弦楽器工房Watanabe・店主のブログ

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弦楽器工房での日々の仕事の話について気儘に書いています。

音楽と趣味のブログはこちら⬇️
https://ameblo.jp/aoba-strings

弦楽器工房Watanabe HP

ヴァイオリン・ヴィオラ・チェロ・コントラバスの修理・調整・販売


仙台市青葉区本町2-6-30吉田本町ビル1F


tel:022-797-0745



2012年の11月1日、銀杏の葉が色づく頃に開業してから、今日で丸10年が過ぎました。
これまでにお世話になったすべてのお客様、また業務上、事あるごとに貴重なご指導を賜った方々に対し、厚く御礼を申し上げます。
これから先も、拠点仙台を中心として音楽文化の一翼を担うべく日々精進する覚悟でございます。何卒よろしくお願い申し上げます。
思い起こせば、多くの方々との佳き出逢いの連続という感じで、その交流を通じ弦楽器の音への理解が深まったことはもちろん、会話の中で精神的感化を受けるような機会も稀ではありませんでした。
通常のサラリーマン生活においても、仕事を通じた深い感激がそれぞれにあるものですが、私の場合はすべての接客業務に自身が直接関わっているため、交流の密度が濃くなる傾向はあります。お客様の喜ぶ顔を直接見ることができ、自分の感謝の意を直かに伝えることができる。生きて行く上で、感謝の機会が多いという事ほど幸福なことはありません。

趣味、行楽、酒、団欒・・生きる喜びにも種々あるでしょうが、選んだ仕事は何にも増して生活の中心に据えるべきもの。人は職業にした事にだけ真に精通、習熟することができる。そしてただ専門にしたという事と、熟練する事の間にはより大きな開きがある・・。これらの事を改めて実感した十年間でした。

本年、長期にわたり化粧直しをしたビルにおいて、決意新たに頑張ります🎻✨。↓


これは今月初旬に、長期間手をかけて組み上げたオールド・ヴァイオリンです。
最初は年代物らしい滑らかな音だと思っていたのですが、弾くうちに低絃の量感が不十分に思われて来たので、さらに表板を開けてバスバー交換をしました。⬇️
表板を開けて、新しいバスバーを取り付けて形を出し、また蓋を閉じ、接着部付近のニス補修をして元通りに組み上げる。
オープン時にはニカワがなかなか緩まない時があり、接着した箇所を乾かす時間も必要になる。首尾よく行ったとしてもこれだけで2~3日はかかります。

甲斐あって低音に重さと張りが出て、また他の絃も色艶が濃くなりました。板が標準より厚い楽器のため、当初はやや硬質な感触が残っていましたが、それでも日数をかけて鳴らしているとオールドらしい柔らかみと厚みが加わってくる。この変化を感ずるのは非常に楽しい。特に、一度蓋を開けた楽器は、再び全パーツが一つの有機体になるまでにある程度の時間を要します。

大まかに言えば、楽器の良し悪しは低音が要(かなめ)になります。ヴァイオリンなら一番左のGの絃が軽い楽器は、高絃の音にも潤いがなくなります。しかし、現実には高音が勝っているヴァイオリンが圧倒的多数です。量産品に限った話ではなく、何百万もするオールドでもストラディヴァリウスでもこの傾向はあります。そもそも低音の響きよりも、明るさや華やかさを重要視している製作家、楽器メーカーも少なくない。
我々は幸い、修理や調整で音のバランスを整える術を持っていますが、それでさえ元の楽器の品質、傾向を変えるには限界があります。だから仕入れの段階で物をよく見極め、良い楽器を多く提供することが店の信用につながると思っています。

↑参考までに。
これは一番下のG線だけで弾かれるシューベルトの「アヴェ・マリア」。懐の深い低音が出る素晴らしいヴァイオリンです(ストラディヴァリウス)。
もちろん奏者が違えばここまで良い音は出ないかもしれません。二曲目は「熊蜂の飛行」。
ユーディ・メニューイン(ヴァイオリン)
アドルフ・バラー(ピアノ)
撮影:1943年、アメリカ

〇ヴァイオリン:独製(1800年代後半)ノーラベル

〇弓:OLD仏 フランソワ・ロッテ

古くて柔らかい音が出る楽器と、滑らかな弾き心地のオールド弓。相性ぴったりの組み合わせです。
リーディング作曲/ロマンス⏬


今はもう手許にない楽器ですが、最近巡り会った中で最も印象深い音だったヴァイオリン。
カラーチェ(1941年・ナポリ製)
バッハ:ヴァイオリン・ソナタ第1番第3楽章より。
収録:2021年9月

短調による厳しい曲調の2、4楽章に挟まれた、誠に心安らぐ神々しい楽章です。知性的な無伴奏曲にはない息の長い情緒を持っています。
⏫音質の良いボイスアプリを添付できたらいいのですが、これはスマホのカメラアプリの音声。実際の音はもっと柔らかです。
(投稿は60秒が限度のため二分割に。時間の都合で継ぎ目に欠落があります。)


