原裕美子さんの記事を最初にニュースで読んだのは、けっこう何年も前だと思います。

有名なマラソンランナーの原さんが、万引きで逮捕された。

ああ、有名人でも万引きで逮捕されることがあるんだ。

落ちぶれるのは、イヤだ。

一線で活躍してても、万引きするようになったら、おしまいだな……

 

カエサルの感想は、そういったものでした。

何も知らず、勝手にそう解釈していた。

今となっては、自分の感想が恐ろしいし、画一的で、そう思ってしまったことを後悔してます。

 

原さんが窃盗を繰り返すようになったのは、ランナーとして活躍した現役時代に、過酷な食事制限をしたためでした。

ランナーとして、体重が増えることは絶対に避けなければならないこと。

身長163センチで、体重が44キロをキープしなければならなかった。

その倍くらい体重があるカエサルは、唖然とします。

体重を維持しつつ、つらいトレーニングに耐えないといけない。

身体はエネルギーと栄養を求めている。

それに理性で必死で抵抗する、そのしんどさ。

 

深刻な摂食障害になるのは、時間の問題だった。

食べて吐く、ということを原さんはするようになった。

いっぱい食べることで脳を満足させつつ、すぐに吐くことで体重を維持し、周りの人たちに怒られないようにしていた。

ほんと、苦しい日々だったと思います。

 

日本にいるときは、そうやって隠れて食べ物を買い込み、食べて吐く、というルーティーンを極秘に行うことができた。

中国の奥地、周りに店もあまりないような場所へ合宿に行ったときに、さらなる悲劇が始まることになりました。

いつもの、大量に食べて吐く、ということが環境的にできない。

お金を持ってないから食料を買えないし、周りの監視の目もある。

 

摂食障害の、強迫観念。

身体はもう食べ物がなくて、悲鳴をあげている。

盗むことが悪いことなんて、当然わかっている。

でもそれよりも、食べ物が欲しいという誘惑に勝てず、中国のある店で、思わず盗ってしまった……

その中国でのことが最初で、彼女はそれから物を盗むようになってしまった。

何度も捕まったが、止めることができない。

食べ物を盗ると、安心する自分がいた。

何度も失敗し、何度も立ち直ろうとした……

 

もし、そういうバックボーンを知っていたら、カエサルも「落ちぶれた人」なんて感想を持つことはなかったはずです。

生命の危機さえ感じる苦しい現役時代に、自分を守るために仕方なくやってしまった行為だったのです。

公開するのも苦しいでしょうが、よく事情を公にしてくれた、と思う。

しかしもちろん、それで罪が消えるわけではありません。同席の弁護士も言ってましたが、窃盗した罪は罪として償い、その上でしっかりと「窃盗症」を治療していくべきだ、と。さらには世の中に、きちんと治療を受けずにいる同じような症状の人々がいるんだ、と。

 

NHK動画の題名は「窃盗症を乗り越えた」になってましたが、もしかしたら一生付き合っていかないといけない症状なのかもしれません。

そして「元マラソンランナー」ではなく、減量に苦しめられた日々とは別れを告げた、走るのが楽しいマラソンランナーとして、いつかどこかでそのお姿を実際に見たいな、なんて思ったカエサルでした。

 

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