文豪を楽しむ/時を超え、あの時代に—歴史・時代小説

[掲載]2007年10月26日朝刊

 読みたかったのに読み通せなかった世界の文豪の代表作——。なじみにくかったあの本を苦い思い出にしてしまう前に、次々と生まれている新翻訳を手にとってみませんか。「翻訳新世紀」といってもいいぐらい、魅力たっぷりです。とっておきの物語の新訳を紹介します。

 第2特集では、秋の夜長にじっくり味わう歴史・時代小説をご案内します。夜空の月を楽しみながら、時を超えて、想像力の翼を伸ばしてみませんか。


◆第1特集 翻訳新世紀—新訳で文豪を楽しむ

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「カラマーゾフ万歳!」の心、世界へ 亀山郁夫さん
 世界文学の最高峰と目されるドストエフスキー最後の作品『カラマーゾフの兄弟』——。物語は、ロシアのとある田舎町を舞台に、カラマーゾフ家の主人フョードルを殺した犯人はだれか、の謎とき………[記事全文]
[評者]亀山郁夫さん(東京外国語大学長)
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『白鯨』メルヴィル 原文に忠実、表現力も富む 巽孝之さん
 いまや世界的な文豪と目される19世紀アメリカ作家ハーマン・メルヴィル(1819~91年)には、さまざまな顔がある。自らの航海体験を生かした初期の海洋冒険小説『タイピー』から、ニュ………[記事全文]
[評者]巽孝之さん(慶応大教授)
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『ロリータ』ナボコフ 話し言葉、「キモいのよ」に 沼野充義さん
 ロシア出身の作家、ウラジーミル・ナボコフの『ロリータ』は、いまでこそ20世紀世界文学の最高傑作の一つと認められているけれども、半世紀以上前、原著が英語で出版された当初は、ポルノ………[記事全文]
[評者]沼野充義さん(東京大教授)
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『赤と黒』スタンダール さらに滑らかに、前へ前へ 堀江敏幸さん
 スタンダールの傑作『赤と黒』の新訳出来(しゅったい)は、フランス文学のみならず、翻訳小説の世界においても大きな事件だと言えるだろう。いまもなお読みつがれている桑原武夫・生島遼一訳………[記事全文]
[評者]堀江敏幸さん(作家・早稲田大教授)
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『変身』カフカ 「オリジナル」に迫る試み 奥泉光さん
 カフカの『変身』をはじめて読んだのは高校一年生のときで、新潮文庫の高橋義孝訳だったと思う。その後、幾度も読む機会があって、考えてみると、自分が最も多くの回数読んだ海外小説は『変身………[記事全文]
[評者]奥泉光さん(作家)
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『ドン・キホーテ』セルバンテス 集大成の訳と、成長中の訳 野谷文昭さん
 『ドン・キホーテ』は成長し続けている。それは翻訳にも当てはまる。翻訳されるとき、時代によって世界的に変化する読みが訳文に反映するからだ。なかでも決定的だったのがロマン派の読みで、………[記事全文]
[評者]野谷文昭さん(早稲田大教授)
表紙画像
ここ10年、新訳次々 海外研究が進展、村上春樹でブーム本格化
 この10年、文学史上に名を残す古典の新訳が続いている。海外文化研究の進展とともに、戦後に相次いで刊行された翻訳が古びてきたことも背景にある。さきがけの一つは、鈴木道彦訳のプルース………[記事全文]
[評者]加藤修

◆第2特集 時を超え、あの時代に—歴史・時代小説

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敗者の悲しみの文学 世界でも類のないジャンル 川本三郎さん
 時代小説の魅力のひとつは、主人公が不自由であることではないか。身分社会の厳しい制約のなかにあって、彼らは現代人のように自由に生きることは出来ない。身分という大きな壁がある。上下の………[記事全文]
[評者]川本三郎さん(評論家)
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国家語る政治家の必読書 野口武彦さん
 大佛次郎『赤穂浪士』は1927年の作。忠臣蔵物時代小説の先駆けであるだけでなく、いまだに最高峰といえる。誰でも知っている史実に「次に何が起こるか」の期待を持たせる手腕は抜群。講談………[記事全文]
[評者]野口武彦さん(文芸評論家)
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江戸時代観、ぐっと拡がる 田中優子さん
 隆慶一郎の『吉原御免状』は江戸時代の再評価が始まった1986年に出た作品で、当時はここまで遊廓(ゆうかく)と遊女を正確で具体的に描いたものはなかった。主人公の誠一郎が吉原に入って………[記事全文]
[評者]田中優子さん(法政大教授)
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噺に使いたいヒントもらう 立川談四楼さん
 入門と同時に師匠の談志が言いました。「吉川英治の『新・平家物語』と『三国志』を読め。読まないと弟子として認めない」こりゃ大変だとばかりに読み始めたのですが、どちらも大部、てこずり………[記事全文]
[評者]立川談四楼さん(落語家)


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