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マーくんの、車いす旅にっき

いままで訪れたところを紹介しながら、感じたことを気楽に書いていきます。
不定期更新になりますが、よろしくお願いします。

円錐形の美しい富士山がとても好きな私は、

毎年一度はその姿を拝みに行きます。



季節ごとにおもむきの異なる表情で楽しませてくれるのですが、

何といっても紅葉の秋と桜のこの季節が一番。

なかでも裾野までキレイに見える雄大な富士山と

桜との素晴らしいコラボを見せてくれるのが春の河口湖です。


産屋ヶ崎や河口湖北岸の桜並木を、

湖面からのちょっと冷たい風と柔らかな

陽光にあたりながら車いすで散策していると、

気分はもう爽快。


桜と富士1

桜越しの雪が残る富士山にきらめく湖面を目の前にすれば、

贅沢な春を独り占めしているような、

いつまででも眺めていたくなる絶景に、

時が止まったかの感覚さえ抱かせてくれます。


そんな豊かな気持ちになれるせいなのか、

別にストレスがあるわけではありませんけど、

訪れるたびにリフレッシュし、

そういう時間を持てる喜びと環境に感謝し、

富士山にしぜんと手を合わせたくなる心境になります。


桜と富士3

また、どこを向いても絶好の撮影ポイントなので、

高級なカメラを片手にお気に入りのアングルを見つけては、

真剣にシャッターを切る人たちがたくさんいました。


ただ問題は訪れるタイミングで、何度か足を運んでいても、

お天気と桜のちょうどよい時季に恵まれたのは一度しかありません。



春は曇りがちな日が多く、晴天の朝でも、

現地に着くころには雲が出はじめて、たちまち隠れてしまったり、

桜の開花も年によって前後するので、

富士山は見られても散りかけのときもあれば、満

開なのに富士山はまったく見えないときもあったりして、

まさに時の運です。


視覚で春を満喫したあとは、ドライブがてら道の駅に寄って、

フキノトウやタラの芽、ワラビなどの山菜を食したり、

駿河湾の漁港まで足を伸ばしては、

旬の桜エビや地魚で春の味覚も楽しみましたし、


桜エビ

時間に余裕があるときは、

相模湾で捕れる生シラスを目当てに

湘南までドライブしたこともありました。

「あなたの趣味は…?」ときかれると、

真っ先に旅行と答えています。



車いすを漕ぐことさえ自分ではできず、

食事やトイレ、入浴など、生活すべてにわたって

誰かに世話してもらわないと何もできない私ですが、

多くの仲間に恵まれたおかげで、

新たな出会いと刺激と感動が得られる旅行が、

いつの間にか一番の趣味になっていました。


今回は、日本での思い出にもちょっとふれてみたいと思います。

桜前線が日本列島を北上しているこの季節、いつも思い出すのが、

10人ほどの仲間で行った東北の旅。10年ほど前になりますね。



仲間の知人を訪ねまわるのと宿泊のほかは、

ノープランに近く、行く先々で次の行動を決めるという

気ままさがまた良かったのでしょうか、

桜前線を追っていったわけではありませんが、

結果的に東北の桜巡りをすることになりました。


車2台で東北道を一気に盛岡まで行ってから、山形のかみのやま温泉、

仙台、猪苗代をまわりながら南下していくというコース。



五分咲きもあれば、満開または散りはじめたところもあったり、

山裾にも淡いピンク色がポン、ポン、ポンと見えたりして、

桜前線を感じることができましたし、

ちょっと注意して車窓を眺めていると、

春を告げる花々も目を楽しませてくれましたね。

鶴ヶ城3

磐越道で最後の目的地、会津若松へ行ったときのこと、

「今、鶴ヶ城の桜が最高です」と地元の知人から聞いた

私たち一行は鶴ヶ城を目指しました。

到着してびっくり、まるで私たちを待っていたかのように

少しも散らずに満開の状態で出迎えてくれたのです。



「鶴ヶ城公園」として日本さくら名所100選に

選ばれていたことも知らなかったので、

駐車場からその見事さに魅了されたのですが、

圧巻はやはり園内に入ってからで、

い尽くさんばかりの数の桜があり、

青空の下、桜越しに見上げる天守閣は、

「これぞ、日本!」と言いたくなるくらいの姿で、

麗しき日本の春を見せてくれました。

鶴ヶ城1

何ら予備知識もなく、偶然にも期待以上の素晴らしい

体験をしたときの感動は、サプライズ的な要素によって、

日常にはなかなかない無上の幸福感に包まれるものがありますが、

鶴ヶ城での喜びはその意外性によるところが大きかったように思います。



またお天気も味方してくれて、

