く方が絶対にたやすい。でもそれはやめて、彼らも一個の人間として誰もが持ちうる幸せを追求したいのだというテーマを際出たせている。

 

終盤、弁護士が裁判で指し示すのは日本国憲法第13条の「幸福の追求」。「虎に翼」でも感じたが、我々の平穏な生活はいかに憲法によって守られているかが理解できる。検事が戦争経験者であり、LGBTQの人たちの生き方を真っ向から否定しているのも当時の時代を空気感をうまく映し出している。60〜70年代の日本もよく描けていて、とてもいい作品だった。