僕は、微笑む彼女と目が合い
一瞬で恋におちました

何故か分かりませんが
教会の鐘の音が聞こえてきました

僕には彼女が運命の人に思えてきました

こんな地味な僕が
何を勝手な…と思われるでしょうが

身の程知らずとは僕のことですね


でも、僕は幸せでした

女神が僕に微笑んでくれただけで
モノクロだった僕の世界は
キラキラした薔薇色に変わりました

僕は彼女に吸い寄せられるように
華やかな、彼女たちの輪に近付いていきました

すると彼女は立ち上がり
たくさんの取り巻きをその場に残して
僕の方へ歩き出しました

僕と彼女はまるで磁石のように
ゆっくり引き寄せられ

気がつけば
ふたりで見つめ合っていました

それはとても異様な光景だったと思います

美しく可愛い女性と
地味で冴えない中年男性

美女と野獣…
いえ、僕は野獣というより老犬…?

不釣り合いなふたりを
周りの人々は静かに見守ってくれました

暫しの沈黙の後
彼女が微笑んで言いました

あなたに一目惚れしました


…???

え???

今、なんて???

僕の妄想が酷すぎて
幻聴が聴こえて来たのでは???


僕がぼんやりしていると

彼女はさらに美しい笑顔で

良かったら今度お食事でもいかがかしら?

と、みんなが見ている目の前で
僕をデートに誘ってくれました

僕は…

は、はい、分かりました

と返事をするので精いっぱいで
それから後のことはあまり記憶になく

気づいたら自宅のソファでぼんやり
コーヒーを飲んでいました

僕は夢を見ていたのでしょうか?
とても幸せな夢を見ていたな…

そんなふうに考えていると
僕のスマートフォンの着信音が聞こえました