この日はときおり雨も降る変わりやすい天候でしたが、

鶴ヶ城を訪れたときだけ陽も射して青空が広がりました。

1時間ほどお花見を満喫して戻ってくるころには、サーッと雲が出てきて、

さっきまでの晴天がウソのようなあやしい空模様になったのです。


そのあと、何か美味しいものを食べようという話になり、

帰りの東北道ではなく、反対方向の新潟へ向けて走りだして間もなく、

ポツリポツリときてしまいました。


新潟の寿司

途中どしゃ降りに遭ったものの、新潟港に着いたときには上がっていて、

通りかがりの人から教えてもらった寿司屋さんへ行くと、
近海で捕れた魚介類のお寿司が出てきて、

遠くまで足を伸ばした甲斐があるほどの美味しさに感動し、

この大満足の旅を締めくくりました。


食事や見学、トイレ休憩のたびに、
何度も乗り降りを繰り返すことになりましたが、

仲間のサポートにより何不自由なく一緒に行動できたことは、

本当にありがたく、満開の桜を見る以上に嬉しさと感謝でいっぱいでした。

体の順応性というものは不思議ですね。



マイナス18℃を普通に体験したら、

防寒していても数分と耐えきれないはずなのに、

夜のマイナス30℃の極寒を経験してきた体は、

3日目あたりから昼間のマイナス18℃が、

何となく暖かく感じられるようになっていました。



風もなく穏やかなお天気に恵まれたこともあって、

日中は街のレストランで昼食を済ませたり、

地元のスーパーにも行ったりして、

イエローナイフの散策を楽しみました。

イエローナイフ3

あるレストランに入ったとき、

トナカイとジャコウウシの肉のメニューに目が止まり、

試しに食してみようと、男三人で興味本位に頼んでみたのです。

肉質はとても固く、独特のニオイもあって、

お世辞にも美味しいと言える代物ではありませんでしたが、

ここでしか食べられないものに出会えるのも旅の一興でしょう。


また、中心地では歩道を行き交う人たちもけっこう見受けられ、

そのほとんどは厚手の毛皮コートにくるまれていたのですが、

中には寒さ知らずというか、

短めの毛皮コートにスカートで闊歩する若い女性もいまして、

地元の人はスゴイなぁと思いながら、見ている方が寒くなりそうでした。


車いすの移動については、オーロラ観賞のときだけは、

足元の悪いところを行くわけですから、

二人の友人はかなり苦労したと思いますが、

それ以外は思いのほか過ごしやすい環境でした。

ホテルは快適でしたし、外出したときも、

多少の段差や雪によるデコボコはありましたけれど、

スリップして移動しにくいということはありませんでした。


ただ、マイナス18℃の世界ですから、

素手で車いすにさわらないようにと注意されました。

ステンレスとアルミでできるため、直接さわったら、

凍傷になる危険があるからです。


昼間の過ごし方に、いくつかのオプショナル・ツアーがありまして、

その中から犬ぞり体験ツアーに参加してみました。



オーロラと同様、以前からテレビなどを見ては興味を持っていたものの、

体験できるとは思ってもいませんでしたから、

犬ぞりを目の前にしたときには少し興奮しました。


イエローナイフ4

4~5人乗りのそりの先頭に乗せられ、

スタンバイしていた15~6頭のハスキー犬が一斉に走り出すと、

一気に犬ぞりの世界へ。



雪道をしばらく行ったら、いきなり森の中へ突入し、

木々の間を駆け抜けているかと思えば、

今度は真っ白な平原に出て、アップダウンのある雪原を疾走。



ちょうどスノーモービルに乗ったときのような体感で、

風を切る冷たさも半端なく、手足は冷え、

まつげや眉毛も白くなりはじめるのですが、

そりから伝わってくる激しい振動とともに、

青空の下で極寒の大自然の中を走り抜ける爽快感は、最高でした。

夜の9時、オーロラ観賞のため、

宿泊のホテルからバスに乗り込んだ私たちは、

真っ暗な道を行くこと40分あまり、

街明かりがまったく届かない山中に着きました。



あたりは暗闇で、しかも足元の悪い中を、

友人に背負われながら進んでいくと、一つのテントに。薪ストーブがあり、

温かな飲み物も用意されていたテントの中はとても暖かく、

オーロラが出るまではここで待機するよう言われましたが、

タイミングが良かったのか、ひと息入れて間のなく、

オーロラが出てきたとの案内があったのです。


同じツアーの人とともに外へ出てみたら、

裏手の森からサーチライトのように上へ伸びる青白い光が見えました。

テントから洩れる明かり程度で、外は本当に暗く、

その暗がりの踏み固められた雪道を車いすでなんとか行けば、

小高い丘でしょうか、

