1年後に携帯会社を変えますか? | IT徒然草 (gaia)

1年後に携帯会社を変えますか?

■ナンバーポータビリティーって?


ナンバーポータビリティー」という用語をご存知の方も多いだろう。電話会社を変えても、今まで使っていた電話番号が使えるという仕組みだ。和訳すれば「番号移植性」といったところだろうか。


遅くとも来年11月に携帯電話のナンバーポータビリティー(MNP)が実現しそうだ。12/21まで総務省がパブリックコメントを募集し、その後正式に「電気通信番号規則」が改正されて2月ごろに正式決定という流れのようだ。


 総務省のニュースリリース   ITMobileの記事


■アメリカでは固定電話の番号をケータイ用に使える


日本でも固定電話間の引越しでは既に実現されている仕組みであり、携帯電話でもかなり昔から議論されてきた。なので、ようやくという印象だ。


実はアメリカでは既に2年前にナンバーポータビリティーは実現しており、更に固定電話~携帯電話~IP電話のナンバーポータビリティーさえも実現している


 「米で携帯電話の番号ポータビリティ開始、サービス選びは価格よりも品質」(MYCOM PCWEB記事)


日本で例えれば、「03-xxxx-xxxx」といった固定電話の番号を自分の携帯電話用番号として利用できる、ということに等しい(まぁ、もともとアメリカの携帯番号は日本のような「090」など専用プレフィクスを使っていないが)。


日本の場合はそこまでの制度化はされていないが、FMC(固定・携帯の融合)分野では議論されているようだ。5年後ぐらいには実現するのかもしれない。


■ところでケータイの会社ってそんなに変えたい?


ところでそもそもの問題として、番号が変わらなくなるからといって携帯会社を乗り換えるだろうか?

思うに、もともと別会社に変えようと思っている人ならともかく、それを機会に携帯会社をわざわざ変えるなんていう人は少ないと思う。


アンケート結果によれば、過半数の人が興味を持ってはいるらしいが、いざ実際に乗り換えまでする人というのは少ないはずだ。


私はその理由として以下のようなものがあると思う。


 1.メールアドレスは変えられない

 2.端末側登録情報(アドレス帳など)の移植が必要

 3.着メロサイトなどの登録業者の再登録が必要

 4.家族割引が進んでいる

 5.気持ちとして現キャリアに馴染んでしまっている


実際とあるリサーチでは「次も同じキャリアにする」とする人は7割に上り、携帯電話は予想以上に継続度が強い商品なのである。単純な通話サービスを提供している固定電話の乗り換えと決定的に違う。


従って、今後劇的な価格破壊をするキャリア(特にソフトバンク)が登場しないかぎり、現シェアの激変は起こらないと思われる。


■「ケータイデビュー」を狙え


とはいえ、携帯キャリアはこれまで以上に「囲い込み」施策の強化が必要だ


ナンバーポータビリティーに導入により、ズルズルとシェアが減っていき、雪崩式に別会社への移行が進むと同時に、携帯キャリアの乗り換え単位が、「個人」から「家族」へと大きくなる可能性を秘めているからだ。


囲い込み施策としては


 1.一層の料金値下げ・独自料金体系の構築

 2.優位性のある独自サービス・端末の提供

 3.端末・ネットワークへの個人情報登録強化

 4.ターゲットユーザ層の拡大


といったものがあるだろう。


特に家族割引が広範囲化する現状においては、4.のターゲットユーザ層の拡大は重要だ。


継続度が高いのだから、「馴染みのスタート」をより低年齢化させることによって、キャリアとしてはより長くお得意様でいてもらえる。「公園デビュー」ならぬ「ドコモデビュー」「auデビュー」といったイメージで進めないといけないのだ。


そんなこともあってか、ちょうど今日ドコモが子供向けケータイ「SA800i」を発表した。


SA800i
 「ドコモ、GPSで「子供を守る」携帯SA800iを発表」(IT+D Mobile)

 「「キッズケータイTM」を開発 -子どもを守る「あんしん」ケータイ-」(ドコモニュースリリース)


昨今の幼女誘拐・殺害事件なども背景にあっての、安心を売りにした子供向け端末だ


だが、そういった社会情勢の変化から来るニーズへの対応もさることながら、実はまさにこの前述のようなナンバーポータビリティーをトリガーとしたターゲットユーザ層の拡大が今まさに進んでいることの証でもある。


■一家ケータイHow Much?


こうなるとキャリアとしてはどう取り組むべきなのだろうか?


私が推測するに、核家族時代のこの日本で、家族丸ごと携帯キャリアを同じにさせるような取り組みが更に必要になってくるのだろう。


もちろん家族向け割引・特例サービスの強化自体も必要であるが、営業マンが家庭訪問などして家族ごと説得するような取り組みが生まれるかもしれないし、町の家電屋さんが重要な販売拠点となってくる可能性さえある。


まさに住宅地図を塗りつぶしながら、「この家はドコモ」「この家はau」といった一軒一軒の争奪戦が繰り広げられるのだろう。



石川 温
ケータイ業界30兆円の行方
キャリア再編のシナリオ
 
塚本 潔
ドコモとau