弦楽器工房Watanabe・店主のブログ

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弦楽器工房での日々の仕事の話について気儘に書いています。

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弦楽器工房Watanabe HP

ヴァイオリン・ヴィオラ・チェロ・コントラバスの修理・調整・販売


仙台市青葉区本町2-6-30吉田本町ビル1F


tel:022-797-0745


当店は例年どおりゴールデンウィーク期間も通常営業しております。どうぞよろしくお願い致します。

今週は、珍しくレッスン室でお客様のチェロを選定していただく機会がありました。

楽器選びについては、基本的に今までと同様に店舗だけで間に合わせていますが、やや高額のものを試奏する時などに、レッスン室を使ってじっくりと吟味していただく事があります。天井が店より30センチ高く響きに余裕が出てくるため、こちらで弾く方が楽器の違いがよく分かるという方もおられます。さらに3つのレッスン室はそれぞれに響きの趣きが異なり、計4部屋のどの音を基準に置いたらいいのか、正直なところ私自身も明確な答えが出せない状況にあります。
理屈の上ではその人の居住する空間ごとに違う音が出来上がるはずで、壁やカーペットの質、家具の配置などすべてが微妙に音響を変質させる要因になるでしょう。しかしそれを言い出すと際限の無い話になるので、少なくともお客様の楽器選定に際しては、部屋の条件のことはあまり深追いしないようにしています。

しかし私の過去の経験上、買った後に自宅で鳴らす音があまりに店の音とかけ離れていて失望したとか、返品したいと言われたことは一度もありません。不思議と言えば不思議なことですが、人間の耳はコンサート会場のような音響効果を考え抜いた空間でなくとも、楽器の本質的な性格をかぎ分ける能力を持っているようです。狭い洋室で弾いても、音の反射が少ない和室で弾いても、表面上の違いはあれ楽器の地の性格だけは残るという事なのでしょう。

そう考えると、楽器選びでは純粋にヴァイオリンやチェロそのものの品質を問うことが肝要になってきます。音色や性能が各人の感性に合うかどうかを、正直な気持ちで見極めれば間違った選択はしない。これは、一般消費者に楽器を提供する我々業者が仕入れをする際にも、先ず大切にしなければならない感覚です。



4日前の日曜日、「宮城県芸術協会音楽コンクール」のヴァイオリン部門本選が行われました。私は2月11日の予選に続き、楽器の調絃・調整係として一日舞台裏で待機しました。場所は日立システムズ・ホール(仙台市青年文化センター)大ホール。
調絃室↓
調絃については同じ係を務めるヴァイオリンの先生にお任せし、私は楽器や弓のハプニング時に対応するだけの役目。しかし本番前に楽器のコンディションが大きく狂うということは稀で、アゴ当てのネジの緩みや駒のずれを直すなど、結果的には些細な作業をしただけで一日が過ぎました。
それでも、長丁場のコンクールを円滑に進行させるためには様々な状況を想定しなければならず、専門店の職人が始終会場に待機しておくという事が重要なのだそうです。
授賞式↓

10数名の受賞者のうち、日頃私の店にメンテナンスに来られている方が5人。比較的入賞者数の多いコンクールではありますが、やはり出場者にしてみれば震いにかけられることに変わりはなく、私も客席で親御さんたちと同じ気持ちになって、司会者から知ったお名前が呼ばれることを祈っていました。

コンクールに出る以上は入賞するに越したことはありませんが、元々人間の審査には公平を期していても必然的に主観が混じるものだし、芸術性の繊細な部分は点数化できるものではないから、選ばれなかった人たちも過度に自信喪失する必要はないと私は思います。
それよりも、これはコンクールに限らず、公衆の面前で何物にも頼らず芸を披露すること自体が、人間的な自信が身に付く元になり、また自分のヴァイオリン演奏の本当の実力を自覚するためにも益あることではないだろうかと思います。

