本日、スペインの研究グループが、皮膚細胞から精子をつくったとのニュースがありました。しかし、そこから人間がつくれるという話まではいっていないようですが、2N細胞を減数分裂させて、N細胞を作ったと言うことでしょうか?
主任研究者は、「我々は、不妊治療としての長期的な話をしている」と言っているとのことでした。
つまり、まだ働く精子は出来ていない!という意味だと思いますが、研究の世界は大きな声で早く口に出す人が有利です。将来は、最初につくった人は私である!と言いたい人が多いのです。
考えが先駆的で声が大きいのは研究者として必要条件で、さらに加えて研究者は、どんなに非難されてもめげず、自説に信念を持つ姿勢が無いとだめなようです。
日本では、STAP事件から多くの人が学んだように、こうした大風呂敷的な態度は人々の反発が強いようです。
日本が世界的に医学研究の発信地であるためには、日本の学会が今後変わってほしいものです。
研究がねつ造であることがわかったら、皆黙って無視するだけで十分です。
ねつ造や役に立たない研究は消えていくのみです。
特に、万能化の研究というのは、臨床応用がターゲットですから、再現性や将来性の無い研究は、忘れられていくのです。
たとえ、新発見が真実でも、再現性がなければ、人類に貢献できないのです。
間違った論文に基づいて間違った治療につながるなどは無いのです。
基礎研究はまだ、そこまで成熟していません。
トライアンドエラーの世界です。
もっとも、臨床研究なら、人為的判断が入り、データ操作は可能です。
しかし、今回のSTAP事件は、最初に“ねつ造ありき”で始まりました。STAP細胞がねつ造かどうかの証拠もないのに、ねつ造であると決めつけて、小保方氏を陥れたのが、今回のSTAP騒動でした。
基礎研究の利権争いの犠牲になりました。
STAPねつ造論には、多くの混乱と勘違いがあったと思います。
STAPねつ造論には、多くの混乱と勘違いがあったと思います。
しかし、世界的に細胞の万能化の研究が進むことで、今後、小保方氏が訴訟を起こした時には有利に働くと思います。
ここを克服して、とにかく、多くの人々が細胞の初期化やクローン化、がん化について、興味と理解を進めたいものです。
細胞を知るとがんもわかります。
でたらめながん治療がまかり通らないためにも、人々が持つべき知識になっていくと思います。
山中グループが発見した初期化遺伝子を入れ込めば、細胞は初期化します。
初期化現象を起こした細胞を使って、ダメになった個人の臓器や組織を復活させることが夢ではありません。
前ブログに、細胞の初期化あるいは万能化と、がん化というのはとても密接な関係にあるとのことを書きました。
もはや万能細胞をつくることは特別のことではなくなっています。OCT、Sox2、Klf4、c-Myc (OSKMと略)は、山中先生のグループが発見された有名な初期化遺伝子です。この遺伝子が細胞内で、働き始めると、細胞は万能性を獲得するのです。
初期化遺伝子を強制的に、体細胞に入れ込むことにより、細胞の万能性が獲得され、受精卵と同じようなさまざまな組織になりうる能力のある幹細胞が作れます。
遺伝子を入れ込む方法ですが、ウイルスに万能化遺伝子を背負わせて、細胞に感染させる方法により、ウイルスに感染した細胞は万能化遺伝子を獲得できます。
すでに体の一部となってしまった細胞は、元の受精卵の状態には決してもどれないとするのが生物学の常識でした。しかし、万能化のメカニズムが解明されていくにつれ、戻れないのではなく、戻らないように抑えられている仕組みがあることがわかってきたのです。
STAPは、遺伝子を外から入れる事無く、自ら封印した万能化遺伝子を復活させることができることを明らかにしました。
理研の調査委員会が、検証実験は失敗だったと言いながら、いまだに、酸浴後に万能化遺伝子の発現があると、理研ホームページに載せています。
この記載が残っていると言うことは、恐らく、理研内に残るSTAP擁護の研究者が、踏ん張っている姿と解釈できます。彼らが声をあげられないことが、理研の一番の問題点ではないでしょうか?
過酷な条件にさらされた生き物は激しく変化していきます。死をかけた戦いがあります。生き残るために、遺伝子構造を隠したり、発現させたりと、その働き方はどんどん変わってきます。
STAP捏造を訴えた学者たちは、酸につけただけで初期化遺伝子が働きだすという現象が理解できませんでした。まあ、理解しないようにした!という事かもしれません。
こうした学者たちは。「ねつ造だ!」と強いメッセージを発しました。現象を認めないふりをして、学者たちはそのままねつ造論を拡散させました。
前置きが長くなってしまいましたが、前ブログの続きです。細胞の柔軟性についての京都大学の研究者たちのお仕事を書きます。
さて、前ブログで紹介したのは、繊維芽細胞が変化して、iPSにも、 iCSにもなれるという論文でした。最初に、人工的に遺伝子を導入してあげさえすれば、細胞はかつての受精卵だった時の働きをとりもどせます。その後の細胞は、体内環境に応じてあらゆる臓器を作るために、自動的に変化していきます。
下図には、体全体を作り上げることができる全能性を秘めたiPS細胞ができるまでをを示しています。
iPSになるためには、体細胞になる遺伝子群は消し去られ、完全なる万能性が発揮できるようになることが必要条件です。
以下に、簡単に図示しました。
図に示すC, P, Mは遺伝子群です。大雑把に言うと、Cは万能性遺伝子群、Pは体細胞に関連する遺伝子群、MはMyc系(腫瘍性、自律性)に関連する遺伝子群とご理解ください。
万能化細胞作製の材料として、万能性の無い繊維芽細胞(Fibroblast)が使われます。
この細胞の遺伝子型(P)は、体細胞型で、腫瘍性(M)や万能性(C)はダウンしています(一番左の図)。
この左の繊維芽細胞(Fibroblast)に、初期化遺伝子を強制的に入れることにより、上皮幹細胞iESができます。 この細胞では、自律性、腫瘍性がアップしています。iESは、体細胞性を残しながら、万能性、腫瘍性を獲得したのです。
さて、次の右へ進むステップでは、遺伝子を細胞に入れこまずとも、細胞が自律的に分裂を繰り返す反応です。この下図は、iESから1CS、iPS他のタイプの細胞になっていく経過を図示したものです。
上皮幹細胞iES(左から2番目)となってからの次は、2つのルートに分かれます。
すなわち、腫瘍性を獲得した腫瘍幹細胞へのルートと、体細胞性を完全に失い万能性を高めた(腫瘍性は維持)iPSとなるルートです。
こうした異なる細胞へと導くためには、培地の条件とかを変えたりします。
細胞は、まわりの条件を感知して、遺伝子を隠したり、働かせたりして別タイプの細胞へと、変幻自在に代わってきます。
この細胞の多能力性に興味ある方は、元論文にアクセスしてみてください。
Self-renewal and pluripotency acquired through somatic reprogramming to human cancer stem cells.
Nagata S, Hirano K, Kanemori M, Sun LT, Tada T.
PLoS One. 2012;7(11):e48699. doi: 10.1371/journal.pone.0048699. Epub 2012 Nov 8.
PMID: 23144933