
†地獄の戦場描写
敵の進攻を食い止めつつ、最後に撤退する後衛部隊は、さまざまな悲惨な現場を退却するなかで目撃してゆきます。
同胞の屍肉を売りさばく不良兵。
落伍した兵に自決を強要し殺してしまう鬼下士官。
撤退した野戦病院跡のおびただしい数の病兵、負傷兵の腐臭よどめく散乱死体…。
†貴重な戦記
苛酷な第一戦で闘ってきた兵士ほど生還者が少ないわけで、戦闘場面を克明に記された従軍記、戦記は数少なく貴重なものです。
リアルな描写は、経験していない作家には到底書けないもので、これが「本物」の実話であり、極限を生き抜いた「証(あかし)」であり、魂の「叫び」であるからこそ、読み始めると同時に、死と隣り合わせの動乱の時代世界へ引き込まれてしまうのです。
†ビルマの人々
彼ら兵隊が戦いと転進に明け暮れるなかで、読む者をもホッとさせてくれるのが、親切で純朴なビルマ住民たちとの触れ合いでしょうか。
日本軍がやって来るまでは、タイを除いたインド、東南アジア地域は白人諸国の植民地支配下にありましたから、解放独立をかかげる同じ肌色の日本軍に対して、仏教国ビルマの人々はおおむね、おおらかで好意的でありました。
ある日、井坂上等兵が属する中隊16名は敵戦闘機の爆音に追われ、森に囲まれた寺院の庭に逃げ込みます。
すると中から僧侶が現れ、彼ら兵士らの様子を察し、村人たちに指示してビルマ料理を用意させ、そればかりか、菓子やタバコなども分け与え、兵士らを、おおいにもてなしてくれたのでした。
《仏の慈悲に似て…
なんと純真な人たちだろう……
困った者を救いたすけることは、やがて自分たちにその徳が降りてきて、仏の慈しみを得られるのだと、信じて疑わない人々だった。》
《》内本文抜粋
そのほか日本兵に憧れて止まないビルマ人少年、青年との深い交流もあり、泣きそうになるくらい感動させられます。
ぜひ、お読みください。


