ぼくたちの小説 1
吾輩は玉子焼きである。
名前はまだない。
今朝「お母さん」なる者の手によって生まれた。
味付けは塩味のきいた関西風である。牛乳が混ざっているせいで、少し色白である。
更に間にチーズが挟んであるので、ちょい臭い。
そして極め付けに、頭からケチャップをかけられた。
ナンセンスである。
吾輩はその後、三等分に切断されて、この家の家族それぞれの弁当箱に詰め込まれた。
まずは、小学一年生の女の子゛マーコ″の弁当箱。
柄はディズニー。ねずみの柄の弁当箱に入れられるなんて、吾輩としては何だか落ち着かん。
次に、中学一年生の男の子゛ヒロ″の弁当箱。
柄は唐獅子牡丹。吾輩は不安を隠せない。
そして最後はお父さんの゛ポン・ポロッチ″イタリア人である。
吾輩の味付けはこのチョイ悪オヤジのせいであった。
これからこの゛ポン・ポロッチ家″と吾輩との不安な一日が始まろうとしている。