渋柿を剥くババアどもの世話をしながら、
母親に飯を食わせている。
そんな最中に弟が千葉から帰ってきた。
母親を見るなり、こりゃあ認知症だと言う。
弟はケースワーカーをしている。
先週は仏壇を燃やしかけた。
座布団を燃やし裏の畳を焦がした。
僕が外から帰ったら、玄関も家中にも煙が充満しており
母親はただその中に立ち尽くしていた。
先週まで母は入院していた。
帰ってからはおとなしく、僕に注文を付けることも無く
仏壇に向かってお経を唱えていた。
多少はおかしいなとは思ったが、僕は渋柿で忙しかったので
助かるなとだけ思っていた。
弟から聞いた。
子どもに戻るのだそうな、
しあわせな時代に戻るのだそうな。
ああ、もう怒れない。
憎たらしかった母親はもう消えてしまった。
目の前にいるのが従順な、
仏さまのような子どもだ。