Turkish delight ウィーンの夜はふけて チャイナマーブル | 楽典詩人

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先日、ヴィレッジ・ストンパーズの演奏する「ワシントン広場の夜はふけて」のレコードについて、夜は更けていないと書きましたが、きょうはそのB面の「ウイーンの夜はふけて」についてです。

 

この曲の原題は「Turkish delight」と言いますが、レコードについていた解説では、モーツァルトトルコ行進曲を編曲したものとのことです。そのメロディーはクラシックにまったく興味のなかった少年のわたしでもどこかで聞いたことのあるものでした。

 

さて、原題の意味を調べようと当時ようやく英語を習い始めた60年前の私が、なんとか辞書を引くと「トルコ(人)の喜び」となっていました。何のことやらさっぱりわかりませんでしたが、辞書ではそれ以上のことは分からず、原曲のトルコ行進曲にゆかりがありそうだとは思いました。

 

邦題の「ウイーンの夜はふけて」はウイーンにも夜にも関係はないが、モーツァルトにちなんで無理やりつけたのだろうと思いましたが、原題がturkish marchではなくdelightになっているのがどういう理由なのかが分かりませんでした。

 

この疑問はわたしの心の深いところに長く眠ったままになっていました。それから何十年か経って、中年になった私がなぜか英語の文を読んでいた(私は、仕事でも趣味でも英語を使うことは全くないのでめったに英文は読まない)とき、そこにturkish deligntという言葉が出てきました。読んでみるとどうもトルコ由来のお菓子の名前のようでした。なにやらよく分からないが、その菓子は食べ進むと中から違うものが次々に出てくるというようなことでした。本当はどんなものか分からなかったが、日本の菓子でいえば、変り玉(チャイナマーブル)のように層になっていてひとつの層が終わると、違う色や味の層が次々に出てくるのかなと勝手に想像しました。

 

そうか菓子の名前だったのかと、記憶のなかで長く眠っていた疑問に少しだけ光がさしたように思いました。

 

それからまた何十年か経ち、老年になった私がヨーロッパ旅行の帰途イスタンブールの空港で乗り継ぎをしたとき、みやげもの売り場でturkish deligntと書かれた菓子を見つけました。見るといろんな種類のものがあるようですが、すべて羊羹のような四角い基材の中にナッツなど何か別のものが入っているようでした。これでやっとturkish deligntの正体が分かり、長い間の謎が解けた気がしましたが、この時は時間がなかったのかなぜか買いそびれてしまい、それを食べるのはお預けとなってしまいました。

 

 

その後トルコに旅行に行ったときは、イスタンブーのあちこちでturkish deligntが売られていて、それぞれで試食させてくれたのでいろんな種類のものを味わうことができました。

 

ひとことでいえば、ぎゅうひやゆべしのような基材の中や上にナッツや他の菓子の小粒などを入れたような菓子です。トルコ語では、ロクム(lokum)というようですが、チャイナマーブルのように固い菓子ではなく、柔らかなもので私の口によく合うものでした。

 

そのときは、半世紀以上疑問に思っていたものが食べられて、長生きしてよかったなとつまらない感想を持ちました。