満天の星空が見渡せるようなひらけたところに出たのです。



目の前は広大な平原のように視界をさえぎるものがなく広がっていて、

その向こうには山のシルエットが見え、

月明かりも雲もない最高の条件が整っていました。

オーロラ2

ふっと気づけば、青白かった光は黄緑色に発光する帯となって、

風に揺れているがごとく、絶えずその身をくねらせながら、

向こうの山の先までグングンと伸びていき、

そして、しだいに一本から二本、二本から三本と増え、

またたく間に夜空を覆い尽くすほどの数のオーロラが出現したのです。



それはそれは、言葉にしがたい光景で、

唖然としてオーロラを見上げていた私は、宇宙空間に放り出され、

あたかも美しい天上の調べにのって踊っている

光に包まれているかの不思議な感覚になり、

この時ほど宇宙を身近に感じたことはありませんでしたが、

それ以上に、ここまで来られた感謝の気持ちと、

手を合わせたくなるほどの幸福感に満たされました。


観測率が高いイエローナイフといえど、必ず見られるとは限りませんし、

出現してもその形や大きさ、発光具合などが日々違うそうで、

気象条件しだいではまったく見えないことがあります。

幸い、滞在中3日間とも見れたのですが、

規模も大きく、素晴らしいオーロラを目にできたのは2日目でした。

オーロラ1

寒さも忘れて、見事な宇宙からの贈り物を見入っていた私でしたが、

カイロを何枚も足先や腰に張って防寒対策を万全にしてきても、

さすがにマイナス30℃を下回る厳しさでは、

20分くらいで身体の芯から冷えてしまい、

暖を取るためにテントへ引き返しました。

その後は帰る時間まで、外との出入りの繰り返しでしたけれど、

オーロラは少しも衰えることなく、私たちを魅了しつづけてくれました。


また、オーロラ観賞に浸りながらも、

暗闇に慣れてきた視力で周囲を見渡してみると、

個人の特定までは声を聞かなければ無理ですが、

意外にも近くにいる人たちのシルエットははっきりと認識でき、

さらに驚いたのが、満天の星とオーロラのごく弱い光だけでも、

自分の影が足元にうっすら映っていたことです。

月影は何度も見ていますが、星影、

ましてやオーロラの影まで見られるとは想像してませんでした。

エドモントンで乗り継いで、

イエローナイフに到着したときには、すでに夜になってました。

窓から外を見たら、すでにバスが来てました。



ボーディングブリッジがないところでも、車いすの場合、

機体の高さまで昇降可能なバスに

直接乗り降りするのがほとんどですが、

この時は、久々にタラップを降りていくしかありません。

友人に背負われた私は、機内から一歩出て、深呼吸したとたん、

一気に肺まで冷たくなる感覚に驚きました。



ナイアガラも寒かったというのに、

あと400kmも北上すれば北極圏という極北の地らしく、

イエローナイフの寒さは半端ではありませんでしたね。


到着ロビーにツアー客が集合すると、

ここは日本かと思わせるくらい、日本人観光客ばかり。

現地ガイドも日本の方で、話によれば、

わざわざ寒い思いしてまで訪れるのは日本人くらいで、

欧米の人たちはオーロラにあまり関心がないとのこと。

トロントで不思議がられたカナダ人の反応もうなずけました。



ターミナルから出て外気温にびっくり、マイナス27℃。

これまで経験したことがない気温に、

迎えに来たバスに飛び乗ったのを覚えてます。

イエローナイフ1

ホテルに着いて、まず案内されたのが

滞在中に着るための防寒着でした。

今回のために山岳専用の防寒着を揃えてきたつもりでしたが、

それだけでは到底耐えきれない寒さなので、

毛皮で作られた帽子、つなぎ、手袋、長靴の一式を借りまして、

外出の際は厚手のセーターやズボンの上から、

それを着るよう言われました。



翌日、その意味がすぐ理解できました。

間でもマイナス18℃だったのです。

どこも雪に覆われた真っ白な世界でしたけれど、

カフェやレストラン、ショッピングアーケードがあり、

車もかなり走ってましたから、

雪国というイメージより、やはり極寒の街でしたね。


市内観光に参加したとき、

ガイドから「極寒のイエローナイフあるある」を

いろいろと教えてもらえて、おもしろかったです。


イエローナイフ2

冷凍庫の中にいるような寒さのせいで、

雪も固く締まるため、ノーマルタイヤでも車は走れるとか、

ガソリンやオイルの凍結を防ぐように、

ンジンはかけっぱなしにしておくとか話してくれました。



また、日本では北アルプスなどの高山気候帯でしか見られない

ライチョウが、街角や軒下などあちこちにいましたね。