大和田良他著,さあ,写真をはじめよう 写真の教科書,インプレス,2016年.

 

副題は「写真を本格的に学びたい人のための基礎と演習」であり,帯には「東京工芸大学芸術学部写真学科の学生が授業で実際に使用している写真の教科書」と大きく書かれている(写真1).

 

何かあるトピックについて理解しているといえるためには,何を知っていたらいいか,何ができるべきか.何々について説明できるとか,何々が計算できるとか,そういう知識・能力の総体をbody of knowledge (bok)という.「写真の教科書」は写真撮影の基礎についてのbokといってよい.

 

写真1.さあ,写真をはじめよう 写真の教科書 写真を本格的に学びたい人のための基礎と演習.

 

言い換えると,もし写真にITパスポート試験みたいな資格試験があったらこの本はその試験範囲になるだろうということだ.

 

”第2部 基礎知識”の内容は他の入門書にも書いてあるようなことで,特に珍しくはない.だが第1部で実際にカメラ(とPC)を使ってこれこれを試してみようという演習課題が設定されているのはいいと思う.

 

僕は大学でプログラミング基礎の科目を教えているが,プログラミングの教科書には,文法を説明してあるのと,ゲームとか深層学習とかの開発を具体例としてその都度必要な機能を説明していくのと二通りの流儀があって,後者の方が面白そうだが実際には教科書として役に立たない.つまらなくても文法が書いてないと応用できないし後で参照するにも不便だから.

 

その類推で,いきなり風景とかポートレートとかを撮り始めるより,最初に必要な項目を一通り説明してしまうスタイルの方が僕は好きだ.何ならp. 93のEV値表などは暗記しろというくらいの勢いで.