私自身かつて味わい得なかった、悩ましいまでの幸福感に包まれる一時でした。古木から湧き出てくる艶のある音の粒が、耳や外皮に止まらず、全身の血の内にまで滲み渡ってゆくかのような不思議な感覚に囚われました。大自然の神秘を前にしても色褪せないほどの素朴な声音の美しさは、レコードに聴く歴史的名演奏の体験のごとく、いやそれ以上に一生涯の間、潜在的な記憶として自身の中に留まり続けるであろうと思います。高価で権威あるストラディヴァリの作品だからといった、世俗的な関心から来る満足とは別種の感動であることは言うまでもありません。弾いてみれば大傑作かそこまでではない楽器かの違いくらいは、特段プロ奏者でなくとも判別はつきます。

ここにユーディ・メニューインの弾く1950年代の録音を貼り付けているのには理由があって、実は今回お借りしたストラディヴァリウス「Kneisel,Grun」は、氏が全盛期にあたる1950年より87年まで愛用した極上の銘器「Soil」と製作年、寸法が同じで、同一の木型を使ったと思われる姉妹のような楽器です。目立った作為の見当たらない極めて端正な外観も、図鑑で目にしていたメニューインの「Soil」かと思うくらい酷似しています。

楽器店主と言えども、こうした桁違いのヴァイオリンの銘器(18億円)を何日も借り受けられる機会は滅多に訪れるものではありません。仮にこれが一奏者の所有であれば、楽器は命の次に大事な存在となるので、自分の目の届かないところに貸し出すという事はまずあり得ないでしょう。だから今回、20名のお客様方と同じ清新な感激を私自身も味わったと言って過言ではありません。
一生に幾度とは巡って来ないであろう、この度の思いがけない出会いに心より感謝しています。

明けましておめでとうございます。
本年もどうぞよろしくお願い申し上げます。
昨年は多くの皆様の長きにわたるお引き立てのおかげで、平生の業務に加え、新規事業における土台づくりを完遂することができました。誠に感謝の気持ちで一杯です。心より御礼申し上げます。

31日の15時に年末の業務を終え、明けて2日からは上記の通り、初売りを兼ねた営業を開始しております。
初売りは本日4日まで。
5日からは通常営業に戻ります。

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大晦日も元日もテレビを見ず、実質、神社への参詣だけが正月休みらしいひと時となりました。よく正月から大変ですねなどと言われるのですが、我々のようなサービス業に従事する者は、何より自分たちの仕事を通じて新春の特別感を味わっているところがあり、飾り付けをしたりレイアウトを変えたりこまごまと動いているうちに自らも楽しく華やいだ気分になってゆくものです。
本当は楽しいことばかりではないのが現実。世の中も地球も生き物で、蓋を開けてみないと何が起きるか分からないという事を思い知らされた初春ではありますが、各々の立ち位置で、いつも通りの責任を果たしながら明るく生きるという事は、どんな時にも求められる姿勢ではないかと私は思っています。

皆様の心身のご健康と幸多き日々を祈念致しつつ、本年も心機新たに始動して参ります。
どうぞよろしくお願い申し上げます。

弦楽器工房Watanabe

この度のレッスン室建築にあたり、設計段階から施工後までに様々な難題がありましたが、一番苦慮させられたのは、やはり出来上がった三部屋の音響を落ち着かせるという事でした。床をカーペットにしたので音が暴れることは無いだろうと楽観していたのですが、少々認識が甘かったようです(笑)。

一般家庭のように雑然と物を並べると、音が程よく屈折して反射は収まるのですが、レッスンに必要のない家具類をむやみに置くわけには行きません。ボックスを広く保ったまま、弦楽器の響きを柔らかくまとまり良くするのが課題でした。

そこで追加工事として、二部屋に厚手のカーテン、もう一部屋に五種類の吸音素材を取り付けました。


この吸音対策は驚くべき効果を発揮し、各部屋ともに響きすぎず、こもりすぎない快い残響音に変わりました。


〈レッスン室1〉

既存の壁二面が硬いコンクリートのため、一番反響が激しかった部屋ですが、カーテンの効果で高域の角が取れ、中低域の存在感が増した感じです。
床面積に対するカーテン面の比率はこの部屋が一番大きく、そのためか今では音の感触が最も柔らかくなりました。

