少年が男になる頃には

もう手遅れだった。

 

焦り、妬み、恐怖、不安

全ての負の感情が男を包む。

 

お金を求めたからこそ

お金から遠のいた。

 

 

男に残ったのは

『少しの期待』と『大きな後悔』

 

 

今まで何を求めて生きてきたんだろう。

 

 

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少年の家は裕福じゃなかった。

 

かといって貧しくもなかった。

少年が知る限りは

 

ゲームを買ってもらえなかったことはないし、

旅行も数年に一回行っていた。

 

少年は貧しいと感じたことはなかったし、

裕福な友達を羨むこともなかった。

 

 

他人は他人、自分は自分。

 

言い聞かせていたわけじゃなく、

本当にそう思っていた。

 

裕福になりたいと思ったことはあったが、

それでどう変わるのかはわからなかった。

 

ただ、『お金』というものが大切だということは

なんとなくわかっていた。

 

 

『お金』があれば生きていけるということも知っていたし、

あればあるだけ楽ができるということを知っていた。

 

少年の将来の夢は【のんびりすること】だった。

 

どんな風に人生を歩もうか

色々な想像を膨らませて

夢を描いていた。

 

だがその頃にすでに

普通に生きていればのんびりできないことが

気づいていたのかもしれない。

 

 

 

 

少年が青年になる頃、

『いま』どう生きるのか

それだけを考えていた。

 

それでもお金が大切だということは変わらなかった。

どうすれば『いま』お金が手に入るか

 

目標がないまま

『いま』のお金をどうすれば増やせるか

それだけを考えていた。

 

青年は焦っていた。

 

少年の頃

遠い未来だと思っていたことが

そう遠くない未来まで近づいていたのだ。

 

 

青年の頭の中に

将来お金持ちになるという夢は

もうなかった。

 

少し現実を見てしまったのかもしれない。

 

いや、正確には

大人の見ている現実を

自分の将来だと無意識に考えてしまっていた。

 

その大人たちの現実が偽りの未来。

大人たちの虚像だと知らずに。

 

 

 

 

青年が男になる頃にはもう、

お金持ちにはなれないと悟った。

 

自分には才能がなかったのだと

無理に言い聞かせていた。

 

 

青年の頃の友人は何人か

『お金持ち』

になっていた。

 

あの頃は差がなかったのに

どこで差がついたのか。

 

男の心は後悔に包まれていた。

 

自分は朝から夜まで働いているのに

『お金持ち』の友人は

出張と言って旅行ばかり行っている。

 

 

男はふと

小さい頃の夢を思い出していた。

 

【のんびりすること】

 

男は『お金持ち』に対して

妬みの気持ちを抱くようになった。

 

羨ましい気持ちを誤魔化すために。

自分の生きてきた道を正当化するために。

 

他人は他人、自分は自分。

少年の頃の気持ちはもうない。

 

あの頃が懐かしい。

 

 

どんな道を通れば

『お金持ち』

になれたんだろう。

 

そもそも道なんてなかったのかな。

今まで何を求めて生きてきたんだろう。