#10

 

 

そのような移動が可能なのは

暗殺者たちが使う移動道具である鉤縄

その中でも樹新(じゅしん)政府のくノ一たちが使う

導千流の鉤縄のおかげだ。

 

他の暗殺者たちが使う鉤縄は主に鉄製の掛け具に

紐を付けただけなのに対し

樹新のくノ一たちは特殊に製作した

伸縮性に優れた紐に鎖を連結し

それを再び体の各部に連結して

より安定的に釣り合いを取りながらも

紐の弾性を利用して力を節約することができた。

さらに、他の暗殺者たちが鉤縄をただ高いところに登る時のみ使う反面

樹新のくノ一たちは独自の剣法と組み合わせて戦闘にも利用した。

 

それで、ある者はその特殊な鉤縄の有無で樹新のくノ一たちを判別し

ある者は彼女たちを「線の暗殺者」と呼んだりもした。

 

四姉妹たちはそれぞれ修練等級によって受けた

白、青、赤、藍色の鉤縄で滑空していたが

末っ子の鈴来が投げる白い鉤縄の線は

今や曲がって見えるほど遅くなっていた。 

 

「もう無理だよ、シューちゃん!無理!無理!」

 

末っ子の叫びに

先頭で走っていた長女美霊が叫んだ。

十五歳の美霊は姉妹の中で常に隊長役を演じていた。 

 

「朱里、鈴来は私が連れて行く。渓谷まで朱葉を頼む!」

 

「うん!木々が湿っているから気をつけてね!お姉ちゃん!」

 

次女朱里の返事が返ってくる前に、長女の美霊は

自分の前に走ってくる巨木を蹴飛ばし、逆方向に身を投げ出した。

後を追っていた朱里と三女の朱葉を逆行しながら飛び越える様子だった。

美霊がかすめながら起こした風圧が朱里と朱葉の髪の毛を揺らした。

美霊の体は首から肩、腰、お尻、足まで順に反らしながら飛んでいったが

短い瞬間あまりにも流麗に描かれた曲線は魚の方向転換を思い出させた。

 

一気に二人を飛び越え、末っ子のそばに行った美霊は

末っ子の鈴来の腰を抱えて再び前に飛び出した。

それを見守っていた朱葉はたった一度の跳躍だけで

ほぼ四丈(約12メートル)を飛んだ姉に驚きながら

 

「一体、反動と時の感覚をどれだけ鍛えれば、あんなにできるの?」

 

と独り言を言った。朱里はまたその独り言をどうやって聞いたのか 

 

「お姉さんの感覚は鍛錬で作ったものじゃない。

ただ天才に生まれただけだ。」

と短く答えた。 

その間、少女たちはさまざまな根のある植物や

特にキノコ類がいっぱいある谷の陰に到着した。

 

 

 

 

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