今の物理学や宇宙論の考え方によると、私たちの住む宇宙は、突然何もないところから生まれたといっています。

無とはまったくの空っぽなのではなく、粒子が生成消滅を繰り返し「非存在」と「存在」の間をゆらいでいる状態です。

ビックバンが始まる前は時間も空間も物質もエネルギーも何もなかったのです。

 

そこへ突然ゆらぎが起きてインフレーションと呼ばれる急激な膨張によって、私たちが住むことのできるような宇宙になったというのが現代科学の宇宙論です。

 

80年代から究極の粒子は振動するヒモだとするスーパーストリング理論(ひも理論)が注目を集めて来ました。

85年にそれまで問題とされてきた数学的矛盾が解決されさらに95年にエドワード・ウィッテンによって5種類あったひも理論が統合されM理論が発表されるやいなや万物の理論として一躍、世界の脚光を浴びることになりました。

著作年代がばらばらな宇宙論ばかり10冊以上読むと明らかにM理論が出て来た95年以前と以降では内容が異なります。

昔は研究者が4次元以上の話をするのはおかしいと思われていました。今ではSF小説の題材が真面目に取り扱われています。いつのまにか機械的な宇宙の姿は消えてしまいました。

私たちの宇宙は3次元を超越した次元の一つの膜(ブレーン)に存在して、そして遥か大きく高い次元の空間の内部にあります。

私たちは高次元の宇宙にただよう小さな膜の中に閉じ込められて住んでいると説明されます。

ワームホールという空間の裂け目も考えられています。そしてすぐとなりには蒸気の泡のように多数の平行宇宙が存在しています。M理論では11次元の時空が考えられています。

泡の一つの内部で起きていることが膜(ブレーン)に映し出されます。膜(ブレーン)に映った影が私たちです。これが数学モデルによって導かれた説明なのです。

 

リサ・ランドール博士の宇宙理論によると私たちの宇宙は5次元時空に折りたたまれた膜に住んでいるといいます。3次元宇宙からは素粒子が消えたり何もないところから当然現れるように見えても5次元世界では最初から存在しているというわけです。

多次元理論はプラトンの洞窟の例えを思い起こさせます。

 

人間は子供のときからずっと手足も首も縛られままで、頭をうしろへ向ける事もなく、たいまつの明かりで動いている人形の影が映し出されている洞窟の壁ばかりを見て暮らしています。頭が固定された囚人状態で、後ろを振り向く事が出ないので影を本物だと信じて偽りの人生を過ごします。

 

映画マトリックスではほとんどの人間が仮想空間で生きていることを知らないまま死んでゆくと言う世界が描かれていました。

この物質世界は神によって作り出された幻影(マーヤ)であり絶えず移ろい変化し人の心を惑わすものとインド哲学は教えます。

「なぜなら、すべての世界は立ち去るからだ。すべての世界は立ち去り、ふたたび一戻る。時の夜の終わり、すべての物はわが
ふところへ帰る。新しい日が始まる時、私はすべての物をふたたび光の中へ投ずる」バカヴァッドギータ

 

ヨガの目的はこの仮想現実に同一化し巻き込まれている状態から本来の自己が目を覚ます事にあります。

 

神秘哲学の究極の目標は下降した物質界で囚人状態となっている魂を解放して、永遠の世界であるイデアという真実に目覚めることにありました。

 

私たちのマインドは3次元に投影された5次元の影を現実だと錯覚をして苦しみ異なる次元の間を輪廻しています。

仏教では輪廻転生から解脱することを悟りといっています。

 

それは永遠の命と一つになっている事です。自己の本質は永遠なので輪廻しないのです。映し出された実体のない影を真実の世界と思い込んでいるのが私たちのマインドです。

 

英語で宇宙のことを、万物、全体を意味するユニヴァース、あるいは秩序や調和を意味するコスモスと言います。

人間の本質は物質と心を超えているので、5次元を含めた多次元宇宙全体が自己なのです。

「人が無知に陥っているとき、
彼は現象を見て、神を見ない。
彼が神を見る時、
この宇宙は彼にとって完全に消え去る。」ヴィヴェーカナンダ