Clinical use of resuscitative endovascular balloon occlusion of the aorta (REBOA) in civilian trauma systems in the USA, 2019: a joint statement from the American College of Surgeons Committee on Trauma, the American College of Emergency Physicians, the National Association of Emergency Medical Services Physicians and the National Association of Emergency Medical Technicians

 

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC6802990/pdf/tsaco-2019-000376.pdf

 

 2019年に発表されたREBOAに関するACSCOTの声明.

 基本的にREBOAに関する有効性を示すエビデンスがないことと,REBOAはあくまで一時的止血であること(当たり前),合併症が増え得ることなどが示され,自分で決定的止血を図ることができる外科医もしくはIVR医によってなされるべきとされている.

 また,病院前REBOAは推奨しないと明記されている.

 

------------------------------------------------------------------------------------------------------------

 

 今回のstatementはREBOA推奨派にとってかなり厳しい内容となった.

 症例報告ベースでは有効例があるのは確かだが,実際はその背景に数多くの非有効例/合併症例が潜んでいると言うことなのだろう.

 直接圧迫できない部位での体幹部出血症例であるとか,あるいは穿通性外傷症例とか,ある程度対象症例を絞ったprotocolizeを進める必要がありそうだ.

 外科医かIVR医以外は入れるべきではない,というのも軽く衝撃的.本邦でも言われているが,REBOA挿入後に迅速に根治的止血を得る方向に持っていくことが大事なのだろう.

 とは言え,救急外来当直をしている内科系医師の大半は,体幹部出血性ショックに対しREBOAに頼らざるを得ないはず.外科医の多くはCTを撮らないと相談に乗ってくれないから,CTまでの繋ぎにREBOAを入れることもあるだろう.救急隊は重症な症例ほど近隣医療機関に搬入して安心したいだろうし,それに応えるべく頑張って応需した医師も,大半はなす術なくREBOAに縋るしかなくなるsituationは容易に想像がつく.外科医やIVR医であっても,救急外来でREBOAをblind挿入できても,開胸大動脈遮断や開腹ダメージコントロール手術が施行できる環境にはない医師が大半だろう.

 

 REBOAを突き詰めていくと,行き着くところはこの国の外傷センター構想につながるのかもしれない.