Platelet Transfusion before CVC Placement in Patients with Thrombocytopenia
N Engl J Med. 2023 May 25;388(21):1956-1965.
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 CV挿入前の血小板の閾値に関する多施設ランダム化非劣性試験。ICUもしくは血液内科に入院中でPlt 1-5万の患者に対し、CVC挿入前に予防的にPC 1単位(?)投与を行う群と行わない群に無作為割り付けし、出血をoutcomeにして検討した。
 結果的に338名/373件(輸血群188件、無輸血群185件)のCVC挿入が対象となった。Per-protocolで解析すると、輸血群で4.8%、無輸血群で11.9%にグレード2-4の出血が発生した(RR 2.45%, 90%CI 1.27-4.70)。グレード3-4の出血は輸血群で2.1%、無輸血群で4.9%に発生した(RR 2.43, 90%CI 0.75-7.93)。予防的PC投与を控えると、CVC1件あたり410ドルの節約となった。結論として、Plt 1-5万の患者に対する予防的PC投与を行わないと、行う場合に比べて出血が多く、非劣性マージンを満たさない。
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 日本輸血・細胞治療学会が血小板製剤の使用ガイドライン(2019)と血液製剤の使用指針(厚労省)では、5万という数字が1つの目安になっている。一方で、2019年の成人特発性血小板減少性紫斑病治療の参照ガイド改訂版では抜歯なら3万、硬膜外麻酔なら8万とされている。J Clin Anesth. 2020 May:61:109666.ではlumbar/epiとも7.5万という数字が出されている。
 術者の技量にも左右されると思うのでなんとも言えないと個人的には思うが、とは言え何が起こるか分からないのが臨床。後々で大事に至ってしまった際に、どれだけのリスクヘッジをして事に臨んだのかということは必ず問われるであろう。日本の裁判官はガイドラインの医学的信憑性を顧みることはなく、ガイドラインに記載されている文面通りに行ったかどうかを問う傾向が強いようなので、自分と周りを護るためには杓子定規に輸血するしかないのかも。