★★★★ 2025年/アメリカ 監督/ジョシュ・サフディ

 

自分で決めた目標(それが本当に目標としてふさわしいのかさておき)に向かって、ブルドーザーのように全てを薙ぎ倒し、突っ走る男マーティ。その熱量があれば、靴屋の店長から全国展開して事業をでかくするのも可能では?と思ったりもするが、この男は目の前のリベンジにしか興味のないバカである。そういう男を「偉大な俳優になりたい」と語ったティモシー・シャラメが演じるという妙。そして、結局オスカーが獲れなかったというオチまでが本作を楽しむ醍醐味の一つになるという笑えない結末。あんなにずっとフロントランナーだったのにね。ティモシーは現実世界でもマーティになってしまった。That’s life. まあ、同業者の馴れ合いと時代の空気だけで決まっちゃうオスカーなんかいらないって。

 

一体、いつから主人公に共感できることが映画を楽しめるかどうかのポイントになってしまったのだろう。「主人公に共感できない」。だから?So what!? 眉を顰めるような言動、道徳的に逸脱した行動、本作はそれらのみで構成されていると言っても過言ではない。行儀のいい映画ばかりじゃ、映画はつまらなくなる一方だ。あんな男でも純粋さを持っているんだよ、それがわかるラストシーン。ああ、人間ってやつは。

 

最終盤の日本の描写がすばらしい。戦後まもない時代の空気感がしっかり再現されているし、何せ驚いたのは会場に集まるエキストラたちの自然な演技だ。エキストラの不自然さはどんなに完璧な映画でもしらけてしまう。綿密な事前準備が行われていることが実によくわかる。無茶苦茶な男が主人公でもこういうところは驚くほど丁寧な作品なのだ。