危機を克服して変容するか、それとも退行するか

 

新型コロナウイルスの感染によって世界中にゆらぎが起きています。

 

持続可能な文明への変容が起きています。

 

このままではやっていけないので変わらざるをえないのです。

 

 

1977年にノーベル賞を受賞したイリヤ・プリゴジンの散逸構造論(さんいつこうぞうろん)に「ゆらぎ」という重要な概念があります。

 

生命体のような有機的なシステムは外からエネルギーを取り入れて、外に排出(散逸)してシステムを維持、増殖しています。

 

ところがまわりのエネルギーの流れが変化して複雑になり、システムがエネルギーを吸収できなくなると内部に「ゆらぎ」が生じます。

 

ゆらぎはますます増大して、自己のシステムを破壊に導き、やがて新たなシステムを再構築するのです。

 

動物なのか植物なのかわからない粘菌という生物があります。

 

粘菌はエサを食べながら成長を続けますがエサがなくなると、四方から一つの中心に向かって集合体をつくります。

 

やがて2~3mmほどの長さのナメクジ状となって移動します。

 

それは一つの生命体のように見えますが一つ一つが独立したアメーバーの集合体なのです。

 

不思議なことに粘菌の集合体は情報を伝達する神経を持たなくとも一つの個体生物のような統率された行動を示します。

 

移動を止めると粘菌は尾の部分が茎状になって垂直に伸びて死に、頭の部分は胞子となって空中に飛び散ります。

 

そして胞子はあらたな繁殖地でふたたびアメーバ状となり生きて行くのです。

 

危機状況のアメーバの行動

https://www.youtube.com/watch?v=Ze3NjbE7kQI&feature=share&fbclid=IwAR1EuwvB5Au9wHAWC18NtFsVBMOpsoed1SPF6q4Mr4uG00pdy3ZYxH8XzYk

 

この粘菌のように生命も環境に適応しながら自己増殖をして生命を維持しようとしていきます。

 

病気や失敗など人生の問題を機会にスピリチュアルな洞察が訪れた人の話はしばしば聴いた事があると思います。

 

破局に直面すると生命はゆらぎを創り出し、自己を超越して、より新しい秩序に向って進化させていきます。

 

ゆらぎが起きているときは古い自我を脱ぎ捨てる自己超越が起きる最大のチャンスなのです。

 

生命や社会システムは散逸構造をしており、危機に直面すればその形態を変えダイナミックに進化してゆくことができます。

 

使い捨ての大量消費を続けるなら必ず地球の資源は食いつぶされ、残った廃棄物で私たちの生活が破綻するのはもはや時間の問題といわれていました。

 

しかし膨大な環境コストのかかる消費生活を私たちは手放すことはしてきませんでした。

 

地球と環境との関係性を見失い環境破壊を続けてきました。

 

「人間は自然よりも優れており、それを支配する存在である」として人間以外の生命は人間の利益のために使用する「道具である」とみなす価値観を持っていました。

 

命に対する尊重はなく命を物として扱う人間中心主義の考えが深く頭に刻み込まれています。

 

そのため人間は地球上の全生命を脅かす存在となっています。

 

多数の生物を絶滅させて全体のバランスを崩し自らも滅びようとしているようです。

 

人口爆発と生物種の絶滅

https://www.facebook.com/prayas.shimizu/media_set?set=a.3148635598532345&type=3

 

冨の偏った配分や硬直化した文化、

市民の公平な権利を守らない役人、

宗教民族の対立、人種への差別偏見

環境よりも自分たちの既得権益を擁護する人々が権力を握っている社会、

腐敗した政治による現代社会は明らかに持続不可能です。

 

いままでの社会形態を崩壊させ価値観、世界観を根本的に変える時期に来ています。

 

私たちにはゆらぎを創りだし古い自我を超えてよりダイナミックに自己を成長させようとする衝動があります。

 

苦悩が起きている状況とは自分の器を大きく変えなくてはいけない事態です。

 

古い自我では環境の変化に対応出来ないので新しい自我に変わらざるをえません。

 

新しい自我に脱皮する為には抑圧して来た自我の影を自覚する必要があります。

 

