前の記事を書いたのは9月15日だが,その12日後の27日にLEICA Q3 43が発売された.これはQ3の28mmレンズをAPO-SUMMICRON 43mm 1:2/43 Apsh. に取り換えたもので,RICOH GRIIIに対するGRIIIxのようなものである.

 

 

なぜ43mmというペンタックスくらいしか例がない珍しい焦点距離を選んだかというと,36x24mmの”フルサイズ”センサーの対角線長が43mmだからである.皆さんよくご存じであろうがあえて復習すると,”標準"と呼ばれるレンズの厳密な定義はないが,昔から焦点距離がセンサーの対角線長と同じくらいのレンズと考えられてきた.”フルサイズ”ではバルナック型ライカの頃から50mmを標準レンズとみなしてきたが,これは対角線長より少し長い.そこで40mmの”準標準”レンズが散発的に現れたり,ニコンFマウントのGNニッコール45mm F2.8が珍重されたりしてきたわけだが,どストレートに対角線長43mmを焦点距離にしたのがQ3 43というわけだ.

 

 

僕が小学生のころ父に買ってもらったコンパクトカメラ オリンパス35EC IIのレンズはE. ZUIKO 42mm F2.8だった.単焦点コンパクトカメラは40mm前後が普通で,50mmより撮りやすい.35EC IIはゾーンフォーカス式だが,上級機種の35DCはF. ZUIKO 40mm F1.7という明るいレンズが距離計と連動する知る人ぞ知る名機であった.

 

 

すなわち,Q3 43はむしろQ3よりもレンズ固定式コンパクトカメラの系譜を正しく継ぐもの(ちょっと重いが)である.そしてLEICAの方からソニーα7CRに寄せてきたともいえる.ソニーにはFE 40mm F2.5 G SEL40F25Gという小型軽量173gながら優秀なレンズがあるからだ.α7CRにこのレンズを付けると電池,メモリカード込みで688gであり,Q3 43の電池込み793gより100g以上軽い.開放F値は2.5でQ3 43の2より少し暗いが,価格はボディとレンズでQ3 43の半額である.α7CRとほぼ同じ外観のα7C IIにFE 40mm F2.5 Gを装着してみたのが写真1.

 

写真1.これはα7C IIにFE 40mm F2.5 Gを装着した想定写真.ボディの外観はα7CRとほぼ同じ.フード装着.

 

明るさで負けるのは嫌だという人には,Carl Zeiss Batis 2/40 CF(合計876g)やFoigtlanderのNOKTON 40mm F1.2 Asph.(合計935g)がある.NOKTONなら明るさで優位に立てるし,製造終了した”SE”というバージョン(360g)を手に入れれば合計875gになる.SEは絞り環のデクリック機構を省略して小型軽量化したバージョンである.

 

Q3 43は150mm相当までクロップできるが,α7CRは4倍160mm相当までデジタルズームが使えるから互角.その上α7CRはいつでもレンズ交換できるのでどの画角でも6000万画素で撮影可能.