*広さは何とか弦楽四重奏ができるくらいです。


〈レッスン室2〉

他の二室より狭い分、音がややストレートに聞こえますが、写真右手の壁に五層の吸音素材を取り付けたことで音に締まりが出てきました。ここが一番好きだという人も中にはあるかもしれません。
(吸音材を五層にしたのは、隣り合った部屋どうしの遮音が第一目的。)

〈レッスン室3〉

一番奥で、室2の壁の隣り。形は細長ですが最も広い部屋です。
丈3メートルのカーテンのおかげで、ヴァイオリンらしい層の厚い響きが出るようになりました。伸びやかなのに適度にエッジが利いたような不思議な音がします。合奏、カルテットの練習で長時間使用しても耳が疲労しないと思います。
三部屋に共通しているのは、天井の高さが3メートルあること、間仕切り壁を杉の木にしたこと、そして写真では判別しにくいのですが、杉の壁は乱反射を抑えるため向かい合う壁と平行に建てていないことです。
いずれも音響的には長所と言える条件と思いますが、カーテン等で反響を抑えた結果、初めて建材の響きの良さが生きてきたように感じます。
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なおご使用の際は、各室の音を比較された上で好みの部屋を選んで頂いて結構です。私自身、その性格の違いを体験するのを楽しんでいるところがあり、結果的には均一な音にならなくて良かったと思っています。

ブログでのご案内が遅くなってしまいました。9月から施工が始まった音楽教室は、無事10月17日にオープンし、追加工事も先月中頃に終了しました。

玄関とロビー⬇️

ロビーから見た各レッスン室⬇️
一番奥の部屋(レッスン室1)⬇️
3つの中で最も広い部屋です。

中央の部屋(レッスン室2)⬇️
現在は右手の壁はボードに変わっています。

一番手前の部屋(レッスン室1)⬇️
二番目に広い部屋です。
~ご案内~
〈音楽教室について〉
○対象楽器:ヴァイオリン、ヴィオラ、チェロ
○レッスン料:5500円~
他に6000円、6500円、8500円(担当の先生により異なります)。
○ワンレッスン制、1回1時間
○幼児または1時間レッスンが困難な児童の場合:30分4000円
○入会金:3000円(初回レッスン受講後、継続される場合)
○各部屋とも冷暖房完備
譜面台、椅子はご用意しております。

○初心者から中級、上級者、進学を目指す方までを対象とし、生徒様のレベル、ご希望に応じて講師をご紹介しております。

○初級のうちは等間隔でレッスンを受けることが望ましいですが、それぞれのご家庭の事情があると思いますので、担当の先生と相談の上、ご無理のない範囲で受講していただければ結構です。

〈練習室のご利用について〉
音楽教室の他、個人またはグループでの練習室としてお使いいただくことも可能です。
1時間:1500円(当教室の生徒様は1000円)

ご興味のある方は、お気軽にお電話にてお問い合わせ下さいませ。
⬇️
(022-797-0745 弦楽器工房Watanabe)
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11月にはカーテン設置、5重のボード貼り、二重窓の取り付け、コーキング、という吸音・遮音のための追加工事を行い、3室とも弦楽器が柔らかく響く部屋に生まれ変わりました。厚い遮音ボードのおかげで隣り合わせの部屋の同時使用も可能になりました。

楽器店のレッスンといえば、世間的にはどうも販促のための方便と見られやすいところがあります。私はそれが嫌で長く教室開設は躊躇してきたのですが、レッスン室はあくまでも生徒様方の技術習得の場、音楽的感性を育む場として、本来の目的の下に発展させて行きたいと思っております。
どうぞよろしくお願い致します。


