僕が自動巻三針デート付き腕時計のオールタイムベストとして推すのはパテックフィリップのカラトラバ3998である.直径は34mm.デカ厚ブームが冷めて多少小ぶりな現行製品も増えてきつつあるが,その理想的な大きさ34mmを現行製品で選べるようになってきた.時計が大きくなったのはファッションになって目立たないと意味がないからだが,腕時計が実用品だった時代のように邪魔にならず控えめなのが自分のスタイル,と考える時計好きももちろんいる.カタログにはレディースと書いてあることもあるが気にするな.自分で着けるものは自分で選んだらよい.

 

メンズかレディースかの分かれ目は時計の直径ではなくてラグの幅である.時計本体に対してラグが細めだと俄然レディースっぽくなる.具体的には,ラグ幅が16mm以下なら女性用で17mm以上なら男性が着けてもOK.パテックフィリップの手巻のド定番カラトラバ3796は,直径30mmしかないがラグ幅は17mmあるから男性用.一方IWCのパイロットウオッチスピットファイアMark XVIミッドサイズは直径34mmあるがラグ幅が16mmなので女性用である.

 

いつの間にか世界5大時計なるものに数えられるようになったブレゲ.中古市場にはパテックフィリップやバシュロンコンスタンタンより数倍流通していて人気のほどがうかがえる.だが5大時計を鵜呑みにしてどれを買っても間違いないと思ったら怪我をする.初期のモデル(おおむねRef. 3000番台に相当)は美しい外観にふさわしくないお粗末な機械を積んでいた.手巻でいえばRef. 3210とかRef. 3290とかのジャガールクルトのムーブメントCal. 818を積んだモデルに注意.ジャガールクルトムーブならいいじゃないかと思うかもしれないがこれがとんでもない安物だ.ゼンマイを巻き上げてみればすぐわかる.買うなら5000番台以降,手巻ならシースルーバックのRef. 5907以降にしておくがよい.

 

そのブレゲの自動巻3針デート付きというと,センターセコンドのRef. 5910かスモールセコンドのRef. 5920が思い浮かぶが,中古を探さなくても現行製品にあった.直径33.5mmのRef. 9067だ.

 

 

 

 

神々しいまでに美しいブレゲのダイヤルをもつジャストサイズの腕時計が現行品で手に入れられるのは素晴らしい.予算に余裕がある向きはぜひ買ってほしい.2022年8月現在の値段は254万1千円である.ムーブメントは旧レマニアのCal. 591Aで,これはRef. 5910に積まれていたCal. 591の改良型だ.予算が厳しい人向けにはRef. 5910が90万円前後で見つかるだろう.

 

ロンジンはスウォッチグループに所属し,オメガの下,ハミルトンの上という位置づけがされている.あまり時計好きが熱く語るようなブランドではないが,独自のサイズ感をもつ貴重な存在である.ロンジンは来る.

 

1990年代には厚み4mmそこそこの超薄型クオーツ二針ドレスウオッチなるカテゴリがあった.例えばオメガのデビルとかIWCのポートフィノ3331など,装着感がきわめて軽く実用時計には最高だったが,デビルもポートフィノもその後もっと大きいサイズに移行し作るのを止めてしまった.しかしラ グラン クラシック ドゥ ロンジンというドレスウオッチのシリーズは連綿と作り続けられている.直径33mm,厚さ4.5mmというスペックはまさに生きた化石,ではなくて時計メーカーの良心だ.その良さを覚えているロートルも知らない若い人もぜひ手に入れてほしい.

 
 
 
 
バーインデックスやローマンインデックスのモデルもあるが,注目すべきは12石のダイヤをインデックスにしたモデル.ロンジンのマークを取ってしまえば特定不可能と思われるアノニマスデザインなので,ブランドのポジショニングを超越している.ブレスレット付きで21万1千2百円.
 
ロンジンはこれだけでない.マスターコレクションラインに34mm径ケースにETAの自動巻きムーブメントを搭載したモデルを展開し始めた!ロンジンはネ申か!最初に出たのはムーンフェイズモジュールを搭載したモデルで,美しいが厚みが11.1mmあるのでガチャガチャ使うとぶつけやすく傷つきやすい.
 
 

 

 

今年になって導入されたのがムーンフェイズなしの三針デート付きモデルで,厚みは9.2mmと普通になったので気を遣わず使える.シースルーバックでケースとムーブメントのサイズのバランスも良い.27万6千1百円.

 

 

 

 

これにもバリエーションとして真珠貝のダイヤルにダイヤインデックスのモデルがある.もうちょっとダイヤが大きければもっと立派に見えたのだが仕方がない.33万7千7百円とブレゲより桁違いに安いから,ぜひご検討を願いたい.

 

 

 

 

最後は横須賀にある太安堂本店店主栗崎賢一がプッシュするセイコープレザージュSRRY028.幅33.8mm,厚さ11.3mm.

 

 

 

 

文字盤が銀のSRRY025と赤のSRRY027とピンクのSRRY028の三種類があったのだが,一番レディースっぽいSRRY028だけがカタログに残っている.ラグ幅は18mmあるから安心してほしい.厚みがあるのは安いから仕方がないのだろう.値段は5万1千7百円.聞くところによるとかなりの人気商品らしい.