3つの「守る」力 | IT徒然草 (gaia)

3つの「守る」力

ここ最近のニュースで気になったのは「守る」力だ。3つほど挙げてみる。

1.「次世代DVDを守る」

次世代DVDの規格には「BD(ブルーレイディスク)」と「HD DVD」の二種類がある。「BD」はソニー&松下、「HD DVD」は東芝&NEC&三洋といった感じなので、どちらが優勢になるかは何となく想像できるものの、「HD DVD」のほうが相対的に低コストで生産できる余地があることや、DVDとのダブルフォーマット(1枚に2種類のフォーマットを乗せること)が可能という強みもあって、予断を許さない。

さてそんな中、バッファローからPC内蔵型の「HD DVD-ROMドライブ」が発売された。

■バッファロー、4万円を切る初のPC用内蔵型HD DVDドライブ(Impress PC Watch)
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2006/1206/buffalo1.htm

「へぇ、そうなんだぁ」と思って記事を読んでいた私の目を捉えたのは、「COPP」「HDCP」という聞きなれないキーワードだった。早速ググってみると、両方ともコンテンツ保護の技術らしい。

「COPP」はMicrosoftが開発した技術で、コンテンツ保護をするアプリケーションとGPU(グラフィック処理のチップ)の間で著作権保護情報をコントロールする仕組みとのこと。言い換えれば、暗号化されたコンテンツの情報をハッキングして、別のアプリケーションやデバイスに流さないような仕組みとも言えそうだ。

また、「HDCP」はPC~ディスプレイなどの外部表示デバイスの間で暗号化する技術だそうだ(Intelが開発)。普通の人ならそんなことはしないと思うが、海賊版を作ろうとする人はそういう信号をハッキングする可能性もあるだろう、ということだ。

現在のDVDでは、リッピング用のソフトを使うといとも簡単に複製ができてしまうが、次世代になるとこういった技術が活躍し、著作権が保護されていくことになるらしい。

実際はそういった暗号を解読するソフトが出回ったりしていたちごっこになるのかもしれないが、今までとはハードルの高さが違いそうな印象だ。

2.「アマチュア無線を守る」

「PLC」という言葉はご存知だろうか? 「電力線通信」と言ったほうが分かりやすいかもしれない。「Power Line Communications」の略。

室内では100Vの電源ケーブル、屋外では電力会社のケーブルを通して通信を行う技術で、数年前から特に松下が力を入れてきたが、その中でも「高速PLC」という技術を使った通信機器が10月に総務省から認可され、ここ最近関連製品が販売開始となってきた。

ところがこの技術、以前よりアマチュア無線愛好家を中心に問題視されてきたのだ。その理由は2MHz~30MHzの帯域を活用することや、電磁波が漏洩しやいといった特徴があるらしく、アマチュア無線(やそれ以外の通信)の妨害となる可能性がある、というもの。

私が今夏にたまたま「ハムフェア」というアマチュア無線の展示会に行った頃、こういった問題が強く主張されていることを知った。特に無線家による愛好家の団体「JARL」という代表組織までが、それまでの方針を翻して総務省寄りの判断をしたことが会員の憤りをかっていたらしい。

私は正直この技術についてはあまり明るくないので是非の判断はお任せするが、そんな中、アマチュア無線家たちが総務省に対して行政訴訟を行った。

■高速PLCの事業認可取消を求めてアマチュア無線家など115名が行政訴訟(Impress Internet Watch)
http://internet.watch.impress.co.jp/cda/news/2006/12/07/14171.html

私個人としてもアマチュア無線家の端くれだし、100Vの電力線でわざわざ通信するためにモデムを買ったりするかな、という気持ちもあって、メーカーにも無理矢理製品を突っ込んでほしくはない感じがする。有望なこういった技術をうまく活用し、アマチュア無線家の主張もうまく包含した形での決着を期待したいところだ。

ちなみにアマチュア無線で2MHz~30MHzというと、比較的遠距離通信(県外~海外など)が可能で指向性も弱いほうなので、こういった干渉問題がより重要視されるようだ。

3.「テレビ・映画を守る」

今年YouTubeを観た方も多いと思うが、かなりの確率でTV番組が登場する。海外コンテンツでも著作権に抵触するであろうと思われるものが多い。

そんな中、JASRACやTV局がYouTubeに対して行動を起こした。

■JASRACら23法人、YouTubeトップページに日本語による注意文の掲載など要請
動画投稿者の住所・氏名の登録や、著作権侵害アカウントの無効化も(Impress Internet Watch)
http://internet.watch.impress.co.jp/cda/news/2006/12/05/14134.html

YouTubeを観ているのは実は日本人が一番多いという統計もあり、業界団体にすればYouTubeの違法コンテンツは大きい問題だろう。また、日本は特に著作権に厳しいと言われることもあるが、逆に言えばそういう問題に対する先進国という言い方もできよう。

ただ、個人的にはもう少し寛容さがあっても良いような気もする。TVや映画を丸々アップするのはどうかと思うが、一定時間に限ってOKとするとか、著作権料の低減化をするとか、もう少しネット動画文化をバックアップする姿勢が見えても良いと思う。

今後はネット動画を自主制作する文化が開花するのではと予想する私だが、同時に、一度は自作コンテンツを作ってYouTubeにアップしてみたいとも思う。