そうしてさなぎから蝶に脱皮して自由に飛び回るのです。

 

古い自我を超えようとする時には分離していた影との境界で激しい葛藤が起きます。

 

ほとんどの人は自分の触れたくない感情がでてくることには抵抗があります。

 

その新たな展開に恐れをいだき自分自身との直面をさけ古い自我にしがみつき現状維持をはかろうとします。

 

精神的混乱が続くと自我は病的退行の段階に至ります。

 

現実と非現実の境界がゆらぎ、不安定になります。

 

自身の暗黒面を直面できないため一体何が起きているのか把握できず強い不安と恐怖にさらされます。

 

無意識から沸き上がる否定的なエネルギーに巻き込まれて混乱したまま自己を喪失して退行してしまいます。

 

意識の成長は母親から離される分離、子どもの自我が死に成人した自我を身につける移行、共同体の仲間入りをはたす統合のプロセスをたどります。

 

人間は物質的な欲望に振り回されて地球環境を脅かしています。

 

意識の発達段階で病的で偏狭な自我をまとってしまい、自己中心的な行動をとり、他の生物を滅ぼし、資源を食いつくし、廃棄物を撒き散らかしています。

 

稚拙な技術で原子力が扱えると思い込んでいます。

 

地球環境に責任を持ち、他の生物を尊重する大人には未だなっていません。

 

大人になるには今までの自我が死にあたらしい自我が再生される成人式のイニシエーションを経過しなければなりません。

 

現代社会は明らかに持続不可能なので、私たちの社会が新しい社会に移行するには退行か成長の二つの道があります。

 

一つは環境が悪化し崩壊に向かっているにもかかわらず、権力を握っている体制側が新たな展開に恐れをいだき既得権益を守りがたいためにあらゆる手はずを使って現状維持をはかろうとします。

 

人々は偽りの価値にしがみつき、体制を変えようとはせず情報操作された社会の中で夢想と忘却の日々をいたずらに過ごします。

 

物事が緩慢に進んで何の変化もないように見えても、システムのゆらぎが臨界値を超えると、予期せぬ変化が急激に起きるのが崩壊のプロセスです。

 

硬直した保守体制はやってきた環境悪化に対応できず社会秩序は崩壊に向かいます。

 

憎しみや復讐の感情が制御不能な暴力となって対立が世界中に吹き荒れます。

 

人々は堪え難いストレスに苛まれます。

 

もう一つは、ゆらぎが個人の内面に起きて意識のマトリックスの転換が進み、自分の思考を自覚することができる観照の眼を持った人々が増え続けて、加速がつきます。

 

ついに社会を変えることができる人数の臨界値を超えてしまいます。

 

環境保護や他者との相互信頼を大切にする企業や政治家が支持され対策が講じられるようになります。

 

大勢の人々が真の宗教性をもつようになって組織宗教はみな力を失い宗教の対立は消滅していきます。

 

人々は自分の内部にある心理的葛藤を外部に向かって行動表現しなくなり、信頼を築き、尊敬する関係が生まれます。

 

奪い合うのではなく相互に分かち合い助け合うようになります。

 

無意識の領域の自覚が進み命のネットワークが実感され人種民族の違いに寛容になります。

 

物質的価値よりも人との関係性や心の充実が価値を持つようになります。

 

統合型の人間が増え社会が成熟すれば裁判所、警察、軍隊、政府と国家は必要がなくなり、国境線は消えます。

 

軍隊は武器をスコップに替え災害救助隊に変容します。

 

富の再配分がおこなわれ、軍事予算のすべては貧困、農業、循環する自然再生エネルギーの開発費にまわされます。

 

地球は持続可能な状態に落ち着きます。

 

資源を食いつぶす現代の競争社会はこのままではいずれ消え去る運命にあります。

 

地球環境の問題をかかえた人類はこのまま欲望に振り回されて破局をむかえて自滅するのか、

 

真実を自覚できた人々が増えて統合型の成熟した社会にジャンプするのか。

 

その鍵は私たち一人一人の覚醒にかかっているといえるでしょう。