新宿のあるバーにもう十数年かよっている。
常連といいっても、今は月に2,3回しか行かないが。
この十数年でマスターが3人変わった。
一番初めに行ったときは、雇われマスターのNさん。
最初の日、お互い同い年だと分かって話が弾んだ。
その彼が急病で倒れて、その穴埋めとして昭和30年代にその店を立ち上げたオーナー本人が、昔取った杵柄をまたしばらく取った。
5,6年前からはそのオーナーの息子が現在までマスターとなっている。
オーナーと現マスターは仕事柄当然かもしれないが、なかなか酒にうるさい。
オーナーもときどき秘蔵の酒を取り出して一人こっそりと飲んだり、また常連客に少しだけ味わせてくれた。
先日行ったとき現マスターがこんな酒が手に入ったと言って次の写真の酒を見せてくれた。
びっくりするほど高い酒ではないが、一般の流通ルートにはない酒で次に入手できる見込みがないので店では客の注文は受けないとのことだったが、私ともう一人の常連(もう40年近くこの店に通っている)にほんの少しだけ飲ませてくれた。
とても豊かな味の酒だった。
ふくよかな甘みが奥にあり、熟成の不十分なウイスキーにありがちな舌をはじくような刺激などみじんもない。
ただ、口に入れた瞬間、私がいつも飲んでいるジャックダニエルに似た味わいがあった。
ただし、私がいつも飲むジャックダニエルNo7は、これに較べると熟成度合いがずっと低いと思われた。
バーボンというウイスキーは、本来ケンタッキー州バーボン郡で作られるものをいうようだ。ジャックダニエルはテネシー州で作られているので、そのため正式にはバーボンと名乗っていないようだ。
このBelle Meadeという酒は、ラベルにバーボンと書いてあるが、生産地を見るとテネシー州となっていた。
私がジャックダニエルとこの酒との共通性を感じたのは、単にバーボンという材料・製法だけではなく、貯蔵する樽材の共通性とか、日本酒にも灘は灘、越後は越後と地酒に地域特性があるようにアメリカの酒にも地域特性があるのかもしれないなと考えた。