明けましておめでとうございます。
本年も宜しくお願い申し上げます。

昨年は世情の落ち着かない中、変わらぬご愛顧を賜りありがとうございました。厚く御礼申し上げます。

〈初売りのご案内〉
〇本日1/2(日)と明日1/3(月)は初売りを行っております。
〇営業時間は10:00~17:00です。
〇対象の楽器・弓・ケースが定価の20%OFFになります。
〇これから始めたい方も、ご経験者もこの機会にぜひご覧になられて下さいませ。

1/4(火)より通常営業時間となります(10:00~19:00)。
皆様のお越しをお待ち致しております。

弦楽器工房Watanabe
渡部 匡
022-797-0745


〇当店はお盆期間も平常通り営業しております。
〇営業時間帯は普段と同じです(10:00~19:00)。

ただいまヴァイオリン、チェロ、弓と珍しい貴重な品が沢山入荷しております。殊に年代物の魅力的なチェロを5本取り揃えていますので、ご興味ありましたら是非。

⬇️1900年前後のストラド・ラベルのチェロ(独製)。
当店にて長期間かけて修理復元しました。

⬇️1750年作、ヨハン・カルロ・クロッツ(独・ミッテンヴァルト)。
以上、ほんの一例です。

⬇️今は花が長く持たないのでドウダンツツジを外と内に飾っています🌿。
仙台はこの時季とは思えないほど涼しく、また気候のすぐれない日が続いておりますが、お時間がございましたらお立ち寄りください。

弦楽器工房Watanabe・店主
022-797-0745

このたび、仙台市民の文化情報誌としておなじみの『季刊・まちりょく』のvol.42(4~6月号)で当店を紹介して頂きました。
『季刊・まちりょく』2021年4~6月号 

仙台市民文化事業団が制作する「まちりょく」は市内の図書館、音楽ホールなどの主要な文化施設に配布される無料の小冊子で、毎度芸術に関わるイベントやスポットを広い分野にわたって取り上げています。楽器愛好者のみならず多くの市民の方々が読まれる冊子ですが、記事のほかに、表紙の背景にまで使用していただき大変感激しました。
好奇心をもって丹念に取材され、とりとめのない私の雑談から、首尾よく要点を拾い上げて下さったご担当者様各位に、心より御礼申し上げます。

ヴァイオリン弓・Roger-Francois LOTTE。
OLD仏
(RAFFINほか二氏の鑑定書付)

昔のフレンチ・ボウは現在主流となっている化学繊維製の強い絃を弾くことを想定していないため、腰が弱くてダイナミックな表現ができないと感じる人もいます。もし現代製の硬質な弓に手が慣れている場合は、多少力を抜いた奏法を身に付ける必要があるでしょう。右手の圧力が弓の特性に敵ったものになってくると、大抵のオールド弓は美しく滑らかな音をヴァイオリンから引き出してくれます。
しかし、同じ古いフレンチ弓でも、密な木材を使用した弓は弾力性にも富み、テクニックを駆使しなければならない曲を難なく弾きこなすことができます。このLOTTEが製作したものも吸い付きがよく、安定感のある素晴らしい弓の一つです。
・・・・・・・・・・・・・
OLDフレンチは弓の相場としては最高ランクに位置し、高額な作家だと数千万円の値が付くものもあります。使用状態が良好であるかぎり、古い楽器、弓の価格は今後も低下するということは先ず無いでしょう(もちろん、LOTTEはそこまで破格な品ではないです)。

住宅とか高級外車ならともかく、たかが楽器をこする道具に過ぎないものが何百何千万とは、と呆れ返ってしまうのは尋常な感覚だろうと思います。純粋に弓に求められる実用性だけを問題にすれば、その価格はたしかに「高すぎる」と言わざるを得ません。
そして、素人考えでは音の良い楽器、音量や音色が出る弓ほど高価だと思いがちですが、事実を言うと、値段は音や性能を保証しているわけではありません。作者、国、年代、現存する本数。これらを需要と照らし合わせることで市場価格が定まって行きます(もっとも、元を正せば質の良い芸術品を沢山供給した職人や賞を取った作家が好評価を得ているわけで、値段のつく作家には少なくともいい加減な品物はありません)。そうではなく、仮に先に書いたような音色の美しさとか弾力性という、個人の主観を通じてのみ感じられる要素を基準にしてしまうと、各業者の考え次第で物の相場に幅が出来たり、破格になったりする恐れが出てきます。目で確認できない長所に値を付けると不味いことになるのです。

それよりむしろ、この弓がLOTTEの作であるかが証明されている事の方が価格設定をする上では大事になってきます。鑑定家の権威にすがれと言うつもりはありませんが、たとえ物をよく動かしている楽器店であっても、残念ながら我々日本人には西洋楽器の鑑定をする資格は与えられていません。仮に見る目があるディーラーさんであっても、そこでの判断は、世間的には自称目利き的な範囲を出ないものになります。

弾き味が値段に対して不足しないと言うなら気分的には悪い買い物ではないでしょうが、本物の値段帯で売られていたものが本物でなかったとしたら、それは決して良い買い物とは言えなくなります。安いものを高く掴んでしまって、将来売りに出したい時などに嫌な思いをしないために、できれば素性のはっきりした(鑑定済みの)商品を手にされることをおすすめします。