このたび当店の隣室(カナリアビル103)にレッスン用のスタジオを開設します。9/25から施工が始まり、そろそろ最終段階に入りつつあります。


高さ3メートル、床面積21坪の空間を間仕切りして、レッスン室を3部屋、待合スペースと倉庫兼事務室を1部屋作ります。遅くとも10月中旬頃には使用可能となる見込みです。

2年半前に私の店舗のリフォームでお世話になった一級建築士・海子揮一さん(海建築事務所経営)に設計を依頼、5月から十数回の打ち合わせを行い、9月に入ってからようやく正式な図面が完成しました。

空間の雰囲気はもちろん疎かにはできませんが、楽器のレッスンや練習のための場所を作るからには、部屋の音響を第一義としなければなりません。各室内の響きの柔らかさと防音性能の双方を求めるなら、重量の出る天然木を並べ立てるのが良いという結論に至り、やや贅沢ながら杉の木材を約200本使って部屋を区切りました(防音の性能というのは通常、建材の重量に比例するそうです)。
通常のリフォームでは、事業者が直に施工業者に依頼するケースも多いと思いますが、私個人の発想力や教養では、とてもこのような完成度の高い音楽施設を現実のものとすることは不可能です。古いビルの構造や設備、歪み等を精査するだけでも大変な手間がかかります。間取りを吟味して行くにつれ、専門の建築士さんの豊富な知識と経験に頼って正解だったという思いを強くしました。
今日で施工開始から丸一週間。木工専門の業者さん(30代から60代後半までの職人さん達)の素晴らしい仕事ぶりを毎日拝見しながら、その体力、手際の良さ、作業への真摯な意気込みに言葉を失うほど感動してしまいました。

若い世代が自分本位の楽な生き方ばかりを求めるようになったご時世にあって、建築業界の人手不足が深刻な問題になっていると聞きますが、こうした現場の厳しい空気に触れると、自分自身も現在置かれている立場でより一層、人の世のためになる仕事をしようという思いが強くなります。

すでに木工事は完了。後は建具工事(各部屋のドア、窓冊子の取り付け)と塗装工事、電気工事、タイルカーペット敷きを残すのみとなりました。

最後に消防のチェックが終われば、レッスン室としての使用が可能になります。


レッスン料、部屋の使用料等については、日をあらためてご案内させて頂きます。皆様にとり心身共に快適な音楽活動ができる空間をご用意致しますので、今しばらくお待ち願います。


弦楽器工房Watanabe

022-797-0745

(ご興味のある方はお電話にてお問い合わせ下さい)


◯Martin Hornsteiner(1869年・ミッテンヴァルト)
OLD独、個人製作。
古い楽器に付きものであるクラック修理の箇所は少なく、年月を経た濃いワイン色の風合いが美しいヴァイオリンです。
音質はふくよかで円やか。懐が深く、強奏時も刺々しい響きにはなりません。低絃の支えがしっかりしており、品のある音楽が作りやすい楽器だと思います。



あるピアニストのご厚意で、デンマーク製の美しいアンティークピアノを長期でお借りすることになりました。

今日の午前中に専門の業者さんが運びこみ、工房の一角に配置。色合いと木目、外形が大変美しいピアノで、部屋のグレードが途端に上がったように感じました。
店内にはヴァイオリン、チェロといった色の渋い製品が多数並んでいるため、似つかわしい家具や調度品を選ぶのはなかなか難しいのですが、古くて奥ゆかしいこのピアノは、部屋の雰囲気に難なく溶け込んでくれました。
つい先日、大修理と調整、調律を行ったばかりの楽器らしく、年代物ながら目立った不備は見当たりません。また何ともいえず気品高い音質のピアノで、いたずら半分に指を動かしただけで味の深い音色が出ます。鍵盤数の少ない小ぶりの楽器ですが、あまり身近で聴くことのない不思議な響きです。



もちろんインテリアとして申し分のない楽器ではありますが、ただ置物にしているのでは勿体ない。弦楽器の伴奏用ピアノとしてもぜひ有効活用して行きたいです。