欧州連合首脳会議(EUサミット)の結果 | 外為FX外銀マンのブログ

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週末がやってまいりました!FXトレーダーの皆さん、1週間お疲れ様でした。
個人的には、先週は極めてトレードしにくい一週間でしたので、リスクを控えめにしました。


さて、今日は12月8日-9日を通じて開催された欧州連合首脳会議(EUサミット)の合意内容について、考察を書きます。


まあ考察と言っても、すでに市場が評価を下しているようですが・・・。
ちなみに足元の為替レートは以下のとおりです。


ドル/円:77.50台
ユーロ/円:103.70台
豪ドル/円:79.20台
ユーロ/ドル:1.3370台




結論から言うと、結局今回もドイツとフランスなどによる時間稼ぎとなりました。本質的な解決には程遠いです。


今回のEUサミットで求められていたのは、市場の予想を上回る規模の流動性(つまり資金)の提供です。
提供する相手はもちろんギリシャ、ポルトガル、スペイン、ベルギー、イタリア、フランスなどの財政不安国です。


そのためにも、欧州中央銀行(ECB)による、これら財政不安国の国債購入という禁じ手が期待されていました。


ECBが国債買い入れにより資金を提供し、これらの国が財政規律の強化を進める手助けをしなければいけなかったのです。


ではなぜそもそもECBの国債買い入れは「禁じ手」なのでしょうか?


ECBのミッション・目的は、欧州圏のインフレ率のコントロールです。そして、ECBはこの目的を達成するためであれば必要なことはなんでもやります。


ただし逆の見方をすれば、ECBは財政不安にあえぐ国を助けるといったことには何の責任も有していないのです。


むしろ実態はその逆で、ECBがユーロ圏諸国の国債をむやみやたらに買い入れる行為は、EU法に抵触します。


この結果、ECBは頑ななまでに流動性の供給に否定的なのです。


以上は周知の事実であり、ECBは自身の役割をわきまえ、財政不安国の国債買い入れに積極的でないということは既に分かっていました。


ECBによる国債買い入れを増量するためには、まずはユーロ圏の宗主国であるドイツがそれに賛成しなければいけません。


しかし、インフレ率が安定しており、経済ファンダメンタルズも財政収支も健全なドイツは、事態の深刻さをまったく理解していません。


ドイツは、今回の危機が単純に財政不安国の放漫財政による問題だと受け止めています。


この危機が世界に与える影響を過小評価し、ユーロ解体の危機に瀕していることなど、まったく理解していません。


この状況に対する市場の警鐘が、11月23日のドイツ10年物国債の札割れでした。


札割れとは、国が当初国債の発行により集めようとした資金が集まらなかったということです。


応札率は60%程度。つまりドイツは集めようとした資金の60%しか集め切れなかったのです。


これを受け、ドイツはようやく「欧州債務危機は、一部の財政不安国の問題ではなく、財政統合なき通貨統合という制度そのものに疑義がかけられている事態である」ということに気づいた・・・かのように見えました。


しかし、今回も結果は無残でした。


流動性の供給はIMF、その流れを汲むESM(欧州版IMF、未設立)、果ては中国のポケットマネーと、あくまで一時的にユーロ圏外諸国の力を借りてこの問題を乗り切ろうとしています。


これらの基金は全て資金供給額に限度があります。


ECBの無制限な国債の買い入れを認め、財政不安国の財政規律の強化を助けるという目的は、今回も果たせずじまいです。




財政規律の強化に関する合意内容は、かなり厳しいものです。


現在不安を抱える国は、相当な支援なくしてはこの財政改革を乗り切ることが出来ません。


これに対する市場の反応を予想すると、おそらく年内は財政規律強化案を好感してリスク・オンが続きますが、年明け意向はまたリスク・オフに走ると思います。


2011年に見られたように、市場は財政不安国の体力を試しに行くでしょう。


財政不安国の利回りが上昇し、リスク資産は下落すると思います。


そして、財政強化のために国内経済を犠牲にするこれらの財政不安国は一層の窮地に立たされます。


また2011年の繰り返しですね。笑


だから、財政不安国の国債利回りを一定の水準でコントロールできるよう、ECBによる無制限の国債買い入れが必要なのです。


うーん、ユーロ解体の可能性が上がったような気がします。


以上。